たまに28日分薬を貰っている人から、眠剤だけは14日分でよいと言われる。それも毎回である。なぜ眠剤は14日で良いかと聞くと、答えは3種類くらいある。
1、睡眠薬は2日に1度しか飲まない。
2、週末、金曜日、土曜日や祝日は飲まない。平日の休みも飲まない。
3、自分で調整して、3分の1か2分の1の量を毎日飲んでいる。
書籍的に1は、半減期が短いタイプは難しいはずである。翌日、反跳不眠が出現したり多夢になり、継続的服用の方が副作用が少ないとされている。
しかしハルシオンでさえ、他に半減期の長い日中に飲むタイプのベンゾジアゼピンを併用している人は、ほとんど影響がないこともある。むしろ、そのような人の方が多いかもしれない。
ハードな頭脳労働の人の一部は「脳が興奮して眠れない」という訴え方をする。このような人は仕事がない日は、テンションが大幅に緩むので眠剤は必要ないと言う。
1~3の中で、最も多いのは3である。このような人は1ヶ月に1度来て、14日分しか貰わないのは良いとして、どのくらいストックがあるのか不明。たまにどのくらい残っているか確かめるが、自己申告なので正しく答えているかよくわからない。
一般に、日本で単剤だけでなく数種類のベンゾジアゼピン系眠剤を処方されるのは、ベンゾジアゼピン系眠剤が極めて安全な薬物とみなされていることが大きい。これは過去ログに出てくる。
精神科に受診している人で、ワイパックスだけとかソラナックスだけ処方されている人がいるが、肝障害が生じることは極めて稀である。また、これらは日中に服用するタイプだが、眠剤のベンゾジアゼピン(レンドルミンなど)などとの相違は、ほぼない。(身体的副作用)
普通ベンゾジアゼピンは、大量に服用しても、なかなか死ぬことができない。
つまり、身体への影響が常に意識されている。この視点は、3環系抗うつ剤とSSRIの評価と同様である。
精神科医の立場からすると、日本ではデパスなどのポピュラーな抗不安薬は内科、整形外科などでかなり処方されている。また、初診以前に、内科医院で既にレンドルミンなどを処方されているケースがかなりある。
現代風の精神医療では、ベンゾジアゼピンは、使い始めると次第に効果が減弱していくため、他の治療法を模索する方針が推奨されている。しかしここが難しいのだが、ベンゾジアゼピンを使わないという前提なら、SSRIが選択される病態が多いのである。
つまり、SSRIを処方するくらいなら、ベンゾジアゼピンの方がまだマシというケースも存在する。(重要)
僕はデパス、ソラナックス、ハルシオンはあまり使わず、リボトリール、レキソタン、メイラックスなどを選択することが多い。この後者3剤はあまり一般科では使われないタイプである。
今はあまり処方されていないと思われるセパゾンは、昔は処方していたが、今はほとんど使わなくなった。一般に、セパゾンとレキソタンを比べると、レキソタンの方が好まれることが多いのも大きい。
精神医療では、ベンゾジアゼピンは精神症状の改善より、むしろ副作用の軽減において価値がある。抗パーキンソン薬をできるだけ使わないなら、なお更である。
過去ログでは、ハルシオンの記事で、総合病院全体で、精神科以外でかなりハルシオンが処方されていたことを記載している。
SSRIかベンゾジアゼピンかという話になると、病状の深刻さももちろんあるが、その精神所見がいかなる病態を背景に生じているかも重要。つまり背景を考慮して選択する。
また、SSRIにも個性があるので、全てのSSRIはまずいともいえないのである。(うつ病の治療でうまく行かない時、SSRIのタイプを変更する治療方針は高い評価を受けている)
精神医療において、SSRIあるいはベンゾジアゼピンが、100%悪いと言うような考え方は間違いだと思う。
参考
ハルシオン
リボトリールのテーマ
レキソタン
抗不安薬の強さについて
↧
眠剤を他の薬に比べ、半分の日数だけ貰う人
↧