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リバスタッチパッチ

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リバスタッチパッチ(一般名:リバスチグミン)は、あの悪い方で有名になったノルバティスファーマ(スイス)により創薬されている。このパッチ製剤は、1日1回貼付することでアルツハイマー型認知症に効果を発揮する。

同じリバスチグミンの製剤としてノルバティスファーマによるイクセロンパッチがあるが、この2つはロヒプノールとサイレースのようなもので同じ製剤の併売品である。なおリバスタッチパッチは小野薬品により販売されている。

もともと、コリンエステラーゼ阻害薬が認知症に投与されるようになったのは、アルツハイマー型認知症の認知機能の低下は、コリン作動性神経機能の低下に基づく」と言うコリン仮説による。エーザイのアリセプトはその先駆け的な認知症治療薬だった。

このリバスタッチパッチは、コリンエステラーゼに加えブチリルコリンエステラーゼも強力に阻害し、脳内のアセチルコリンを増加させる。この1つ作用が加わったことや、パッチ製剤であることから、アリセプトとかなり異なる効果を発揮しているように見える。

リバスチグミンは開発・販売の黎明期はカプセル製剤だったようである。しかし、カプセルでは老人が上手く服薬できないことがあるし、消化管の副作用(悪心・嘔吐)が出現しやすく、忍容性の関係で投与ができないことも多く見られた。日本ではカプセルないし液剤は発売されず、パッチ製剤のみとなっている。

リバスタッチパッチは、基本的にアリセプトを少し強力にした薬なので、発売当初はあまり興味はなかった。しかし、その後、実際にリバスタッチパッチを購入し処方した時の薬のキレ味に驚いた。

メマリーは認知症の薬でも鎮静系であるが、アリセプト、リバスタッチパッチ、レミニールは賦活系である。

アリセプトが認知症患者にフィットせず、かえって興奮したり悪影響を及ぼすのは、ちょうど、エビリファイを精神病患者に投与し失敗するパターンに似ている。これは賦活系だから妙なことになるのである。

しかしながら、リバスタッチパッチは透明感のある効き方をするし、緩やかに増量する投与法なので、忍容性の低い患者にも投与しやすく、精神症状を悪化させて失敗するパターンが少ない。これは、ブチリルコリンエステラーゼ阻害作用がバカにならない効果をもたらしているのか、パッチ製剤なので、門脈を通らないで脳に達するのが良いのかはよくわからない。

どのように効くのかだが、例えば、

1日じゅうぼんやりネコの守りをしたり、テレビを観ているように見えるが、わかって観ているかも不明。

といったお婆ちゃんが、4.5mg処方後、溌剌とした感じになり、庭に出て草むしりをするようになったと言う。(家族の希望で4.5㎎のまま増量せず)

また、麻雀同好会のような(ボケ防止のため)クラブに入っていた老婦人が、ケアレスミスのオンパレードだったのが、圧倒的に強さを取り戻したという。

もう少し異なる効き方をするパターンもある。あるお婆ちゃんは毎晩、せん妄出て、家族には面倒がみられない状況になった。しかし入院させ、(打つ手がないので)リバスタッチパッチを増量していたところ、13.5㎎まで増量するとピタリとせん妄がなくなり安眠できるようになった。賦活系だが、このような効き方もするようである。(しかし、リバスタッチパッチの副作用にせん妄がある)

リバスタッチパッチを投与後、家族の話では、よくなったと言う感想が多い。かえって悪いという人もいるが、効果の点で悪いパターンを呈する人は10人に1人もいない。

問題は用量である。リバスタッチパッチは4.5㎎、9㎎、13.5㎎、18㎎の4剤型あり、4週間ごとに増量することになっている。この4週間が増量に時間がかかる点で、近い将来、この手法は変更されるかもしれない。18㎎まで増量するのに12週間以上かかるからである。

また、添付文書には以下のように記載されている。

1、1日18mg未満は有効用量ではなく、漸増又は一時的な減量を目的とした用量であるので、維持量である18mgまで増量すること。

2、本剤は、維持量に到達するまでは、1日量として18mgを超えない範囲で症状により適宜増減が可能である。消化器系障害(悪心、嘔吐等)がみられた場合は、減量するかこれらの症状が消失するまで体薬する。休薬期間が4日程度の場合は、休薬前と同じ用量又は休薬前より1段階低い用量で投与を再開する。それ以外の場合は本剤4.5mgを用いて投与を再開する。投与再開後は、再開時の用量を2週間以上投与し、忍容性が良好であることを確認した上で、減量前の用量までは2週間以上の間隔で増量する。


ところがである。リバスタッチは非常に効く薬であり、4.5㎎で充分な人たちが多い。むしろ増やすことで副作用が出て、家族から減量を希望されることの方が多い。このようなことから、未だかつて、自分の患者さんで18㎎まで到達した人が1人もいない。

ほとんどの患者さんは4.5㎎だけ使っており、ごく一部に13.5㎎の人がいる状況である。このようなことから、添付文書通りに18㎎まで増量できた人がいなかったので、リバスタッチパッチは秀逸な薬であるものの記事を控えていたのである。

リバスタッチの欠点は貼付部位の接触性皮膚炎である。この頻度は非常に高く、添付文書では、適用部位紅斑370例(43.1%)、適用部位そう痒感345例(40.2%)、接触性皮層炎249例(29.0%)、適用部位浮腫119例(13.9%)と記載されており、皮膚に対する副作用は、嘔吐・悪心(それぞれ9%程度)を遥かに上回る。

注意点として、入浴直後は皮膚が湿って柔らかくなっているので、この時間に貼ると炎症を起こしやすい。皮膚が乾いてから貼付した方が良いようである。

リバスタッチパッチの薬価だが、剤型による薬価差があまりない。

4.5㎎ 346円80銭
9㎎  390円50銭
13.5㎎ 418円60銭
18㎎  439円70銭


したがって、4.5㎎だけ使うのはたいした倹約にもなっていないのであった。

現在の認知症の薬物だが、認知症の進行を遅らせる効果しか持たないので、投与してもしなくても同じなら中止したほうが良い。

だいたい、リエゾンや老人ホームに往診に行き現場を見る範囲では、認知症の高齢者に無意味に認知症治療薬が投与されているケースがかなり多い。

将来的には、限界がある認知症薬には最高投与年数を設けるべきだ。もしその老人に特別に長く投与する価値があると思われるなら、レセプトにコメントすれば処方可能といった手法になるとより良いと思われる。

そういうルールにしただけで、高齢者の医療費はなにがしか削減できるはずだ。

参考
メマリー


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