随分前になるが、ブプロピオンは禁煙薬でもあるが、これで喫煙本数は減るものの、完全に禁煙できた人がいないと書いたことがある。その後、タバコを完全に中止できた患者さんは10人以上いたので、補助薬としては優れていると思う。
ブプロピオンを服用していると、タバコの味がまずくなると言う人がいるが、それでも喫煙する人も多いので、「まずくなること」は禁煙に大きくは関与していないように見える。
個人的に、自分は禁煙をさせる専門医師ではないので、禁煙目的だけでブプロピオンを勧めたりしない。だからかなり本数が減るものの、少しは喫煙している人が多い(1日3本くらい)。
日本ではチャンピックスという禁煙薬が有名だが、これを使っていると、車に乗れないのは重大な欠点である。東京のような大都市ではまだ良いが、地方では車に乗れないと生活が成り立たない。
ここで精神保健的なことを少し。
日本での喫煙率はどのくらいと思う?
日本の喫煙率は19.5%。(男性;32.2%、女性8.4%)
この統計は2010年のもの。なんと、今でも日本人男性の3分の1近くの人が喫煙しているのである。
さて、この数値はアメリカより高いでしょうか?
なんとなく、アジアの人は喫煙率が高そうに見えるが、アメリカよりは少しだけ低くなっている。(アメリカ;21%、ただし2008年の統計)
オーストラリアでは、タバコを吸っている人が少ない印象があるが、旅行者は観光地だけ廻っている感じなので、実際にそうなのかわからない。実はオーストラリアはかなり喫煙率が低く15.9%である。(2010年)
日本は国民の喫煙率を近い将来、12%まで下げる目標を立てている。この12%の根拠は喫煙をやめたい人が、37.6%いることから来る。
19.5*(1-0.376)=12.168(%)
ということは、日本人の喫煙者は、やめるつもりがない人が60%以上いることがわかる。やめるつもりのない人は、チャンピックスなど飲まない。ブプロピオンは精神疾患によると飲む人もいるかもしれないけどね。
ブプロピオンのチャンピックスとの大きな違いは、全くタバコを減らすつもりのない人にも結果的に減らす傾向があること。
タバコはヒトの種々の疾病に深く関わっており、喫煙率が下がることは、すなわち医療費の削減に繋がる。もしタバコの値上げをして、その結果、喫煙率が下がるなら、税収は増えるは、医療費は減るはで良いことばかりである。
しかし、過去に30円程度の値上げを繰り返しても、それによるタバコ消費への影響はたいしたことはなかった。2010年、1箱平均110円のかつてないほどの大幅値上げが実施されたが、この時も、消費量にはたいして影響しなかったらしい。(しかし税収は急に増えた)。
このようになる理由だが、日本のタバコの値段が安すぎることが大きいと言う。
一度に大幅値上げし1箱1000円になると、どうなるか興味があるが、そこまでの決断は政府にはできそうにない。
タバコは喫煙者と受動喫煙者の種々の重大な疾病を増加させるが、癌に関してはタバコは最高ランクのリスクになっている。(以下、WHOの資料)
グループ1
発癌性がある。ヒトへの発癌性を示す十分な証拠がある。
タバコ(能動・受動)、アスベスト、ホルムアルデヒド、カドミウム、ダイオキシン、太陽光、紫外線、X線、ガンマ線、アルコール飲料、ヘリコバクター・ピロリなど。
グループ2A
おそらく発癌性がある。
ヒトへの発癌性を示す証拠は限定的であるが、実験動物への発癌性を示す証拠が十分にある場合など。
PCB、鉛化合物(無機)、ディーゼルエンジンの排気ガスなど。
グループ2B
発癌性があるかもしれない。
ヒトへの発癌性を示す証拠が限定的であり、実験動物への発癌性に対して十分な証拠がない場合など。
クロロホルム、鉛、コーヒー、漬物、ガソリン、ガソリンエンジンの排気ガス、超低周波磁界、高周波電磁界など。
グループ3
発癌性を分類できない。
ヒトへの発癌性を示す証拠が不十分であり、実験動物への発癌性に対しても十分な証拠がないか限定的である場合など。
カフェイン、原油、水銀、お茶、蛍光灯、静磁界、超低周波電界など。
グループ4
おそらく発癌性はない。
ヒトへと実験動物への発癌性がないことを示唆する証拠がある場合など。
カプロラクタム(ナイロンの原料)
さて、日本の医師の喫煙率はどのくらいでしょうか?
ここ10年くらいで医師の喫煙率は著しく減少しているようなのである。
2000年 男性:27.1% 女性:6.8%
2012年 男性:12.5% 女性:2.9%
精神科医局のラボランチンの女の子たちに聞いても、「最近の若い先生はあまりタバコを吸われないですよ」と言われる。禁煙以前に、学生さんは最初から吸わない人も増えているのではないかと思われる。
自分の世代の同窓会などでも、2次会に行き、灰皿が出してあっても、誰一人喫煙しないのである。学生頃は吸いまくっていたのに。
これは、やはり内科医や外科医などでは患者さんに禁煙を勧めることも多いであろうし、自分の健康も気になる世代なのでそういう風にしているんだろうと思った。
精神科医に関してだが、自分の世代では、これまでタバコを吸い続けている人が禁煙できるケースは意外に少ない。これは患者さんに断酒するよう指導することはあるが、タバコに関してはさほどないこともあるのではないかと思う。(薬が効きにくくなるので、多少は指導する)
つまり、精神科医は環境的にモチベーションが上がらない上、意思も弱いのではないかと思っている。
参考
タバコと精神疾患のテーマ
考察、「ジェネリックの都市伝説」
↧
ブプロピオンと禁煙
↧