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いざと言うときに力が出ない(10)

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今回は「双極2型の予後(9)」の続きである。また、先日の「期限ギリギリでないと動けない」も多少関係がある。(前置き的エントリ)

一連の記事の(1)から順番に読んでいくと、いったい何を言いたいのかなんとなくわかると思うよ。

ブプロピオンを服薬し時間が経つと「いざと言う時に馬鹿力が出ない」と訴える人がいる。これは非常に興味深い所見である。

広汎性発達障害系の人では、積極的な人でも消極的(内向的というべきか)な人でも、やがて全く動けない状態になりうる。「動けない」というより、「何もやる気が起こらない」とか「いつも眠く仕事にならない」などの表現をする人もいる。

極めて馬力のない、非生産的な病態を呈するようになるのである。

これは内因性のうつ病や双極性障害とは異なり、アパシー、慢性的眠さ、あるいは広場恐怖的な色彩もみられ、むしろ器質的な表現型と思う。こういう人は双極性障害と診断したとしても、広汎性発達障害のような背景も考慮すべきである。(あるいは膠原病などの内科、皮膚科的免疫系疾患。これも器質性)

このような人の診断自体は大きな問題ではない。どう治療するかの方が重要といえる。

このような病態では、抗うつ剤では、ドパミン、ノルアドレナリンを増加させる薬の方が成功率が高く、セロトニンを大幅に増やすような薬は初期は多少良かったとしても、厭世観やアパシー、あるいは広汎性発達障害的な攻撃性を増し、長期的には不調になりやすい。抗うつ剤での治療を避けるなら、ラミクタールやトピナなどの抗てんかん薬が有望である。

ドパミン、ノルアドレナリンの再取り込みを阻害するブプロピオンは、このようなタイプのうつ状態には有効であるが、過去ログにあるように長期には効果が持続しない欠点がある。だから、当初はブプロピオン単剤で良かったとしても時間が経つと、気分安定化薬や他の抗うつ剤、あるいはエビリファイやセロクエルなども併用すべき状況になりやすい。

結局、このようなタイプの病態は治療に時間がかかるのである。

このブログでは、広汎性発達障害の精神症状は、たとえ新型と言える現代的うつでも治療余地があるという記載をしている。

それはよく考えて治療を進めると、ほとんどの患者さんが「以前よりはるかに良い」という表現をするからである。

今回のタイトルは、ある患者さんが普段の状態は以前よりずっと良くなったが、いざとなった時、「超人的な馬力が出なくなった」と語ったことから来る。

これは単純に考えると(本当かどうかは不明だが)、未治療の状態では、ドパミンやノルアドレナリンが慢性的に枯れているため、レセプターがアップレギュレーションを起こし、受け手側が非常に過敏状態を呈しているのかもしれない。

そのタイミングで非常事態が起こった際、その人にしては多めの神経伝達物質が放出された瞬間、脳内で非常に敏感な反応が起こるとも考えられる。(過去ログでは、ダウンレギュレーションの理論はトレドミンなどの出現により、崩れているのではないか?と言う記載をしている)

だからこそ、いざとなった時、超人的な力が出るのである。

再取り込みを阻害している状態が続いていれば、非常事態になったとしても、伝達物質のギャップも大きくない上に、脳内へのインパクトもたいして大きくはないであろう。だから、差し迫った状況でもエンジンがかからない。これはある意味、レセプターの過敏性が解消しているとも言える。

このエントリはブプロピオンやアモキサンなどの抗うつ剤が、病状を悪化させると言うものではない。その逆である。

慢性的に動けず、非常事態でやっと動ける程度では話にならない。

それでは学業や仕事が続かないから。火事のときに真っ先に逃げられるだけである。(ここがアパシーと亜昏迷の相違)

馬鹿力は出なくなっても、まだ平均的に活動的な方が社会に入っていけるだけ、はるかに治療的である。常に社会に接している方が、良い方向に歯車は廻るものだ。


ジェネリックに変更不可の署名

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現在の院外処方箋には「ジェネリックに変更不可の署名」の欄がある。ここに自分の名前を書くと、院外薬局ではジェネリックに変更できない。

これは放っておけば(医師は署名しないので)、院外薬局はジェネリックに変更しやすく、ジェネリックの代替により国民医療費の削減ができる。よく考えたものだと思う。(わざわざ記載しないと勝手に変更されるのがミソ)

ある日、患者さんがこの薬を○○してほしいと言う理由で、薬を持ってきたことがあった。その時、ジェネリックが渡されていたことに気付いたのである。

当然の結果ではあるものの、院外薬局によるが、そのまま先発品(つまり処方箋の通り)を処方することが多い印象だったため、ある意味、意外だったのである。

院外薬局からみると、積極的にジェネリックに変更することは、売り上げ減になるが、利益率及び利益が高くなる。その理由は、ジェネリックは先発品に比べ薬価差益が大きいからである。患者さんは医薬品の料金が安くなるが、院外薬局は利益がより上がるメリットがあるのである。

その時、思ったのだが、

これこれの薬はジェネリックでかまわないが、○○の薬だけは先発品にしてほしい。

と。つまり重要性の高い薬だけは先発品を処方したいのである。例えば、レキソタンはセニラン(ジェネリック)でもあまり変わらないと思う。

というわけで、署名まではしないが、「○○と△△だけは処方箋通りの先発品を処方してください」と下の連絡欄に書くことにした。

最近のことだが、ジェネリックの「炭酸リチウム」が溶出試験で規格に適合しないものがあり、回収すされることになった。既にほとんど回収されていると思う。このジェネリックは吸収が遅延して薬の効果が減弱する可能性があるらしい。

つまり、ジェネリックの炭酸リチウム(先発品はリーマス)は失格になったのである。

過去ログでは、例えばリーマスやアレビアチンのように血中濃度が重要な薬物は先発品の方が良いと言う記載をしている。

参考
ジェネリックの都市伝説
考察、「ジェネリックの都市伝説」
リスパダールとジェネリック、雑感
リーマス

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重篤な副作用が発生した場合には、医薬品医療機器総合機構までご相談ください。

