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SSRIのうつと不安に効くメカニズム

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先日、古い製薬会社のパンフレットを整理していた際、SSRIの作用について記載されたものを発見。下敷き仕様になっており、表裏2枚しかないが、シンプルにわかりやすく書かれている。

 

このパンフレットは2007年10月明治製菓株式会社によるもので、おそらくデプロメールを想定していると思われる。

 

SSRIはセロトニンを相対的に効果を高める作用を持つが、うつと不安では脳への作用点が異なることがわかる。

 

 

むしろ裏面のこちらの方が、読者の方には参考になるのではないかと。

 

精神疾患には様々な精神症状が重層していることも多く、精神科医により診断(見立て)が異なる要因の1つである。上のパンフレットを見ると、診断が変わったとしても、「以前は誤診されていた」という表現は、少し違うのがわかると思う。

 

「パニック障害の50~60%にうつ病が併存」などいろいろな記載があるが、このうつ病というのはそのまま訳したからこうなるのではないかと思うが、昔の「うつ病」とはイメージが異なる。

 

昔の「うつ病」は内因性うつ病圏内を言うことが多く、昔風に言えばこの記載は、「パニック障害の50~60%にうつ状態が併存」という感じになる。その理由は、パニック障害は神経症であり、内因性疾患ではないからである。

 

未だにこのブログでは、パニック障害には「うつ病」が併存と言った記載は1度もないはずである。必ず「うつ状態」と記載している。(ただし引用例にはうつ病の表現もある)

 

個人的に、モーズレイなどでよく出てくる「双極性うつ病」というネーミングにもかなり抵抗がある。双極性障害は内因性疾患なので、うつ病という用語はパニック障害に比べずっと使いやすいはずだが、かつて「双極性うつ病」なんて言葉は聴いたことがなかったからである。

 

この場合、「双極性障害のうつ状態」くらいが記載しやすい。

 

参考

現在の境界型人格障害と広汎性発達障害

リフレックスはなぜ不安に効くのか?

 

 

 


使い慣れない薬は副作用も出やすい話

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過去ログでは、使い慣れない薬は効果が出にくいと言う話が出てくる。また同様に副作用も妙に出やすく中止に至りやすい。このようなことから、普段処方しない薬を使っても、そう上手くはいかないことがわかる。

 

また、既に海外で発売され評判も良い向精神薬の治験が上手くいかない理由の1つになっている。

 

僕が関連病院で働いていた当時、先輩から精神科医が処方すると順調にいくのに、内科医や外科医が処方すると上手くいかない話を時々聴いた。その後、長くリエゾンをしていると同じようなことをよく感じる。

 

これは良く考えると、実にオカルトな現象である。それは向精神薬は化学物質だからである。

 

上は、レクサプロの市販後調査(中間集計、2012年1月~2013年12月)について、副作用の部分を抜粋したものである。調査期間は厳密には2012年1月から2013年6月までであった。症例数は2255例である。(ただし承認時までの症例数はこれより少ない)

 

レクサプロで良く診られた副作用は、悪心(140例、4.54%)、傾眠83例(2.69%)、倦怠感(30例、0.97%)であるが、上の表をみると、ほとんどの副作用は承認時までと比べ発売後に著しく減少していることがわかる。

 

主な副作用(%)

食欲減退3.69→0.68

不眠症1.45→0.71

浮動性めまい8.73→0.81

頭痛10.18→0.65

傾眠23.45→2.69

あくび3.64→0

腹部不快感5.82→0.58

便秘4.55→0.36

下痢6.18→0.58

悪心23.82→4.54

嘔吐3.27→0.16

射精障害4.37→0.14

倦怠感7.09→0.97

口渇9.64→0.29

 

実際、患者さんが内科の主治医に「これこれの薬を処方してほしい」と頼んでも、精神科医が処方するより効果も出にくく副作用も出やすい。また、個人輸入で手に入れて服用しても期待していたほど効果が出ない理由が、これらの資料からよくわかると思う。

 

極端な副作用、例えば重篤な中毒疹でさえ、いつも使い慣れた医師が処方するケースと、そうでない医師が処方するケースでは出現率は間違いなく異なる。(もちろん前者が低い。ここがオカルトなところ)

 

これらは医療におけるデジタルでは説明できない現象だと思う。

 

(この記事はオカルトのテーマに入れる予定でしたが、それだとレクサプロの副作用を調べる読者の方の目に触れないため、レクサプロのテーマに入れています)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エビリファイ 小児期の自閉スペクトラム症に伴う易刺激性の適応追加承認

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上はエビリファイのさまざまな剤型。1mlの液剤の包装はピンクである。

 

エビリファイの1mlの液剤発売の記事では、これは自閉性スペクトラム障害への適応を見据えての発売であろうと記載している。以下は再掲。(エビリファイ内用液1ml追加発売の予定

