精神科の療養病棟は、薬を多く使ってもそれがレセプト請求できる医療費に反映されないため、使えば使うほど赤字になる。療養病棟で薬を処方するのは、病院からすればお金を捨てているようなものだ。
このような病棟は通称「マルメ」と言われている。いくら薬を使っても1日いくらと入院費が決まっているからである。
細かいことを言えば、非定型精神病薬を使った場合、併用の状況にもよるが微々たる加算があるが、誤差範囲である。
一般に精神科療養病棟では、1日に1000円以上薬剤費を使うと、赤字になると言われる。
結局だが、たまに薬が必要な人が1000円を超えるのはかまわないが、こういう人ばかりいると、経営的には極めて好ましくない。
ところがである。
近年は療養病棟は老人ばかりなので、成人病の薬剤費がバカにならない。例えば、高血圧、高脂血症、抗尿酸血症、糖尿病、頻尿などの治療薬である。近年はリピトールやアムロジンなどもジェネリックが発売されているので、かなり助かっているが、とにかく老人は内科薬が多いので困る。
これは老人に限らないが、療養病棟で入院中に他科受診した場合、その日は入院費が大幅に下げられる上、もし更に他科で薬を貰った場合、その分はこちらで実費で支払わなければならない。誰に支払うかと言うと、その受診した病院に対してである。
結局だが、療養病棟ではいかなる治療状況においても1日の医療費の上限が制限されている。
従って、リスパダールコンスタとか、エビリファイ液などのように極めて高価な抗精神病薬は、療養病棟で処方するのは、病院にとって、自分が自分の首を絞めているようなものだ。もちろん、処方できないわけではないが、現実的には難しいのである。
全体の病棟で何割かは療養病棟などのマルメになっているため、患者さんの病棟間の移床を考えた場合、出来高病棟での高額の薬剤費も好ましくない。
結局だが、精神病院にとって、薬は出せば出すほど、お金を失う機会を増やす仕組みになっているのであった。
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療養病棟の薬剤費
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