古い入院カルテの患者さんの写真

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古い入院カルテには最初のページに患者さんの写真が貼られていることがある。これは病院にもよると思うが、僕が過去に勤めた病院では、若い頃の写真を貼り、昔はどのような人だったのかわかるようにしているカルテが多かった。

近年は、あまりカルテには写真は貼らない。そういう病院もあるかもしれないが、皆無に近いような気がする。

今60歳くらいの人で、長期に入院している人では、20歳頃の写真を見て愕然とすることがある。あまりに変わっているからである(統合失調症的な荒廃の進行がわかることを言っている)

現在、患者さんの写真を撮らないかというと決してそうではない。例えば院内のレクレーションや日帰りの旅行などで撮影するからである。その写真は本人に渡すが、いらないと言う人もいる。しかし、そのような写真をカルテには貼らないのである。

僕は最初、今の病院に移籍した時、全員の入院患者さんの写真を本人に頼んで撮影したことがあり、今もパソコン内に保存している。自分は撮られたくないという人は1名もいなかった。

これは一刻も早く全員の患者さんの名前と顔を一致させるためである。

これを早くしないと、治療イメージも湧かないからである。

普通、患者さんの過去の病歴や治療状況を把握しないと、良いアイデアも浮かびそうにない。そのために写真を撮ることは結構有効であり意味もある。

最近の入院患者さんの場合、写真を積極的に撮ってはいないが、時間が経つとかなり良くなりそうに思われる人は、頼んで撮影しておくこともある。気にするような人は最初から頼まない。

こういう風にすると時間が経って病状を本人と話しあう際に、どのように変わったかよくわかるメリットがある。過去の写真は嘘はつかないから。一般に表情の改善は精神科では非常に大きな所見である。

正面の写真は後に役に立つことがある。老齢で精神科に長期に入院している人の場合(50年選手のような人)、亡くなった時に葬式で使う写真がないことがある。これは家族にとって非常に困ることである。

そのような時、パソコンを探すと数枚は写真が残っているものだ。それをフラッシュメモリなどに入れて家族に渡す。ある程度フォトショップで補正も可能なので、結構良い写真ができる。

このようなことで、家族に感謝されることが過去に何度かあった。

今日の記事はもの悲しいものではある。しかし写真は現実的な面で役立つものなのである。

参考
治療イメージについて
精神科治療と記憶
森を見て治療を進める



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ESCキー

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ブログを書いている時、左上にあるESC キーをうっかり押してしまい、長々と書いたエントリが全て消えてしまったことはないですか?

しかも、そのような時、「元に戻す」方法がない。あるのかもしれないが、僕にはできない。

だいたい、いつかも書いたが、CapsLockキーとかESCキーは場所が悪いと思う。僕の失敗のパターンは、「半角/全角、漢字キー」を押す際に隣を押して全て消えてしまうというもの。

あの2つのキーは必要な人もいるんだろうけど、普通に使う分にはさほど必要ない人の方が多いと思う。

全く、たまらないって。同じ風には2度と書けないのに・・(2度目は少し雰囲気が変わることが多い)。

とにかく怒りっぽい人とセロクエル

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「怒りっぽい」という精神症状はセロクエルとデパケンRの組み合わせでうまくいきやすい。

「怒りっぽい」背景疾患はいろいろであるが、いかなる疾患でもある程度の効果があるようである(もちろん、セロクエルが合わない人もいるが)。

セロクエルの適切な量は個人差が大きい。例えば平凡に処方すれば、

セロクエル 200~300mg
デパケンR 400~600mg


くらいだが、ずっと少ない量で良い人も多い。50~100mgでも、服用するかしないかで大違いと言う人もいる。

ある時、広汎性発達障害の人にセロクエル25mgを半錠だけ就前に処方したら、「1日中、眠過ぎる」と火が出るように文句を言われた上、メモを取られた。メモの理由だが、統合失調症の薬を自分に投与されたから(のようである)。

一般の患者さんは、継続して診ている主治医の目の前でこんなことはしない。今後の治療関係に悪影響があると思うからである。だいたい、セロクエルは確かに統合失調症の薬だが、適応外処方でいろいろな疾患に処方されることは最初に説明している。(これは相手の感情の想像性の欠如から来る)

敏感な人では少量でも副作用が出る。しかし、かなりの量を服用できる人もいるのがセロクエルの特徴である。

セロクエルは一般に鎮静的な非定型抗精神病薬とされているが、従来の抗精神病薬の鎮静的な薬物群に比べると、非常に鎮静的とまではいえない。従来の鎮静的な抗精神病薬とは、例えばコントミン、ロドピンなどである。

むしろ、セロクエルの攻撃性や対人接触性の改善などが好影響を与えている。興奮にももちろん効くが、デパケンRを併用することで、相補的に効果を発揮するように見える。

テグレトール、ラミクタール、トピナなどの抗てんかん薬やリリカも「怒りっぽさ」を改善しうるが、上記の2剤が処方しやすい点で優れている。(リリカも抗てんかん作用を持つ)

症状が改善すると、最初に家族が良くなったことに気付く。外来でも受付の人や調剤薬局の薬剤も容易に気付くほどの変化が起こる。愛想が良くなるのである。また些細なことで腹を立てない。

最初に挙げたセロクエルで火が出るように怒った人だが、平凡に少量のデパケンRだけで驚くほど改善した。あれほど効くなら、最初からデパケンRだけ処方しておけば良かった。

このような人は落ち込んでいるように見えても、最初からSSRIやサインバルタなどを使うのはリスキーである。ある種の奇異反応?が生じ、怒りが爆発することがあるからである。(ラミクタールでさえこのタイプのリスクがある)