 

今回のエビリファイ1mlはちょうど1㎎になるが、自閉性スペクトラムへの適応拡大などを視野に入れているのではないかと思われる。液剤1ml包装なんて、いかにも小児向けだからである。
 

今回、大塚製薬株式会社のサイトでは、以下のようにアップされている。

 

大塚製薬株式会社(本社:東京都、代表取締役社長:樋口達夫、以下「大塚製薬」)は、抗精神病薬「エビリファイ(一般名:アリピプラゾール)」に関して、「小児期の自閉スペクトラム症に伴う易刺激性」の効能追加、および「エビリファイ錠1mg」の剤形追加の製造販売承認を9月28日に取得しました。
 

その詳細として、

 

「エビリファイ」は、当社創製の抗精神病薬。「統合失調症」「双極性障害における躁症状の改善」「うつ病・うつ状態」に次ぐ4つ目の適応症となる「小児期の自閉スペクトラム症に伴う易刺激性」の追加承認を取得。開始用量である「エビリファイ錠1mg」の剤形追加も承認。

 

国内の自閉スペクトラム症の患者数は約10万人であり、かんしゃく、攻撃性、自傷行為、またはこれらの複合行為の行動障害(易刺激性)を呈することがある。そのような患者さんへの治療薬は少なく、安全に使用できる薬が望まれていた。


「エビリファイ」は、米国で2009年に小児患者さんに対する「自閉性障害に伴う易刺激性」の承認を受けた。日本においても、医療上の必要性の高い薬として開発要請を受け臨床試験を実施した。

 

とある。なお、自閉症に何らかの適応を持つ薬は、オーラップ、リスパダール、エビリファイになった。(添付文書上)

 

オーラップ

1.統合失調症。
2.小児の自閉性障害、小児の精神遅滞に伴う次記の症状:動き、情動、意欲、対人関係等にみられる異常行動、睡眠、食事、排泄、言語等にみられる病的症状、常同症等がみられる精神症状。

 

リスパダール

1.統合失調症。
2.小児期の自閉スペクトラム症に伴う易刺激性。

 

この2つは、小児に処方するにはEPSを始め副作用の点で問題が多い。エビリファイは相対的にこれら2剤より副作用は軽い薬である。しかし、いずれにせよ自閉性スペクトラムの随伴症状(2次症状)に対し処方されるものである。

 

なお、今回のエビリファイの添付文書では、1㎎から開始し最高15㎎までとなっている。実際には年齢にもよるが、比較的低用量で処方されると思われる。

 

 

 

ともたけさんの大三元

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2016年9月20日、日本プロ麻雀連盟A2リーグ戦でともたけさんが大三元を和了した映像。この日、僕はリアルタイムでアベマTVフレッシュで観戦していた。日本プロ麻雀連盟に限らず、リーグ戦は1日4半荘で行われることが多い。これはその日の3回戦のものである。ともたけさんは日本プロ麻雀連盟でもベテラン選手で、1度だけ鳳凰位を獲得している。

 

長くA1リーグ選手でもあり、タイトル戦の決定戦にはかなり出ているが戦法も関係しているためか優勝はあまりない。ともたけさんは、随分昔の麻雀雑誌にも牌譜の中で名前を見たことがあったが、ずっと「あさたけ」さんと思っていた。当時は朝武雅晴と書かれていたからである。

 

彼の戦法は極端な手役派で、これはあがりに向かっているのか?と思うような意外な打牌が多い。ある日のリーグ戦で、解説の山田プロから、「(第1打)ドラが3筒なのに5筒切りましたよ。牌効率を教えてあげてくださいよ」などと言われる始末だった。これはバカにしているわけではなく、かなりリスペクトも含む解説である(常人にはとても真似ができないため)。ともたけさんは、あがった時の打点の高さから、ドリーム打法と言われる。また、多くの若手選手からもリスペクトされているプロである。また、ファンもかなり多いように思う。

 

ともたけさんは特別な打法もあり、不調な時はほとんどあがりがない。そのために決定戦では優勝しにくいのだろう。昨年はリーグ戦序盤から不調になり、それでも後半盛り返し、最終節中盤、降級を免れるほどのスコアになったが、仁平選手の起死回生の四暗刻の再逆転のためA1からA2に降級となった。彼によると以前もA2に降級したが、1期で復帰を果たしたそうである。昨年連盟のA1は意外な選手が降級している。荒正義プロとともたけプロの2名が降級になったからである。荒プロに至っては、未だかつてA1から降級したことがなかった。

 

ベテラン選手ではたぶん現役最強の荒正義プロも先週のA2リーグ戦で大三元を和了しているが、彼の大三元はともたけさんに比べ難易度が低かった。あのような手が配牌で入るのも周囲の選手との格の違いからだと思う。(周りが相対的に弱いために良い手が入りやすい)。

 

 

