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甘いオムレツ (小椋佳 )

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甘いオムレツ - 小椋佳

僕が子供の頃、男性のソロのフォークないしニューミュージック系のミュージシャンのファンは、井上陽水と吉田卓郎が多く、かなり少数派が泉谷しげるだった。

それ以外にあまり知られてはいないが、存在感が非常に大きいミュージシャンとして小椋佳がいた。彼がその実力に比してあまり知られていなかったのは、メディアに全く出てこないので、どのような人なのか全くわからなかったことが大きい。アルバムにさえ、本人の写真がないのである。

僕は当時、彼のアルバムとシングルはごく初期の作品から全て購入していた。なぜシングルなのかと言うと、シングルにしか収録されていない良い楽曲があったからである。当時、井上陽水は3rdアルバム(氷の世界)しか持っていなかったので、小椋佳派だったことがわかる。

小椋佳の楽曲は比較的ラブソングが多く、そのラブソングも一般的なものとは少し異なっていた。歌詞の中には日本的な美しい言葉が綴られており、誰もが思いつかないようなものだった。また、鮮やかに情景が思い浮かべられるものが多かった。

井上陽水のファンは、時に小椋佳が歌詞を提供していたこともあり、彼の存在は知っていた人が多い。例えば、「白い一日」や「坂道」などである。「白い一日」は、井上陽水と小椋佳とでは作曲が違うため、印象がかなり異なる。

小椋佳は銀行員だったため、プロではあるが、半分は趣味と言うか、その延長で曲作りをしていたといえた。


俺たちの旅(小椋佳)

アルバムの中にはなかなか良い楽曲が多いものの、シングル向けとは言えないものもあり、むしろシングル向けの楽曲は他のミュージシャンに提供する方が多い印象だった。例えば、中村雅俊の「俺たちの旅」「ただお前がいい」「盆帰り」「時」などである。


揺れるまなざし(小椋佳)

小椋佳のシングル曲として劇的と言って良い初めてのヒット曲は、「揺れるまなざし」だと思う。この曲は誰もが描けるものとは思えないもので、度肝を抜くというか、本当に驚いた。当時、「揺れるまなざし」や「旅支度」はアルバムには収録されておらず、シングルを買うしかなかった。当時のシングルは500円だったか600円だったかもう忘れたが、物価水準をを考慮するとかなり高価だった。

その後、布施明が「シクラメンのかほり」で、レコード大賞をとったため、一気に小椋佳の名はメジャーになった。昔からのファンとしては、メジャーになることがちょっと悔しいというか、その複雑な気持ちがわかる人もいるだろうと思う。

「シクラメンのかほり」はなぜ「シクラメンのかおり」ではないかと言うと、奥さんの名前が「かほり」さんだからという話である。なんとなくだが微笑ましい。余談だが、シクラメンは実は全く香りがしないか、ほとんど香らない花なのであった。これは例えて言うなら、知床慕情の歌詞「遥か国後に白夜は明ける」で、実はこの辺りの緯度では白夜がないのと同じである。

タイトル曲にやっと戻るが、この「甘いオムレツ」は僕がレコードを蒐集していた時代の遥か後の楽曲である。これは小椋佳の母親の人柄が非常にわかるような歌詞になっており、まさに江戸っ子と言う感じ(笑)。また、母のことを語っていて、文句なしに名曲なのもいい。

この楽曲を聴いていて、自分の家では、オムレツが非常に塩辛かったのを思い出した。全然甘くはないのである。なぜ甘くないのか母に聴いたことがある。その答えは、父が「甘いとおかずにならないから」と言う話だった。実は、うちの家は砂糖を多く使う方で、特に朝食は長く洋食だったこともあり、食パンに砂糖を塗すようにして食べていた。しかし、このタイプの卵料理は塩辛いのである。「甘いとご飯のおかずにならないか?」と逆に聴きたい。

小椋佳の楽曲は非常に多いこともあり、あまり知られていない楽曲もライブ演奏したい希望もあったのか、昨年くらいに生前葬コンサートが開かれている。彼が手がけた楽曲は2000曲以上におよび、その中で100曲を選び4日に分けて演奏されたのである。

この時、歌唱力と言う点で全盛期からは落ちていると感じた。おそらく、その現場にいればあまりわからないかもしれないが、特に「甘いオムレツ」の演奏は大違いだった。彼はは1944年生まれで、もう70歳を超えているのである。

最初に挙げた「甘いオムレツ」は彼のコンディションも良く、ライブ演奏と言う点でも、傑作だと思う。

なお、あまり知られていない楽曲のうち、個人的に好きな楽曲は「残された憧憬」に収録されている「飛べない蝙蝠」、「道草」に収録されている「くぐりぬけた花水木」である。個別には検索できなかったが、収録アルバムの1曲としてアップしている。


アナログレコードの「残された憧憬」。開始がズレており、飛べない蝙蝠は(18:13)からです。


「道草」。くぐりぬけた花水木は(29:44)から。

参考
Walking in the Rhythm.(Fishmans)
1000000 Monsters Attack(Soul'd Out)


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