また、ラミクタールのように中毒疹が出やすい薬は、実際に出た後の本人の反応が予測できないので相当に処方し辛い。医師としては、今後の治療が続くことを主眼に置くべきであろう。

やはり薬に弱く、しかも怒りっぽい人は、セロクエルやデパケンRは処方やすいと言える。

参考
デパケンRと広汎性発達障害


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メーラー

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メーラーは長くMicrosoft Outlookを使っていた。

ウインドウズ98までは良かったがXPになると、新しいノートを買った際、backup.pstでは過去のメールやアドレス帳がうまく移植できなかった。(これはできない部分はなんとかコピペで対応。ただし膨大なので大変)

その後、Microsoft Outlookは、受信メールの容量に上限があることを発見。

ある時、送信はできるが受信できなくなったのである。その際、いろいろやっていると、メールをある程度削除することで受信できることがわかった。その後は不必要なメールが溜まらないように削除する習慣をつけた。

コンピュータは仕事を減らすのが目的だが、今までなかった雑用が増える。

ある日、メール受信はできるか、送信ができなくなった。しかし、「コンピュータへの変更を システムの復元で元に戻す」というツールを使うと、送信できるのである。

これはウイルスソフトが疑わしいと思った。その後も同じような災難に見舞われたが、その度にシステムを復元し続けるなんてできないでしょ。(笑)

結局、一時はプロバイダーのウェブメールで送信していたが、けっこう面倒。それに送信メールが整理できない。

そのようなこともあり、遂にMicrosoft Outlookを諦めることにした。そして、フリーソフトのサンダーバードに切り替えたのである。これは過去のMicrosoft Outlookのメールなどをそのまま移植できるのが良い。

しかし、サンダーバードにも欠点がある。一部のメールをハイライトしてサクっと削除できないからである。ソートして、あっという間に削除という方法がMicrosoft Outlookのようにはできない。できるのかもしれないが、よくわからない。(フィルタを使って削除なんて話にならん。同じ送信者でも残したいメールもあるため)

だから、既に2700以上の受信メールが溜まっている。なんとかしたいが、1つずつ原始的に手作業で削除しているので、埒が明かない。日々、どんどん増えていくだけである。

こんな時、バカだよなぁ・・と思う。あまりにもコンピュータらしくない。

Microsoft Outlook時代は、一度上限に達して受信できないことがあったので、こまめに削除して、受信メールは1500を超えないようにしていた。それを考えると、2700超えは深刻な事態である。サンダーバードの受信メール容量に上限があるのかわからないが。

だれか簡単で良い方法を教えてほしい。

うちの女医さんのビスタのメーラーなんてもっと酷い。遂にパンクしたようで、削除もできない。だから、今はメールが稼動しないため、航空券をインターネットサイトで購入した際はウェブメールで確認するようにしているという。

ビスタ時期のメールは容易にゴミ箱に捨てられなくなるという偉大なトラブルがある。これはXPに移したとしても容易に捨てられなくなる。

これはググって調べると、いったん添付メールで送信したふりをすると回復するらしい。実際、自分もできた。添付のメール送信はエラーになるが、何かが変わるようなのである。いったいなんちゅうメーラーなのよ。OSというべきか。

コンピュータはトータルでは便利なツールだが、細かいところで非常に難しい対応に迫られる。今のノートはパナソニックだが、購入時、初期設定した際、無線LANが不安定で切れまくって困った。

これは結構有名なトラブルのようで、ググると容易にヒットしすぐに対策がとれたが、切れなくなったのは良いものの、なぜか通信速度が遅い。通信中、時々フリーズしたようになる。ずっと以前のモデルの方が速いってどういうことよ。また、ケーブルを使うとずっと速くなるので、無線LANかそのドライバーに原因があるのは明らかである。(ハードディスクは全体の30%も使用していない)

パナソニックや無線LANのサイトに行ってドライバーを更新しても改善しないので、このパソコンはある程度我慢して使うしかない。このストレスはまるで64K時代のパソコンのようだ。(そこまで遅くはないが)

パソコンは遅いのは悪である。その理由は無駄に疲れるから。

僕が未だにXPを使っているのは、過去のソフトが使えるメリットより、XPというOSがわりあい使いやすいことが大きい。長く使っているので慣れているのもある。ビスタは大変な目にあったので、今は使っていない。(過去ログ参照)

ウインドウズ7は比較的良いらしいが、今は使う気がない。それでも、いつかはOSもヴァージョンアップが必要と思っている。




ダウン症候群の青年期における退行現象(11)

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今回は「いざと言うときに力が出ない(10) 」の続きである。

ダウン症候群の青年期に生じる退行現象は、一般の人たちにはあまり知られていないが、ダウン症候群の患者さんたちにいつも接している人には良く知られた病態である。

これはダウン症候群の人が、例えば作業所に通所していたり、福祉枠などで働いている際に、比較的急激な病状の変化が起こり、通所あるいは通勤できなくなるなどをいう。

うつ状態が診られたりするが、実際には「何もしたくない」など意欲の低下、アパシー系の病態である。パーキンソン症候群を伴っていたり、時に昏迷を生じたりする。幻覚を伴うこともある。また、重い例では、幼児返りが見られ身の回りのことも全くしなくなり、周囲の人の介護が必要になる人もいる。(著しい適応レベルの低下)

頻度的には4人に1人くらいであるが、ダウン症候群でも、作業所や会社に毎日、通っているなどある程度レベルの高い人たちにみられる。

仔細に最近の病歴を聴取すると、ちょっとしたライフイベント(担当の職員が変わったとか、友人が転居するなどの些細な環境変化)があったりするが、そこまでの危機になる説明がつかないものが多い。心理的なものも関与しているかもしれないが、むしろ疾患性に負う面が大きいように見える。

しかし・・
このようなダウン症候群の青年期における退行現象は、かつてはあまり診られなかったと言うのである。(勤続何十年の職員は、昔はそのようなダウン症候群の子はあまり見なかったという)。