よくもまあ、これほど役満が出るものだと思う。日本プロ麻雀連盟Aルールは一発も裏ドラもないため、高打点が見込めない時は無理に手役を狙うか、他家の上りを阻止するために早上がりにかけるしかない。したがって相対的に勝負が後半まで縺れる面があり、ともたけ選手などの高打点が成就しやすくなる。また役満も一発・裏ドラありのルールより出現率がたぶん高くなる。

 

いつだったか瀬戸熊プロが解説中に話していたことだが、若い頃、ある麻雀大会に出場していた時、偶然、ともたけさんと同卓したという。ともたけさんは最初、全くあがりがなかったが、突然6000オールなどをあがりひとまくりされた。その日、ともたけさんから日本プロ麻雀連盟に誘われたという話である。瀬戸熊さんの話では、プロ入り当初は苦労が多く、かなり後悔していた時期もあったらしい。荒プロの話(解説の中での話)では、日本プロ麻雀連盟は昔はトップの3名しかプロで食っていけなかった。その後時代が変わり、連盟の収入が増えたことから、今は上位の10%がプロで食っていけるようになった。良い時代になったものだといった内容である。収入源は、コナミなどソフト会社との提携による契約料やロン2のサイト収入、リーグ戦およびタイトル戦の配信収入などであろう。個人レベルでは、マージャン教室の講師などもある。無名の大半のプロには厳しいことには変わりはない。

 

最初の映像では、実況が古橋プロ、解説が高打点派の望月プロである。以前、望月プロの清老頭の映像をアップしたことがある(再掲)。

 

 

古橋プロは静岡の選手だが、なぜかプロ麻雀連盟では静岡支部の人たちが多く実況にかかわっている。古橋選手もいつのまにか強くなり、来期は晴れてA2リーグに昇級する。いろいろな試合を多く観ることで、きっと強くなるのだと思う。連盟の場合、いわゆるAリーグ選手、A1およびA2は相当な強豪揃いだが、ここまで昇級するのは並大抵の強さでは難しい。

 

現在、女性のAリーグ選手は、女流モンドでも出場している和久津晶(わくつあきら)プロのみである。近年では、二階堂亜紀プロ、黒沢咲プロがA2で戦っていた時期があるが、今は降級しB1にいる。今の連盟のB1はこの2名に加え、滝沢和典プロおよび佐々木寿人プロも昨年A2から降級したためスター選手揃いである。

 

実況に関わっていた白鳥プロ(A2)もマスターズを2連覇しモンド杯も出場できるまでになった。モンド杯は決して最強選手だけが出ているわけではなく、モンドに出られない選手の中にも強豪が多くいる。それでもCSとはいえ、テレビ媒体に出ることはかなりの名誉なことには間違いない。知名度が上がるし、ファンも劇的に増えると思われるからである。

 

麻雀は将棋のように強い方がほぼ勝つゲームではなく、配牌だけとっても公平ではない。極端な場合、最初からあがっていることすらある。そのため、荒さんが何十年間も降級しなかったのは脅威的強さだと思う。麻雀の面白さは、やや力量が落ちる選手でも強豪に勝てるチャンスがあることだ。その意味で、プロ麻雀のリーグ戦やタイトル戦は十分にエンターテイメントしていると思う。

 

最初の映像では役満を見据えているため、混一色に行く必要がないのに向かっている。この結果、役満の色が多少は薄れるが、ともたけさんであればそれも根拠にならない。山田選手は満貫を聴牌していたが、約1分くらい考えて中を切らなかった。ともたけさんのドリーム打法は実に魅せるというかプロらしいと思う。

 

下の映像の前半は、西川選手がツモり四暗刻で先制し、その後荒さんが追いかけリーチ、ともたけさんが面前混一色のツモり四暗刻で追いつくという凄い局である。この映像でもともたけさんのドリーム打法が良く表れている。

 

 

ここで先制リーチをかけている西川選手は今年初めてA2に昇級した選手である。彼はマージャン教室の先生をしているらしく、生徒さんからもいつも応援されている。まだ小さいお嬢さんがおり、おとうさんのリーグ戦の日には生観戦しているという。お嬢さんから、「おとうさん、逃げてばかりじゃ勝てないよ」と言われた話は微笑ましい。以下は今年の公式戦で、西川選手が親の国士無双を白鳥選手から打ち取る場面である。

 

 

なお、この映像中でも、山田プロは九索を止めている。

 

(この記事は標準の文字サイズで記載してますが、標準とLサイズのどちらの文字サイズが読みやすいでしょうか?)

