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Channel: kyupinの日記 気が向けば更新
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彼にとって、最も悪いことは・・

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夜間や休日の場合、たとえ、精神科医の当直医がいたとしても、たいてい電話が通じるのでまず自分にかかってくることが多い。その理由の1つは僕が院長で主治医だからである。(自分の担当患者さんの場合)

ある夜、入院患者さんが大変な興奮状態に至り、電話がかかってきた。

どうしましょうか・・

と言うのである。その日の病棟担当看護師は婦長や主任クラスではなく、精神科経験が長い看護師ではなかった。彼女は相当に動揺しており、

どうしたら良いでしょうか?

と聞く。彼女によると、彼は既にある物をぶち壊しているらしい。夜間なので大変な音だったようである。

僕は比較的楽観視しており、トロペロンを筋注できさえすれば、1アンプルで十分に落ちつくと思っていた。

ただ問題は、いかなる段取りで注射するかである。

その患者さんは薬にあまり強くないので1アンプルで十分なのも良い。僕は注射の際に大勢の看護師や医師が彼の周囲に集まるのも、かえって拙いと思った。保護室に無理に入れるなんて大凶である。

そこで、一応、当直医にちょっとだけ診てもらい、(他科のドクターなので難しいことはできないので)、その後は、病棟の看護師にまかせることにした。

彼にとって、最も悪いことは・・
押さえつけて注射をすること。


看護師風に寄り添って、説得してからしなさい。

と伝えた。すると、

怖いです・・

という。確かに女性の看護師があの程度、興奮した患者に対峙するのは、やはり「怖い」感覚は自然である。彼は格闘技ができる上、体格も大きくはないが、それっぽいからである。

しかし、経験の長い病棟婦長や主任クラスの看護師は女性であっても、自分にそのまま「怖い」とは言わないものだ。本当に怖いと思っていたとしても。

そこで、僕は、

大丈夫。
彼は物は壊すが、人は打たない。


と言った。

本当に大丈夫ですか?

と聞くので、言ったとおりにすれば上手く行くと伝えた。

その日はあっさり注射を受け入れ、そのまま眠ってしまったらしい。

彼はその後、退院。

今は高いレベルで寛解しており、今後、服薬さえ遵守できれば、社会的に成功するような気がしている。


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