これは様々な解釈が可能であろう。昔はダウン症候群の人たちは、施設入所か軽い人では在宅で、社会的かかわりと言う点で今より多様性はなかった。現在は、昔のダウン症候群の人たちとは異なり、一般の人と同じような経験を積み社会に出ているのである。

ダウン症候群でも自閉症が合併しているように見える人がいる。そのような人は作業所通所レベルに達しないケースがほとんどなので、上記のような退行現象を生じる人たちは、ダウン症候群でもちょうど高機能自閉症スペクトラムに相当する病態である。

重要な点は、ダウン症候群という既にはっきりとした器質性疾患に、一見、健康に見えていた青年期の人と同じような退行現象が生じることであろう。

これは社会的なものだけでなく、ほかに多くの要因があることを暗示している。

参考
統合失調症は減少しているのか?

口腔内セネストパチーと白虎加人参湯

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過去ログでは、口腔内の異和感、痛みなどの症状があり、歯科などを廻っている患者さんには、デプロメールやリボトリール、エビリファイ、リーマス、リリカ、ラミクタール、トピナ、グラマリールなどを有望な薬として挙げている。

この口腔内セネストパチーの症状だが、上記のような薬を服用していても、併用薬で微妙に効果が変化する。例えば骨粗鬆症に処方されるフォサマックなどである。フォサマックはなんとなくだが、骨に関与する薬なので、口腔内セネストパチーの症状に影響してもおかしくない。

普通、口腔内セネストパチーは若い人は稀で、中年~高齢の人にみられるので、向精神薬だけでなく成人病の薬を併用していることが多い。だから、向精神薬と内科や婦人科薬などの併用薬との総合的な薬理作用が症状を支配しているといえる。

だから、他科で処方される薬の変更の際に微妙に本人の実感が変化し、治療する精神科医も不思議な経験をする。

白虎加人参湯は、普通は口渇や多尿に処方されるが、体の灼熱感、発赤や痒みなどにも使われるため、セネストパチーには試みたい漢方薬の1つである。しかし、白虎加人参湯は水分を体内に保持する薬なので(その結果、口渇を抑える面がある)、老人の女性に使った場合、足の浮腫が酷くなることがある。このような人には使えない。

白虎加人参湯は決定的にセネストパチーを改善することはないが、何らかの影響を与え、症状が変わることもある。

よく考えると、白虎加人参湯の主たる生薬の「石膏」は、硫酸カルシウムなので、なんとなく、関わり方がフォサマックに似ている。(ここではこれ以上の考察はしない)

口腔内セネストパチーは、色々やっているうちに「なんとなく症状が緩和しあまり気にならなくなる」といった良くなり方をする。だから時間が経って、いったい何が最も重要な働きをしたのかはっきりしないことがある。

これはある高齢女性の処方である。

リボトリール 0.5mg
セロクエル 25mg
ハルシオン   0.25mg
ユベラN    300mg
グラマリール  50mg


この処方でセネストパチーの症状が完全に消失しているが、これまで長い期間、試行錯誤があった。僕はこの人に限れば、グラマリールがとても良かったように思うが、他の薬、例えば、この女性にとって影響が大きいハルシオンだって、無関係とは言えないと思う。寛解状態に至ったのは、総合的な薬理作用とかけた時間の結果である。

口腔内セネストパチーは、最終局面で薬が必要でなくなる人もいる。例えば、歯科で貰ったマウスピースだけで寛解してしまう人もいるからである。

こういう人も、最初からマウスピースだけでは良くなりはしない。

それまでの治療経過も関係するのである。

参考
口腔内セネストパチー
口腔内セネストパチーとリリカ(この女性は今回のエントリとは別の人である)





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いつも微熱がある人

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精神科の患者さんでは、いつも37℃台の微熱がある人がいる。それも若い人である。また、常時ではないが、数ヶ月~数年に渡って微熱が続く人がいる。このような人は自分でも心得ていて、「37.5℃ですね」などというと、

それが僕の平熱です。

という答えが返ってくる。その発熱を裏付ける検査所見がないことが多い。あるのは精神疾患だけである。

また、関係していると思える検査所見がみられることもある。例えば、いつも白血球数が1万を超えているなどである。こういう人でも、普通に働いており、少なくとも体力的には支障がないようである。

CRPや白血球数などの血液所見が正常で、微熱のみ見られる人は、向精神薬が関係しているように思うかもしれない。実際に向精神薬が関係しているように見える人もいる。たまに薬の副作用として「発熱」がみられる人がいるからである。

過去ログでゾロフトを試しに飲んでみた話が出てくる。あの時、熱がありそうな感じがしたので測ってみたら、37℃台の微熱があった。(過去ログではインフルエンザ様症状という副作用ではないか?と記載している)。

このタイプの急速に生じる「発熱」の副作用は体力的にもそれなりのダメージがあり、今回タイトルの「いつも発熱がある人」には含めない。薬に無関係に微熱がある人の話である。

これはたぶん精神疾患から来るものであろうが、一般に急性期を除けば、精神疾患では微熱など生じない人のほうが遥かに多いので、普遍的にこれが原因と言えるものはない。なんらかの感染や免疫反応を伴っている人なのかもしれない。なお、中毒疹では発熱が伴うことがあるが、これは免疫から来るものなので体の正常反応と言える。

発熱のみあり全く原因がつかめない人を、内科では初診時の診断名を「不明熱」としていた。(FUO fever of unknown origin )

このような人の中に、精神疾患の人もいくらか含まれるのである。過去ログでは、内科で診断に困り、「原因不明の代謝障害」と診断したが、実は統合失調症だった話が出てくる。

今は昔に比べ、検査の種類や精度が上がっているので、徹底的に検査すると、何らかの異常所見が見つかり原因が特定されるかもしれないと思う。

インドに「6人の盲人と象」という寓話がある。同じものを評するのに全く異なる理解をしていたと言うものだが、上の「原因不明の代謝障害」と「統合失調症」の話に少し似ている。最初の道筋が違うと、なかなか正体には行き着かないのである。

最初に挙げた、「いつも微熱がある人」の話に戻るが、寛解の水準が高まると、10年くらい続いた微熱が完全に消失することがある。

このような人は、たぶん精神疾患と一連のものだと思う。

参考
体験・ジェイゾロフト
原因不明の代謝障害
森を見て治療を進める
ヘルペス脳炎

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幻聴はどんなことですかね?