 

 

鹿児島仙巌園の猫神

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鹿児島市の島津家の名勝、仙巌園(せんがんえん)にある猫神神社。この写真ではわかりにくいが、とても小さなかわいい神社である。

 

この猫神神社の凄いところは、伝説でも神話でもなく実話に由来すること。

 

 

16世紀の朝鮮出兵の際、時刻を知るために、7匹の猫を連れて行った。そのうち5匹は戦死し、2匹だけ生き残った。この神社はその2匹の猫を祀ったものである。毎年、にゃんにゃんにゃんの日(2月22日)には愛猫長寿祈願祭が行われている。

 

ここには観光客のために英語、日本語、中国語、韓国語による説明がある。また、百日咳にも御利益があると書かれている。

 

 

上は、猫神の由来がわかりやすく書かれている。嫁さんは5匹が戦死と表現されているのがおかしいと言う。戦闘要員ではないし。(ただし、ここではそう表現されていない。ほかの場所の説明でそう書かれていた)。

 

確かに戦時中、兵士ではない一般市民の死亡者は戦死とは言わないよね。

 

 

猫の目の瞳孔の開き具合を見て、時刻を測ったと言う。なお、60進法の時間単位は紀元前2000年くらいにシュメールで既に考えられていた。シュメールとは現在のイラク辺りである。また、ゼンマイ仕掛けの懐中時計は16世紀にヨーロッパで発明されていたと言われる。

 

黎明期の時計は日時計が多く夜間に使えないのが難点だった。その点で、日が陰っても使えるネコの瞳孔は優れている。

 

 

このように小さな賽銭箱もあり、200円だけ入れておいた。このすぐ横には絵馬をかける場所もあり、自分のかわいがっているネコの長寿祈願や、なぜか大学合格祈願?を書いた絵馬が多数あった。

 

 

このように、猫神社を訪れた人が猫の置物を供えている。

 

なお、過去ログに今のネコは無職状態だが、かつては仕事があったと言う記事をアップしている。

 

参考

失業中のネコたち

 

(この記事も標準文字サイズで記載しています。標準とLサイズのどちらの文字サイズが読みやすいでしょうか? 麻雀の記事だと読まない人もいると思うので。再びアンケート。)

セカンドオピニオンと選定療養費

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精神科ではセカンドオピニオンの話が出ることは意外に少ない。おそらく、セカンドオピニオンという言葉を知らない人も多いのではないかと思う。(アンケートを取ったわけではないが)

 

セカンドオピニオンとは、簡単に言うと他の医師の診たてを聴くことである。この場合、「別の病院ないしクリニックでの診たて」を言うのではないかと思う。

 

ここで、重要なことがある。

 

この場合、一般的な感性だと、現在の主治医にセカンドオピニオンの紹介状を書いてもらうなんて、到底できないと思うのが普通だ。

 

それは、ケースにもよるが、かなり失礼な行為(あるいは侮辱行為)になる可能性があるからである。その後の円満な主治医との関係を壊すリスクも大きい。

 

ケースにもよると書いたが、以下の状況ではおそらくさほど失礼にならないと思うが、おそらく感じ方はその医師の性格にもよる。また依頼の仕方にもよるだろうと思う。

 

例1

児童思春期専門ではない主治医に、発達障害を専門で診ている医師にセカンドオピニオンの紹介状を求める。

 

これは、僕は積極的に紹介状を書いている。個人的に児童思春期を主に診ている医師の診断は非常に興味があるからである。

 

例2

認知症のうち、アルツハイマー型かそうでないかは治療方針に大きく影響する。典型的ではないと思う場合、家族は認知症治療の専門病院にセカンドオピニオンを求めても良いと思われる。

 

これも、大きな病院では様々な検査も可能なため、積極的に紹介する。微妙な病態では、依頼されなくても紹介状を書くことがある。

 

精神科では、特に内因性疾患の場合、中核病院で診てもらう価値があるかどうか微妙なケースも多い。その理由は、大学病院や国立ないし県立病院がより良くなるというものではないからである。(理由は、過去ログのあちこちに記載している)

 

また、地方では精神科病院ないしクリニックの選択の余地がないこともあるので、主治医との円満な関係を保つことはとても重要だと思われる。

 

そのようなことから、中核病院にセカンドオピニオン求めて受診する場合、紹介状なしで受診せざるを得ないことの方が多い。

 

大規模な中核病院に紹介状なしで受診した場合、民間病院ないしクリニックとは異なり、「選定療養費」なる別料金がかかる。これは病院により料金が異なり、たぶん個々の病院で決めていると思われる。3000~5000円プラス消費税くらいが多い。これはもちろん保険は効かない。

 

民間病院から民間病院ないしクリニックにセカンドオピニオンを聴くために受診した場合、おそらく紹介状がなくても診てくれる病院が多く選定療養費もかからないが、たまに紹介状なしの患者を断る病院もある。

 

これは実質、セカンドオピニオンのためだけの初診を断っていると同じだが、たぶんそのような意図はなく、前医が紹介状も書けない患者を排除するためだと思われる(他病院で問題を起こしたような患者)。

 

