最近も触れているが、うつに限らず、SSRIから治療を開始された際に、経過が思わしくない場合、他の種類のSSRIに変更することは推奨されている治療手法の1つである。
自分の場合、SSRIでうまくいっていない患者さんは、どのSSRIでもうまくいかないように見えることが多いためか、そのような親戚に近い薬を処方することは比較的少ない。
ある年配の女性患者さんが転院してきた。彼女は知り合いのドクターがうちの病院宛に紹介状を書いていたが、どこでも同じだろうと思い、なんと内科に受診したと言う。
彼女のうつ状態だが、更年期障害から悪化したというが、今は細かい内容まで覚えていないし、今回の記事ではあまり重要ではないので省略する。
彼女の処方内容は極めてシンプルで、毎日、
デプロメール 100mg
ソラナックス 0.2mg
を服用するだけである。その友人はシンプルな処方を好むが、自分とは異なり、ベンゾジアゼピンはよく2剤処方している。クリニックなので、患者さんの好みと言うかニーズにこたえているのだろうといつも思っていた。この人のソラナックスは頓服でも良いと言われているらしく、1週間くらい飲まないこともあるようで、デプロメール100㎎単剤に近い。
彼女が内科にかかったところ、おそらくだが、その内科医がデプロメールよりジェイゾロフトの方が効きが良いと思っていたためか、デプロメールをあまり使ったことがないためかわからないが、突然、デプロメール100㎎からジェイゾロフト100㎎に変更されたという。また、ソラナックスはコンスタンに変更されたらしい。(注:コンスタンはソラナックスの併売品でジェネリックではない)
この結果だが、ジェイゾロフト100㎎になり、副作用のために大変なことになったらしい。(どのように大変だったのかは、今は記憶なし)
また、ソラナックスに替えてコンスタンを貰ったが、コンスタンでは不安感がかえって悪化するという。
この2つの結果だが、十分に考えられることである。(過去ログ参照)
まずデプロメール100㎎とジェイゾロフト100㎎は力価的にも等価ではない。過去ログより、
SSRIの等価換算
セレクサ 20mg (本邦未発売)
プロザック 20mg (本邦未発売)
デプロメール 100mg (=ルボックス)
パキシル 20mg
ジェイゾロフト 50mg
これを見るとわかるが、デプロメールからジェイゾロフトに変更するにしても、デプロメール100㎎であれば、ジェイゾロフト50㎎処方すべきである。こうすれば、おそらくだが、「大変なことになった」規模がもう少し小さかったのではないかと思う。
上の等価換算と異なるが、レクサプロとジェイゾロフトは、
レクサプロ10㎎=ジェイゾロフト100㎎
という換算になるらしく、レクサプロは10㎎から処方する場合、初日からジェイゾロフト100㎎使うのと同じであり、20㎎処方した場合、ジェイゾロフト200㎎に相当するので、効くのは当たり前という話がある。
おそらく、そういう簡単なものでもないと思うが。
レクサプロで治療する場合、SSRIを凄い勢いで増やしているのと同じなので、上限の高さも含め、世界的にも評価が高いSSRIであるのは当然と言ったところである。
この意味だが、ジェイゾロフトは普通25㎎から開始し100㎎までなので、25、50、75、100㎎の4段階の選択ができるが、レクサプロの場合、錠剤を割らなければ10㎎と20㎎しか選択肢がない。
良く考えると、抗うつ剤でレクサプロのようにざっくりとしか処方できないものなどないのではないかと思う。(重要)
なお、自分で双方を使った感想だが、少なくともレクサプロ10㎎=ジェイゾロフト100㎎には見えない。
その転院してきた女性患者さんだが、デプロメール100㎎に戻し、コンスタンをソラナックスに変更した。(つまり紹介状と同じ)。その後、速やかに落ち着き今は安定している。
この人は処方変更で痛い目に合っているので、未だに変更せず、そのままである。過去ログでデプロメールはあまり今は使っていないが、転院の患者さんではそのまま使っている人もいるという記事がある。例えば、このような人たちである。
精神科治療は本質的には経過が重要だと思うが、結果は重視すべきと言う自分の治療スタイルがある。これで安定していれば、全く問題ない。
プライベートでも、日常生活全般には、道中いかなる問題があったとしても、結果にはこだわらないタイプである。
だから、例えば4年に1度の大一番ワールドカップで日本が負けたとしても、日常生活はなんら変わらない。従来の日常がそのまま続くだけである。
当たり前と言えば、そうなのだが。
参考
SSRIの等価換算
ロヒプノールとサイレースとフルニトラゼパム
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SSRIの種類の変更による悪化について
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