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一般に、精神科医は統合失調症の人には幻聴についてあまり尋ねないほうが良いとされている。これはあくまで一般的なことで禁忌というほどではない。聴かないとサッパリわからないことがあるので、そのような質問もある程度は仕方がない。それでも、睡眠や食事がどんな風かより若干聴き辛いのは確かである。

幻聴の有無の質問自体は幻聴を否定するものでもなく、また積極的に肯定してはいないので、幻聴の存在に中立である。

また診断基準に幻覚妄想の有無の項目もあり、それを聴かなくて、どう診断するんだ?という話にもなる。(過去ログでは幻聴は統合失調症に特異的な所見とまでは言えないと記載している)。

最近は幻聴はありませんか?と聴くと、

幻聴はどんなことですかね?

と逆に質問された。この人は発病後20年は経っているし、治療期間も同じくらいあるので、たぶん数え切れないほど同じ質問をされたはずである。

その人にとって「幻聴は未分化な異常体験」なのである。だから、逆にこちらに質問するのであろう。

精神症状が脳の認知の部分でうまく噛み合っていない。だからうまく表現できない。僕が幻聴を説明すると、

言葉はよく聴こえます。

という。また続けて、

インターネットから見られていますね。

と言う。とてもインターネットをしているように思えないのにそんな風に言うのである。僕は、インターネットをしたことがあるのか聴いてみた。

インターネットは自分の家にはありません。

「なんじゃそりゃ?」の世界である。本人はどうも、未だしたこともないようなのである。インターネットは不思議な言葉で、僕は上と同じような経験が何回かある。

ある時、75歳くらいの初診のおばあちゃんが、「インターネットに監視されている」としきりに訴えるので、実際にインターネットをしたことがあるのか聴いてみると、今までしたこともなく、それどころかコンピュータの実物を見たことすらなかった。家族にインターネットをしている人ももちろんいない。

どのように、インターネットと言う言葉が脳内に入ってきたか謎である。(たぶんテレビかラジオくらい)。

元々、インターネットには輪郭がない。境界線というべきか。

患者さんから見えない隠れている部分がテレビやラジオよりずっと大きいようなのである。だから、インターネット(それ自体、言葉)は、自我障害のある人には辛い環境なのであろう。おそらく、リスキーな世界である。

参考
幻覚や妄想を否定すること
やがてネットから離れ・・
幻聴が減っているかどうかさえわからない
惑星ソラリス


あと5錠ばかり増やしてください

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診察の時に、

あと5錠ばかり増やしてください。

と言われた。長期入院中の統合失調症の患者さんである。何がどう悪いから、5錠も増やしてほしいのかが謎だが、ニュアンスとして今の状態が良いと思っていないのはわかる。

それでもなお、「5錠ばかり増やしてほしい」と言う言い方は面白いと思う。「何がどう悪いのか言ってくれないと、どの薬を増やして良いのかわからないよ」という内容の話をしたら、

それは先生に任せます。

と言う。そういう風に言われると、その後に続く言葉が見つからない。そこで仕方なく、最近の睡眠の様子や食事や日常のことを聴いてみた。すると、

今はとてもよく眠れます。昔は全然眠れませんでしたから・・

などと言うので、自分の悪い状態(内面)がうまく表現できないのではないかと思った。全く、周辺のみウロウロしているだけで、本質的なところがあまり触れられない。

このような患者さんは、何十年か経った後、「○○のことは何も喋るなと言われていた」などの妄想的な話をすることがある。核心に触れないのは、単に表現できないのではなく、幻覚妄想が影響しているケースもある。

何十年か経って、「実は・・」と言う話が出るようになったのは、非定型精神病薬や新規抗てんかん薬の進歩に負うところが大きい。

精神科は1~2年では何も変わっていないように見えるが、5~6年も経つと結構、進歩しているものだ。10年も経つと別世界というかあらゆる面で、様変わりしている。

それは、5~6年前に比べパソコンのCPUが劇的に速くなっていることに似ている。日々、進歩しているのである。

参考
雑念に惑わされず治療を進める
内因性幻聴と器質性幻聴
病気はもう治りました




2011年J2 第 37 節

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今日、明日にかけて行われるJ2 第 37 節 は、今年のJ2クライマックスの前半戦だが、結果によっては、昇格3チームが決定する重大な節である。

現在の上位の順位
1 FC東京 74   45
2 サガン鳥栖 65  31
3 徳島ヴォルティス 65  17
4 コンサドーレ札幌 62  14
数字の前半は勝ち点、後半は得失点差


J2は昇格は3チームであり、既にFC東京は昇格を決めている。残り、サガン鳥栖、徳島ヴォルティス、コンサドーレ札幌の3チームうち、2チームのみ昇格できる状況にある。(今節を含めJ2もあと2試合)

前節(36節)、この3チームのうち徳島ヴォルティスのみ勝利し、サガン鳥栖とコンサドーレ札幌は敗れた。

サガン鳥栖は36節に勝ち、コンサドーレ札幌がその節でザスパ草津に敗れれば、実質、昇格が決まる状況にあったが、後半、ギラヴァンツ北九州と打ち合いになり、終盤で失点し敗れてしまった。