また、セカンドオピニオンの場合、自立支援法は使えず3割負担になることが普通だ。他科だと、10割負担にしている病院もあるかもしれない。

 

精神科ではセカンドオピニオンを聴くためだけだけで初診する人は稀で、来るときは転居などのため、転院目的で初診することが多い。今なお、セカンドオピニオンは精神科では一般的ではない。

 

他科では、例えば乳癌などの診断をされた場合、他の乳癌を専門に診ている医療機関の意見は是非聴きたいところだと思う。その理由は、乳房が残せるかどうか、あるいはその選択の場合、どの程度のリスクがあるかを知りたいと思うのが普通だからである。

 

このようなことを考えていると、やはり精神科は特別な科だと思う。そう思う理由は、紹介状なしでも、生活歴や病歴などをその日に聴取できるからである。

 

上の乳癌の場合、前医のさまざまなレントゲンやCTなどの検査所見が揃っていないと、おそらくセカンドオピニオンも依頼できない。(つまりこっそり行くことは難しい)

 

この差は大きいと思う。

日本、イラクに2―1で勝利 サッカーW杯最終予選

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今日、8時過ぎまで日本vsイラク戦があるのを忘れており、気が付いてテレビをつけたときは、前半の終わりだった。原口選手のゴールで1-0でリードしていた。

 

後半15分、イラクに追いつかれる。イラクのサード・アブドゥルアミール選手のヘディングシュートは頭ひとつ抜け出ており文句なしのゴールだった。イラクの選手は日本選手より大柄で、セットプレーは迫力がある。

 

その後は例によって日本風のバタバタなゲーム運びで、決定力のなさのため、1-1のまま終わってもおかしくなかった。

 

ところが、長い6分のロスタイムの中頃、山口蛍選手が見事な低空ミドルシュートを決めたのである。

 

あのシュートは前に人が多かっただけに、どこかに触れて弾かれても不思議でない弾道だった。それまでどうみても引き分け模様だったのもあり、日本国中が一気に元気になるようなゴールだったと思う。

 

劇的な勝利だったものの、いわゆる塩試合で、この試合を引き分けていたらハリルの解任も現実的だった。

 

ちょうどニコ動の実況を観ていて、もう諦めてるサポも多い中、

 

ジェットスターでオーストラリアまで行って来い!

 

言うコメントには大笑い(11日はアウェーでオーストラリア戦)。ジェットスターはカンタスの関連会社だが、日本国内でも運航している格安航空会社の1つ。ジェットスターはオーストラリアだけに機体は新しく綺麗である。実際には日本代表はJALのビジネスクラスを使うと思う。

 

あまりのテイタラクに呆れて、ジェットスターで十分といったところだろう。

 

そういえばもう10年以上前だが、市内のある開業歯科医のバカ息子が、ビジネスクラスで新婚旅行に行くとごね、父親がそれに激怒し「エコノミーで行きなさい」と言ったらしい。

 

父親から言わせれば、まだ卒業したばかりで碌に収入もないのに、新婚旅行でビジネスクラスなんてけしからんといったところである。

 

その話を嫁さんから聴いた時、僕は、

 

おとうさんはえらいよ。

 

と言った。その話は続きがあり、そのバカ息子は、「ビジネスクラスで行けないなら、新婚旅行に行かない」と言い放ち、旅行を取りやめたと言う。

 

全く、気の毒な話だと思った。(その新婦の方に)。

 

ごね方が幼稚のひとこと。自分の貯金でビジネスクラスで行くのであれば、文句も言わなかっただろう。

 

実際、ビジネスクラスには新婚旅行と思われるかなり若い夫婦がいる。いつもどんな家庭なんだろうと思うが、きっとお金はあるところにはあるのだろう。

 

 

エビリファイは糖尿病に禁忌ではない

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上は、大塚製薬株式会社のエビリファイ1ml包装のパンフレットである。ここに記載されているように、最初に警告として赤文字で糖尿病患者へのリスクが注意喚起されている。

 

この記載の仕方は相当に問題があり、精神科ではない病院の薬剤師さんから、「エビリファイは糖尿病に禁忌ではないですか?」などと質問されることがある。また、近年は添付文書もインターネットで検索できるようになったため、患者さんからも、

 

「先生は、糖尿病に禁忌のエビリファイを処方した」

 

などと勘違いされることがある。僕は別のパターン、

 

「あの医者は糖尿病に禁忌なのも知らないで自分にエビリファイを出した。」

 

と転院した理由に挙げる患者も経験している。全く、その医師にとっても迷惑な話である。

 

よく読むと、警告のすぐ下の禁忌の欄には、糖尿病は記載されていない。

 

これはパンフレットの末尾にある添付文書風の記載だが、ここにも真っ先に糖尿病の警告が挙がっている。

 

