精神科病院やクリニックから紹介された患者さんに、2つの紹介状が付いていることがある。2つの紹介状とは精神科医2名の紹介状である。
よくあるというほどの頻度ではないかもしれないが、自分の場合、そのような経験が意外に多い。
紹介状が2通ある理由は、その病院(クリニック)への過去の紹介状も一緒に添付されているため。だから1つは10年以上前に書かれたものだったりする。
この2つの紹介状の内容から、その2名の医師の技量の差が明瞭にわかることがある。
薬物だけ見てみても、処方には単剤であれ、多剤併用であれ、その医師の意思が伝わる処方とそうでないものがある。
統合失調症であれば、コントミン換算値の多寡もその要素の1つである。長い経過の病状の変化も同様である。
一般に、「後医は名医」と言うが、精神科ではそれは通用しない。
その理由の1つは、慢性的な精神疾患は時間の経過とともに、徐々に病状が複雑化し、崩れていくものが稀ではないからである。だから、引き継いだ患者さんがより悪化するケースは「後医は名医」には見えない。それと精神科では1人の患者さんを長期間治療することも関係している。時間がたてば、様々な波乱があるもので、後医という一瞬のメリットはほとんど薄れてしまう。
紹介状は○○の薬は禁忌とか、中毒疹が出たことがあるなどの記載はしているものが多いが、曖昧な悪化までは書かないことの方が多い。ただでさえ精神科の紹介状は長いのに、一層、長くなるからである。
クリニックに通っている人は進学や転勤、結婚などで引越しをしても同じようにクリニックにかかりたがる。それはスティグマや地方によれば道に精神病院がドーンとそびえる様に建っていて、相当に入りにくいことがあるから。
つまり、精神科病院に入るのを誰にも見られたくない。
過去ログにクリニックと単科精神病院のメリットとデメリットなどを記載した記事がいくつかあるので参考にしてほしい。
上手いクリニックの医師は、引き継ぎ後、明確に方針を持って治療しているので、更に転院になった時に、処方内容がかなり良化している。
それは、特に内因性疾患でないなら、いったい何の疾患なのかわからないほどの変化である。
例1(うつ病圏)
10年前の引継ぎ処方
アナフラニール 150mg
デパス 3mg
デパケンR 800mg
ロヒプノール 2mg
レンドルミン 0.25mg
他下剤
うちの病院に転院時
アナフラニール 30mg
レンドルミン 0.25mg
例2(統合失調症)
7年くらい前の引継ぎ処方
セレネース 12mg
リスパダール 6mg
アキネトン 6mg
ヒベルナ 75mg
ヒルナミン 50mg
ベゲタミンA 2T
ロヒプノール 4mg
ハルシオン 0.25mg
(他、便秘薬、胃薬など)
うちの病院に転院時
リスパダール 4mg
アキネトン 2mg
リボトリール 1mg
ロヒプノール 2mg
ハルシオン 0.25mg
(他、便秘薬、胃薬など)
例3(双極性障害←多分ニセモノ)
5年以上前の引継ぎ処方
デパケン 800mg
リスパダール 4mg
ソラナックス 1.6mg
アキネトン 4mg
ロヒプノール 2mg
レンドルミン 0.25mg
他下剤など
うちの病院に転院時
ロヒプノール 2mg
デパス 1mg
などである。特に双極性障害だったはずの人がよく眠剤だけの処方で転院してくる。
これらを見たら、「後医は名医」どころの話じゃないでしょ。これは本質的な技量の差がよく現れている。しかも、後の医師の方が経験年数が短いのである。(それでも自分よりは長いが)。
精神科病院でも、安全にこのような減量をするのは難しいのに、クリニックの外来だけで達成しているのが凄い。しかしながら、順調にいかない場合、大学病院やうちの病院に紹介したりするので、100%上手く行くわけではない。それでも、トライしていることに価値があるんだと思う。これは、困った時に、転院させられる病院との信頼関係がないとできないことでもある。
つまり1匹狼的なクリニックだと、その医師の技量以前に、安全策しかとれない。
他の要因として、過去ログにも出てくるが、精神科医により薬の効き方や副作用の出方が異なるのである。この現象は相当にオカルトと思うが、実際にそうなのだから仕方がないと思う。
参考