札幌はもっと悲劇でザスパ草津に終盤まで1-0でリードしていたのに同点に追いつかれ、ロスタイムに逆転負けを喫したのである。普通、昇格争いであの負け方は致命的と言える。あのような敗戦は、特にシーズン終盤では昇格するチームはしないものだ。

現在、昇格が決まっていない3チームのうち、サガン鳥栖は得失点差が大きいため有利ではあるが、今後の結果次第では昇格できない可能性もある。

今節、日曜日にサガン鳥栖と徳島ヴォルティスの直接対決があるが、コンサドーレ札幌はアウェーで湘南と土曜日に試合があり、同日に戦わないのが重大事件。長くJ2を観て来たが、こんなことは初めてである。

37節土曜日の試合
湘南(14:00)札幌[平塚]
F東京(17:30)千葉[味スタ]
栃木SC(17:30)大分[栃木グ]


現在、鳥栖と徳島は同じ勝ち点65で並んでおり、札幌は62と3差がある。そのためもし今日、札幌が湘南に敗れた場合、鳥栖と徳島は明日、引き分けでも同時昇格が決まる。

これはどうみても同じ日に試合をすべき状況だった。なぜなら、札幌の結果を見て、鳥栖と徳島は試合を進められるからである。

日本では歓迎されないと思うが、もし札幌が今日敗れて勝ち点を伸ばせなかった場合、2チームは全く攻めず、1990年ワールドカップイタリア大会のオランダとアイルランドの後半のような談合試合もありえるのである。

しかし、なんとか札幌が勝った場合、土曜日の時点で3チームが65で並び、明日、鳥栖と徳島は同時には勝たないので、3チームとも昇格が決定しない。厳密に言えば得失点差が大きい鳥栖が勝てば、札幌に3差がつくため実質昇格決定である。しかし徳島が勝った場合、徳島と札幌は得失点差が近いため、微妙な状況になる。徳島が勝ってもかなり有利にはなるが、決定的とまでは言えない。

札幌は、もし今日湘南に勝利したしても明日徳島が鳥栖に勝った場合、鳥栖との結果の争いになりやすいので相当に厳しい。また札幌は最終節はホームとは言えFC東京戦なので、かなり不利なのは間違いない。札幌のファンにとって、最も望ましい結果は、湘南に勝ち(できれば点差をつけて)、鳥栖が勝つか引き分けに終わることであろう。

J2オリジナル10という言葉があり、これは1999年のJ2初年度に参加した10クラブを指している。

コンサドーレ札幌
ベガルタ仙台
モンテディオ山形
大宮アルディージャ
FC東京
川崎フロンターレ
ヴァンフォーレ甲府
アルビレックス新潟
サガン鳥栖
大分トリニータ


この中で、未だ昇格したことがないのはサガン鳥栖だけである。今年の鳥栖の戦いは昇格に値するものであり、それは現在の得失点差にも表れている。鳥栖は色々苦労した歴史もあり、ぜひ今年昇格を決めてほしいと思う。

オリジナル10以外のJ2チームで昇格したことがあるチームは横浜FCだけである。しかし横浜FCはオリジナル10ではないが黎明期からのJ2チームであり、比較的新しいJ2チームの徳島が昇格したとしたら画期的な事件である。J2も新時代に入ったと妙な感慨がある。

数年前のエントリで「徳島は3年連続最下位で、ホームで何ヶ月も勝利どころかゴールさえなかった。弱いJ2チームのサポはマゾにしかできない。」という記載がある。こういうチームでさえ、昇格が実現するという驚きである。

札幌は去年の成績が悪かったこともあり、今年は戦前、全く期待されていなかった。序盤の成績もまとまらなかったのである。ところが、じわじわと順位を上げ今も昇格圏内にいるのはかなりの驚きである。僕は長く札幌を応援してきたこともあり、昇格してほしい気持ちはあるが、今年に関しては昇格できなかったとしても、鳥栖と徳島が昇格するのならまあ仕方がないか、といったところだ。こういう人は札幌のサポとは言えない。

徳島の欠点は、平均入場者数が少なすぎることだろう。また、スタジアムの規模や芝の状態(整備状況)もJ1水準とは言いがたい。またアクセスも悪いのである。鳥栖はスタジアムも比較的大きいし、最近は入場者数も多くなっている。J1仕様という点では、鳥栖と札幌の昇格がふさわしい。

今日、札幌が湘南に敗れた場合、しらけた結果になりかねないので、最低限引き分けで終わってほしいものだ。札幌が引き分け以上だと、明日や最終節がとても面白いものになるからである。

参考
J2の面白さ
W杯イタリア大会とイングランド
徳島ヴォルテスとエビリファイ
インターネットが最近、やっと普及し始めたこと
栃木SCと松田浩監督
セリエAは得失点差が問われない


精神疾患による傷病手当金

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いわゆる傷病手当金とは、病気で仕事ができない時に支払われる保険金のようなものである。これは、健康保険に加入している本人または船員保険の加入者本人に資格がある。

僕は研修医の時に入院歴があり(過去ログ参照)、医局のラボの女の子に言われて、初めてこの制度があるのを知った。健康保険には、疾病による休業補償のような保険?が付いているのである。

これは健康で病気知らずの人にはあまり気付かれない制度だと思う。今回のエントリは厳密には「生命保険」とは異なるが、制度的にはこれに近いので生命保険のテーマに入れている。

傷病手当金は、病気や怪我で仕事ができず療養中の人に支払われる。病気にはもちろん精神疾患も含まれる。初日からは支払われず、仕事を休み始めて4日目から支払われるルールになっている。この最初の3日間は待機期間と呼ばれるが、船員保険の場合、なぜかこの待機期間のルールがない。

支払われる額は「標準報酬日額」の6割。だから休養し傷病手当金のためにかえって得することはないが、貰えないよりは遥かにマシである。研修医時代、大学病院から貰える給与は月額13万円ほどだったので、僕は月額で7~8万円を貰った。(研修医は大学病院の給与はともかく、休むとアルバイトができないので大変な痛手)