定型ないし非定型抗精神病薬で糖尿病に禁忌とされているのは、ジプレキサ(オランザピン)およびセロクエル(クエチアピン)のみで他は禁忌ではない。

 

それどころか精神科医は、糖尿病とわかっている患者には非定型抗精神病薬の中ではロナセン、エビリファイ、ルーランを選択しやすいと思う。

 

その理由は、それ以外の糖尿病に禁忌ではない非定型抗精神病薬、例えばリスパダール、インヴェガ、クロザリル、ロドピンは肥満を生じやすいからである。(シクレストは発売されたばかりなので保留)

 

添付文書の警告は情報の混乱を招いている。

 

以下は、このパンフレットのほかのページ(の一部)。参考にアップしている。

 

 

下は、液剤のデザインなど。

 


どのような経緯で来院したのか?

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患者さんを長く診ていると、「この人はどのような経緯で来院したのだろう」と思うことがある。そう思う期間はさまざまで、10年くらい経った時もあるし、2年未満のこともある。

 

特に入院歴がない人。

 

外来だけだと、長期間になると経緯など全く忘れている。かつては結構憶えていたような気がするが、今は全然である。

 

来院の経緯はカルテを診るとすぐにわかることもあるが、10年くらい経っていると初診当時のカルテはカルテ庫に入れている人もおり、わからないこともある。だから、本人に直接、なぜここに来たのか聴くわけである。

 

われながら、お粗末な話。

 

直接聴いた際に、そんなことも忘れているのかと怒るような人はほぼいないが、もっと些細なことで怒る人がいる。例えばペットの話など。(ペットの種類はあまり重要でないので忘れる)

 

これも患者さんが多すぎるからなんだと思う。最近はレセプトを整理していて、顔が全然思い出せない人が結構いる。特にリエゾンの人。

 

このようにある日、「なぜここに来たんだろう」と思う機会は、「ある種の区切り」だと思うようになった。その患者さんに最も聴きたいことは、

 

ここに来てから良くなっているかどうか?

 

である。病院なので当たり前である。ほとんどの人から良くなっていると言われるが、実際にはどう見ても良くなっていないか、変わらない人もいるのはいる。ごく僅かだが、現在も苦戦中なのである。

 

このような流れで、最近最も驚いた事件。ある患者さんは、うちに転院して薬をジプレキサに変えた。

 

8年経って、なんと20㎏体重減少していたのである。

 

僕は言った。

 

ジプレキサに変更し7~8㎏減量する人は時々いるが、貴方のマイナス20㎏はたぶん新記録だと思う。さすがに、ジプレキサを飲み始めて20㎏減る人は滅多にいない。

 

その人の反応は、

 

えっ、ジプレキサって体重増えるんですか?

 

だったのである。平均的な患者さんは、インターネットの人たちより薬に詳しくない。

 

 

 

自動車の任意保険の話

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自動車保険には自賠責保険と任意保険がある。後者の任意保険は義務ではないが、事故の状況によると自賠責では到底支払えないことがあるため、任意保険に入るのが常識である。

 

これは社会人として当然だと思うが、任意保険の加入率は感覚的にはかなり低い。なんと全国で4分の1は任意保険に入っていないのである。この4分の1の未加入には自動車共済が含まれていないので、これを考慮すると15%ほどの車が加入していない。

 

元々、自動車保険は事故を起こした本人より、被害者(及びその家族)の補償を考慮されているので、15%が加入していないのを国が放置しているのは奇妙なものだ。

 

自分だったら、任意保険が入れない状況になったら車を売り、車に乗らない。

 

ある時、恐ろしい事態になっているのに気付いた。自分が全く同じ車種の同じモデルに乗り換えた際、ディーラーが任意保険の切り替えをしていなかったのである。ディーラーもうっかりしていたと思うが、確認しなかった自分も悪い。

 

これは半年くらい無保険で乗っていたと同じだ。

 

良く考えると、任意保険は車両が変わると保険証券が新しくなり送られてくる。しかし速やかには送られてこないので、それも気付かない原因の1つであった。気付いた後、急いで保険会社に電話で連絡し車検証を見ながら、更新したのである。

 

以前もスキューバダイビングの話で書いたが、基本的にこの世の中には責任感ゼロの人たちが少なからずいるので、「自分の身は自分で守るしかない」と言うスタンスになっている。(参考>天災、事故と生命保険

 

現在の任意保険には対物賠償保険が付いているのが普通だが、1500万円と無制限の2種類がある。これはいずれを選んでも保険料がほとんど変わらないので、無制限にした方が良い。

 

1500万円では支払えない物損事故が起こりうるからである。それらの事故は、特にフェラーリやランボルギーニに衝突しなくても、特別な車両(救急車など)などを含む多重事故で超えることがあると言う。また、猛スピードで事故が起こる高速走路でもありうる話である。

 

