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Channel: kyupinの日記 気が向けば更新
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頑張って、止める価値などないんじゃないでしょうか?

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ある日、ある婦人が今の薬を止められないか尋ねた。その処方は以下。

リボトリール 0.5㎎
リフレックス 7.5㎎


この量は、もう半年以上、変更せず継続していた。リボトリール0.5㎎とリフレックス7.5㎎と聞いてもピンと来ない人もいると思う。これはリボトリールの最も少量の錠剤とリフレックスの半錠である。(リフレックスの剤型は15㎎錠のみ)。

僕は、

頑張って、止める価値などないんじゃないでしょうか?

と答えた(頑張り甲斐がないと言うべきか)。確かにそう思ったからである。その婦人は重くはないが、常に不安を抱えているタイプであり、一時、通院を止めていたことがある。その際に、うつと不安状態が悪化し、ある心療内科にかかったらしい。ところが、ドカンとパキシルを投与され、とてつもなく自覚症状が悪化し、うちに戻ってきた。その後、上記の処方で安定したのである。また処方内容は彼女がうちの病院に来なくなった時期のものとほぼ同じであった。

つまりだが、彼女の精神症状はそれだけの服薬を必要としていると考えるのが自然である。

また、この程度の向精神薬を中止しようと思う動機は、向精神薬に対する漠然とした不安感に由来し、その視点では、彼女の精神症状の1つと診ることも可能だ。

転院した際にパキシルを処方されて悪化したというが、その心療内科が真の精神科医なのか、本当の心療内科医なのか、あるいはいずれでもないかは不明だが、パキシルを最初に処方したことが間違っているとは言えない。

その理由は、日本では、うつ状態の人が初診したら最初にSSRIを投与することになっているからである。(マニュアル的に。あるいは100人に聴きました的には。)

このような経緯から、最初に挙げた少量の薬を続ければ安定していることがわかっているのに、わざわざ悪化が見えている断薬は推奨できない。だから、「頑張って、止める価値などないんじゃないでしょうか?」と答えたのである。

この「頑張って」というフレーズが重要で、特に統合失調症以外の神経症、うつ病圏内の人は、何も努力をせず、自然に減量の方向に行くことができる人は中止の道が開けていると思う。

過去ログに「去っていくタイプの薬」という話が出てくる。自然に薬の方が去って行くのであれば、頑張らなくても中止できる。

向精神薬は、中止するために「頑張る」というのは、不自然な行為なんだと思う。

うちの患者さんでは、数日に1度ジェイゾロフトを飲んでいるとか、リボトリールを週に2回だけ飲んでいる人がいる。そういう期間があって止められるタイプが1型。

また人によれば数種類の薬がブロックごと中止の方向に行く人もいる。このような人は精神科医から見ても少し驚きである。

まだ若い転院してきた患者さんだが、治療し始めて半年くらいに、

ロヒプノール 4㎎
ハルシオン  0.25㎎
ネルボン   10㎎
ベゲタミンB  1T


程度の眠剤を、全てすべて中止していると打ち明けた。どうして中止したのか聞くと、働き始めて、夜は疲労困憊しバタンキューで寝てしまうので、眠剤など必要なくなったのだと。

彼女は少なくとも減薬のためにのみ頑張って中止したわけではない。

このようなパターンも、自然な中止の流れなんだと思う(これも1型)。

過去ログでは、トム・ペティの音楽と平行して、ある女性患者さんの長い治療経過が紹介されている。(参考)。彼女は今や全て向精神薬は中止しているらしい。一連の過去ログを読んでいるとわかるが、ある記事の中で、「彼女には完治の道が開けてきた」と指摘している。

彼女に中止した後の感想を聞いてみた。彼女によると、

最後のトピナを中止したら、「ぼけ」が良くなったという。

当時から指摘していた「トピナぼけ」は、中止後、うっかりや計算間違いなどが消失していると言っているので、やはりトピナの副作用で間違いはなかったのである。

またその症状は認知症的なものではなく、可逆性であることも示されていると思う。

参考
精神疾患と服薬
パキシルCR 6.25mg錠
ジェイゾロフトを毎週、1錠だけ貰う人
統合失調症の人の表情の改善(後半)
人間の秘めたるエネルギーと治癒の謎
彼女は最初うつで初診している① および一連のエントリ。


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