傷病手当金は、仕事を休み療養していたとしても、有給休暇を当てていた場合は支払われない。また、休んでいても関係なく給与が支払われる役職の人も貰えない。これはあくまで病気や怪我による休業補償的な保険?だからである。

疾患の程度であるが、入院しなくても良く、家庭療養程度で済むケースでも支払われる。ただし、「仕事ができない程度である」という医師の診断書が必要である。

これは精神科の場合、「貴方は家で休養していた方が良い」と言われているのであれば十分である。これで、そう診断書を書かない医師がいたとしたらその方がおかしい。


内因性うつ病の重いケースでは貧困妄想のため、「収入がなくなるので休めない」と訴える人がいる。このような人は、傷病手当金の話をすると多少は休養させやすくなる。また、入院すれば民間の生命保険に加入していればかぶってもらえるため、休むことでかえって収入が増えることもありうる。

病識がなく自殺しかねないような重いうつ病の人は、傷病手当金と生命保険の入院給付金の話をして、なんとか入院治療を薦める方が良い。放っておくと、死亡時の自分の生命保険金をアテにしたりするからである。(参考1参考2)。

傷病手当金の支払い期間は最高1年6ヶ月である。これは精神疾患であったとしても、結構長い期間と言える。1年6ヶ月丸々支払いを受ける人は重かった人である。ここで注意したいのは、1年6ヶ月というのは、絶対的?な期間であって、延べではないこと。

例えば3ヶ月間、うつ病で休養し給付されたとする。その後、会社復帰し6ヶ月間働いたもののその後再発して再び休養した場合、この6ヶ月間はトータルの支払い期間から引かれてしまう。つまり、例えば、2011年11月から休養した場合、その後1年半のうち働いた時期があったとしても終了の日は変わらないのである。

仮にうつ病のため傷病手当金を受け、その後治療が終了し服薬も通院もしなくなり、8年後に再発したとしよう。このケースでは、いったん治癒しているとみなされるので、同じ病名であっても再給付可能である。この治癒の期間であるが、精神疾患の場合3年が目安である。あまりに再発が近い場合、一連のものとされる。

傷病手当金を受けている期間に退職するケースがあるが、これは細かいルールがあるが、概ね退職後でも、働けないほどの病状ならば支払われる。この細かいルールとは、健康保険に入っていた期間などである。1年以上支払っていないと給付は受けられない。だから就職してすぐに精神疾患で休んでも貰えない。(その他、待機期間中の3日未満に退職した場合も給付を受けられない。)

どのような書類が必要かは、受診している病院の精神保健福祉士に聴くと良い。このような制度は彼らが最も詳しいからである。

精神科医は細かいルールまでは詳しく知らないのである。(細かいこととは、例えば受給中に障害年金を貰い始めたとか、受給中に退職し他の会社に就職した時などの扱い)

参考
自分が自分を殺したら・・

じっとしておれない。ずっとぐるぐる廻っている。

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この患者さんは他科から紹介されている。ここ20年間ほど、うつ状態が続いており、当初は内科や脳神経外科に通院していた。その後、心療内科に通い始めたらしい。初診時は「神経が高ぶってイライラしている。夜は良く眠るが、朝は全然起きられない」という。

心療内科の処方
エバミール 1mg
トリプタノール 40mg
セルシン    2mg
ドグマチール 150mg
ジェイゾロフト  75mg


90歳を超えているのによく処方するよ、といったところ。特にトリプタノールとドグマチール。ジェイゾロフト75mgもこの年齢ではけっこう多い。老人に多めのトリプタノールを処方すると、その抗コリン作用が認知症様の症状を出現させることがある。たぶん、ジェイゾロフトで良くならないので追加されたものと思った。トリプタノールを追加するのがプロっぽいのだが、この患者さんではうまくいっていない。

だいたい、ずっとトリプタノールを処方されている人と、高齢になって突然トリプタノールを処方されるのでは全く体の反応は異なる。最初のSSRIが不調だったので追加してみたのであろうが、悪あがきのやり方が悪い。いつかうつ状態の人の「正しい悪あがきの仕方」というタイトルの記事をアップしたい(仮題)。

主訴は本来のうつ状態に由来するものはわずかで、実はジェイゾロフトとドグマチールによる副作用が大半と思われた(アカシジア様症状と神経の高ぶり)。これらの薬をまず漸減することにした。

初診時の処方
ワイパックス 2mg
ドグマチール 50mg
ジェイゾロフト 50mg
トリプタノール 25mg
マイスリー   5mg
デパケンシロップ 3ml


5日後。
家族によるとかなり良いという。イライラがなくなりスッキリしているようだと言う。まだ足腰がふらつくらしい。以前より、考える力が出てきた。夫が最近亡くなったこともありよく泣いているらしい。更に減量。

ワイパックス 2mg
ジェイゾロフト 50mg
トリプタノール 12.5mg
マイスリー   5mg
デパケンシロップ 2ml


その7日後
最近は体験したことを覚えている。また、前より考えられるようになっているという。はっきり物を言うらしい。とても食欲がある。「笑顔も出るようになりました」と。トリプタノール中止。

ワイパックス 2mg
ジェイゾロフト 50mg
マイスリー   5mg
デパケンシロップ 2ml


その14日後
体の動きが良くなり、考えるのも良くなったが、不安感が結構あると言う。すぐに泣くらしい。夫がなくなって以来、泣き癖のようなものがついた。感覚的には双極性障害っぽいが認知症もある程度みられる。人工的な認知症が若干回復したといったところ。不安感に対しセディール20mgを追加。認知症には抑肝散を追加する。これらには大きな期待はしていない。副作用と高齢なのを考慮している。

その1ヶ月後くらい
少しずつ良い状態が長くなった。泣き癖は変わらない。疲れた時に昔のことをいう。以前はそういう話は全然なかったらしい。ワイパックスとジェイゾロフトを減量。いったんデパケンシロップは中止してみる。