なお都道府県により、任意保険の加入率には差があり、平均して都市部(人口密集の県)は比較的高く、過疎県では低くなっている。最も加入率が高い都道府県は大阪府(82.2%、2015年)で、次いで愛知県(81.3%)である。一方、最も低い県は沖縄県(53.3%)である。(この数値には自動車共済を含まない)

 

よく沖縄旅行の記事で記載しているが、沖縄は道路事情が悪いというか、圧倒的に車が多すぎる上、バイクのマナーも悪いため、かなり事故が起こっているのではないかと思う。事故が無保険車だと、被害者にとっても大変なことだ。

 

自分は昔から生命保険についてある考え方をしており、生命保険で莫大なお金が入ってくる運勢がない人が圧倒的に多いため、その結果、配偶者の生命が確保される。その視点で、「生命保険がお守りになる」という保険屋さんの口上はもっともだと思う。

 

歪んだ悪魔的な金運の持ち主は、何度でも奇妙な事故が起こり夫が亡くなる。その度に数千万が入ってくる。これは犯罪ではなく(状況的にそれは考えられない)、その夫人のある種のaccident-prone personalityと思うようになった。これは中核的なものではなく、おそらく派生的というか、特殊なものである。

 

このような発想からすれば、任意保険に入っていない車の方が、むしろ大きな人身事故を起こしてもおかしくないという考え方になる。

 

参考

天災、事故と生命保険

宝くじ

自治医科大学の友人

 

 

 

 

 

ダヤンに似ているネコ

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朝、病院に行く途中、ある小さな交差点で左側からノラネコ?がてくてく歩いてきた。まだ時間に余裕があったので曲がった直後、すぐに車を止めスマホを持ち現場に急行。

 

いなかったら仕方がないと思っていたら、その場所にちょこんと座っていた。僕が近づくと、逃げたりせずじっとこちらを見ている。どうも、この模様のネコはずっと以前から見ているような。

 

しかし、過去ログと同じネコではなく、きっと代替わりしているんだと思う。

 

見事な猫背。

そして綺麗な白のソックス。

 

猫背だけど姿勢が良い。ネコなりに。

 

顔つきはダヤンに似ている。それも大人のダヤン。

 

ダヤンと聴いてすぐにわかる人は、結構ネコ好きというかネコキャラ好きだと思う。だって、キティちゃんやミッフィーほどは有名ではないから。

 

 

横を向いた時の写真。足元をコンパクトにまとめている。(Xperia Z3 Compactで撮影)

ブログの文字の大きさについて

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ブログの文字の大きさについて、先日2つの記事でアンケートを取っている。

 

以前のアメブロのエディタは2倍のサイズで書いており、自分としてはパソコンでもタブレットでも見やすかった。

 

ところが新エディタでは服のサイズのようにXSからXXLまで6サイズに分けられ、今回の文字の大きさはM(標準)である。異様に小さいと思う人もいると思うが、このサイズが標準なのである。これはアメブロをやっている人はすぐにわかるが、そうでない人はわからないと思うので記載している。

 

当初、何度かMで書いたところ自分にとってやはり読み辛いと思ったので、Lサイズに変更した。ところがMとLにはかなり大きさの差があるようで、Lの文章は自分でもかなり違和感を感じた。しかしこのサイズに慣れると、MよりLの方が遥かに読みやすいし美しいと思ったのである。

 

その後、Lサイズの文字について読み辛いという意見が来るようになった。

 

おそらく、ブログの文字のサイズの感じ方は読者の年齢に関係が深いのである。老眼が始まる年齢(42歳頃)を過ぎると、Lサイズの方が良いと言う人が増える。ところが、若い人はMで十分だし、Lサイズに違和感を感じるのであろう。

 

自分としてはLの方が遥かに良い。それは過去ログで、パソコンはXGAがベストだと言っているほどなので当たり前である。

 

普段、自分のノートパソコンは1280×720で表示している。このノートパソコンのデフォルトは、1600×900(推奨)なので、かなりのカスタマイズである。また文字サイズ125%で利用しているため、観るサイトによると、今の状態では正常に表示されないと時々警告が出る。このようにしても、Mサイズは異常に小さいのである。アメブロは可能ならMとLの中間のサイズを採用してほしい。

 

しかし現在、自分のブログはタブレットでみることも多く、タブレットだと簡単に拡大できるため、そこまで文字の大きさが欠点にならない。また読者を考慮すると、このブログは今やパソコンよりスマホあるいはモバイルで観ている読者の方が遥かに多いのである。

 

アンケートを取ると、意外にLサイズの方が良いと言う意見があると思った。しかし多数決だとMサイズの方が多かったため、Mサイズに戻すことにした。これはMサイズの文字の方が、対処しやすい点も考慮している。

 

過去ログのLサイズのブログは今のところそのままにしておくが(Lの大きさがわかるなど参考も含め)、いつか暇な時にMにサイズ変更する予定である。

 