精神科受診マニュアル(上級編)
精神科医と薬、エイジング
精神科と心療内科は
よくあるというほどの頻度ではないかもしれないが、自分の場合、そのような経験が意外に多い。
紹介状が2通ある理由は、その病院(クリニック)への過去の紹介状も一緒に添付されているため。だから1つは10年以上前に書かれたものだったりする。
この2つの紹介状の内容から、その2名の医師の技量の差が明瞭にわかることがある。
薬物だけ見てみても、処方には単剤であれ、多剤併用であれ、その医師の意思が伝わる処方とそうでないものがある。
統合失調症であれば、コントミン換算値の多寡もその要素の1つである。長い経過の病状の変化も同様である。
一般に、「後医は名医」と言うが、精神科ではそれは通用しない。
その理由の1つは、慢性的な精神疾患は時間の経過とともに、徐々に病状が複雑化し、崩れていくものが稀ではないからである。だから、引き継いだ患者さんがより悪化するケースは「後医は名医」には見えない。それと精神科では1人の患者さんを長期間治療することも関係している。時間がたてば、様々な波乱があるもので、後医という一瞬のメリットはほとんど薄れてしまう。
紹介状は○○の薬は禁忌とか、中毒疹が出たことがあるなどの記載はしているものが多いが、曖昧な悪化までは書かないことの方が多い。ただでさえ精神科の紹介状は長いのに、一層、長くなるからである。
クリニックに通っている人は進学や転勤、結婚などで引越しをしても同じようにクリニックにかかりたがる。それはスティグマや地方によれば道に精神病院がドーンとそびえる様に建っていて、相当に入りにくいことがあるから。
つまり、精神科病院に入るのを誰にも見られたくない。
過去ログにクリニックと単科精神病院のメリットとデメリットなどを記載した記事がいくつかあるので参考にしてほしい。
上手いクリニックの医師は、引き継ぎ後、明確に方針を持って治療しているので、更に転院になった時に、処方内容がかなり良化している。
それは、特に内因性疾患でないなら、いったい何の疾患なのかわからないほどの変化である。
例1(うつ病圏)
10年前の引継ぎ処方
アナフラニール 150mg
デパス 3mg
デパケンR 800mg
ロヒプノール 2mg
レンドルミン 0.25mg
他下剤
うちの病院に転院時
アナフラニール 30mg
レンドルミン 0.25mg
例2(統合失調症)
7年くらい前の引継ぎ処方
セレネース 12mg
リスパダール 6mg
アキネトン 6mg
ヒベルナ 75mg
ヒルナミン 50mg
ベゲタミンA 2T
ロヒプノール 4mg
ハルシオン 0.25mg
(他、便秘薬、胃薬など)
うちの病院に転院時
リスパダール 4mg
アキネトン 2mg
リボトリール 1mg
ロヒプノール 2mg
ハルシオン 0.25mg
(他、便秘薬、胃薬など)
例3(双極性障害←多分ニセモノ)
5年以上前の引継ぎ処方
デパケン 800mg
リスパダール 4mg
ソラナックス 1.6mg
アキネトン 4mg
ロヒプノール 2mg
レンドルミン 0.25mg
他下剤など
うちの病院に転院時
ロヒプノール 2mg
デパス 1mg
などである。特に双極性障害だったはずの人がよく眠剤だけの処方で転院してくる。
これらを見たら、「後医は名医」どころの話じゃないでしょ。これは本質的な技量の差がよく現れている。しかも、後の医師の方が経験年数が短いのである。(それでも自分よりは長いが)。
精神科病院でも、安全にこのような減量をするのは難しいのに、クリニックの外来だけで達成しているのが凄い。しかしながら、順調にいかない場合、大学病院やうちの病院に紹介したりするので、100%上手く行くわけではない。それでも、トライしていることに価値があるんだと思う。これは、困った時に、転院させられる病院との信頼関係がないとできないことでもある。
つまり1匹狼的なクリニックだと、その医師の技量以前に、安全策しかとれない。
他の要因として、過去ログにも出てくるが、精神科医により薬の効き方や副作用の出方が異なるのである。この現象は相当にオカルトと思うが、実際にそうなのだから仕方がないと思う。
参考
精神科受診マニュアル(上級編)
精神科医と薬、エイジング
精神科と心療内科は