ワイパックス 1mg
ジェイゾロフト 25mg
マイスリー   5mg
セディール   20mg
抑肝散    5.0


その2週間後
ジェイゾロフトは25mgにすると、心気妄想が出て、あまり良くなかったらしい。ジェイゾロフトとワイパックスを元に戻して経過観察。

ワイパックス 2mg
ジェイゾロフト 50mg
ほか変更なし


その1ヵ月後
泣くのは3分の1に減少したと言う。7割方元に戻ったらしい。デイサービスに通う。冗談を言うようになった。昼寝は全くしない。夜は寝ている。思い切ってサインバルタを追加。ジェイゾロフトを再び減量。

ワイパックス 2mg
サインバルタ  20mg
ジェイゾロフト 25mg
マイスリー   5mg
セディール   20mg
抑肝散    5.0


2週間後
サインバルタを入れて良くなったという。テレビを観たり、落ち着きが出てきた。いつもゆっくりとしている。考え方がしっかりしてきた。これで十分かどうかは微妙だが、家族が良いと言うので処方は変えないことにした。

その2週間後
まあまあ良いが、何もない時に落ち着きがないという。不安感を訴えることがある。特に寝起きが悪い日は眼差しが険しいと言う。それでも冗談も出るし、笑顔もあるので全く悪いわけでもなさそうである。この機会にセディールを中止し、デパケンシロップ再開。ややサインバルタの奇異反応のような状況と思われる。サインバルタを中止するかデパケンくらいを追加するかだが、ジェイゾロフトをあれこれ増減しても埒が明かないので、サインバルタは継続。

デパケンシロップ 2ml 追加。
セディール中止。
ほか変更なし。


その2週間後
デパケンシロップを使うと、朝から調子が良い。「頭の中に霧がかかっていたのが晴れてきたようです」という。昼間は自分でテレビを観るし昼寝もする。今回、ジェイゾロフトは中止。

ワイパックス 2mg
サインバルタ  20mg
マイスリー   5mg
抑肝散    5.0
デパケンシロップ 2ml


更に2週間後
睡眠薬を中止しても大丈夫になったという。朝から顔つきも話もはっきりとしている。物忘れが非常に減った。顔色も良い。食事も良く摂れているらしい。サインバルタが奏功している。マイスリー中止。

ワイパックス 2mg
サインバルタ  20mg
抑肝散    5.0
デパケンシロップ 2ml


更に2週間後(初診5~6ヶ月後)
かなり元気である。2~3日前のことは以前は忘れていたが、今はすぐに思い出す。前よりすごく賢くなったという。診察室でも普通に話せる。特に支障はないらしい。家族が皆、喜んでいるという。

この患者さんは何が効いたかと言えば、サインバルタである。世の中には、うつ状態が関与する認知症様状態がずいぶんあることがわかる。デパケンシロップは認知症には良くないと思われるが、サインバルタのやりすぎを緩和し、気分安定化薬として働いている。

(おわり)

参考
ドグマチールと老人
水戸黄門

背中がピリピリし、それが移動する。

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元々、飲酒量が多い人だったらしい。退職後に奇妙な体感幻覚が出現した。背中がピリピリし、それが場所を変え、動いていると言う。

このような症状は、一応、その場所を確認すべきである。寄生虫のこともありえなくはないから(笑)。若い女性なら確認しない。なんだか矛盾しているが、精神科はそういうものだ。(謎)

なお、この人と非常に似ている症状の人が過去ログに出てくるが別人である。

この人は非常に遠方の人だったが、偶然うちの病院に初診している。どこの病院に行ってもたいして改善せず「良くわからない」と言われたらしい。症状は、近所の病院でジェイゾロフトを25mg投与された際に、2割くらい減ったがそのまま変わらなかったという。また、少し暖かくなると症状が緩和すると話していた。

一応、職歴を聞くと、化学系の会社に勤めていたらしいが、薬品との因果関係は不明である。たぶん飲酒が最も関係していそうに思ったが、治療に関しては、仮にそうであったとしてもあまり大きな問題ではないと思った。特に飲酒は禁じていない。

初診時、平凡にジェイゾロフトとリボトリールを処方している。(ジェイゾロフトは服用歴があることを重視)

ジェイゾロフト 25mg
リボトリール  0.5mg


その3ヵ月後くらい
症状が半分くらいになったという。ただ、寝汗はかきやすいらしい。座っていると痺れ感が出ると言う。前からするとずっと良いというが、少々、ジェイゾロフトが合わない印象もあるため、半量にしルジオミールを少量追加する。

ジェイゾロフト 12.5mg
リボトリール  0.5mg
ルジオミール  10mg


その1ヵ月後
背中の一部が動く感じと痛みは大分減った。10分の1くらいになったので驚いていると言う。特に背中のピクピク感と異和感はほとんどないらしい。(ただしピクピク感は完全には取れていない)薬の副作用は全くないという。「どこでもよくわからないと言われていた。ここまでなるのに1年半くらいかかりました」と話す。

その4ヶ月後くらい。
やっとピクピク感が完全に取れたという。全く気になるものはない。症状が消失したが、ルジオミールのためか3kg程度体重増加している。おそらく、この体重増加も症状の改善にプラスに働いている。元々どちらかと言えば痩せ型の体型だから。

その年の冬
初診頃、本人が話していたが、夏に症状が緩和し冬に悪化する傾向があったらしい。冬にどうなるかが問題である。たいして薬は処方していないだけに。

極寒い日、微かにピリピリ感が出たようであるが、ほとんど気にならないほどだったという。

この人は今風にいうと、身体表現性障害であるが、抗うつ剤とリボトリールで寛解している。なお、この人は量は減らしているが、今でも飲酒しているらしい。

参考
リエゾンの患者さん
背中の肉を抉り取られる
総合病院での保守的な入院

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