 

アナフラニールの点滴治療のまとめ

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過去ログでアナフラニールの点滴について時々触れているが、細かいバリエーション、特に効き方や改善の様子などはあまり記載していない。今回はアナフラニールの点滴治療についてまとめ記事。(過去ログも含む)

 

1、アナフラニールの点滴は非常に効果が速い。このような経験から、抗うつ剤の効果発現の理論は怪しいものだ(ダウンレギュレーション)。

 

2、有効な人は実施したその日から効果を実感できる。特に不安感の改善を訴える人が多い。

 

3、最初の数日(3日以内)に効果を感じられない人は、続けても効果が思わしくない人の方が多い。遅れて効果が出る人は稀。

 

4、アナフラニールの点滴の効果が出現しやすいのは、おそらく、いきなり門脈を通過しないことと関係がある。

 

5、アナフラニールの点滴を実施する場合、必ず心電図を取り、QTC延長がないかチェックする。

 

6、アナフラニールの点滴より、レクサプロのQTC延長の方が大きかったのには驚いた。この患者さんは、レクサプロは投与が難しいが、アナフラニールの点滴は少量であれば可能で非常に効果的であった。(この人は今も服薬中だが、自覚症状は全快に近い)

 

7、アナフラニールの点滴で、これは使えないと思う人は、酷い尿閉を来す人である。

 

8、アナフラニール点滴は内因性うつ病に限らず、広汎性発達障害など器質性疾患にも有効である。ただし、このような人はQT延長や尿閉などの副作用も出やすい上、けいれんの副作用にも要注意である。(ただし自分は「けいれん」は経験がない。理論的には高いはず)。

 

9、アナフラニール点滴実施を考慮する人は、強力な内服治療(サインバルタなど)で改善が見られないか、例えば投与中にも更に悪化がみられ自殺既遂もありえる患者さんである。

 

10、アナフラニールの点滴は、薬物療法的には最終兵器に近いため、これで効かないか、あるいは副作用で続けられない場合、ECT(電撃療法)も視野に入れる。

 

11、アナフラニール点滴を考慮する人は、レベル的に病状が酷い人が多く、例えば投与前にうつ病性昏迷を呈していた人が急速に改善し始め表情がはっきりしてくる。その結果、発語が可能になり、深刻なうつ病由来の二次妄想も伴うことが明らかになる。このいわゆる無重力状態での自殺既遂は十分に注意したい。家族に強く注意喚起するか入院させる。

 

12、アナフラニールはした直後はあまり効果がわからないと言うが、一晩寝て、翌日になると改善を実感する人もいる。これも典型的な有効なパターンである。

 

13、アナフラニールの点滴による躁転は意外に稀である。これほどまで効く薬が、躁転が起こりにくいのは謎の1つである。個人的経験の範囲では、3環系のうち1型躁転を来しやすい薬はアモキサンである。1型躁転の既往がある人はアナフラニールの点滴はともかく、アモキサンは使うべきではない。

 

14、アナフラニールの点滴は忍容性の予測がつきにくいため、当初から1アンプル実施すべきではない。最初、多く使ったために継続できないリスクを避ける。普通の成人なら2分の1アンプル、老人なら4分の1か3分の1アンプルから開始が望ましい。

 

15、アナフラニールの点滴は器質性幻覚を遮断することがある。

 

16、統合失調症と誤診された広汎性発達障害だった人が、アナフラニールで劇的に改善した場合、20年くらい無職だった人が就労レベルに達することがある。

 

17、アナフラニールは現況、実施してくれる病院が少ない。これはいろいろな理由があり、まず外来で心電図や点滴を実施できるスペースがないクリニックが多いことや(スタッフも必要)、こういう手間のかかる治療は今時、流行らないこともある。(針刺し事故のリスクも含む。ほか医療廃棄物の問題もある。つまり余計な経費がかかる)

 

18、精神科医でもアナフラニールの点滴について、効かないと思っている人が少なからずいる。これは経験不足もあると思うが、ほかの要因のあると思われる。これも実施されない要因の1つ。

 

19、アナフラニールの点滴まで踏み込み、しかも副作用が少なく治療が続くケースに限ると、アナフラニールが有効な人は90%程度はいる印象である。

 

20、アナフラニールの実施中、むかつきなどの軽微な副作用は、途中中断も考慮する。しかし、このケースでは次第に慣れる人の方が多く、継続できるように用量や点滴を落とすスピードも調整する。悪心が出るから効かないとはならない。

 

21、アナフラニールとサインバルタは薬物プロフィールが似ているという話である。しかし、この2つの効き方が似ていると言う患者さんの話は聴かない。

 

22、アナフラニールやサインバルタ、ECTまで実施して、なお効果が出ない人もいるが、これらの人は驚くような薬が有効なことがある。したがって絶望するほどではない。新規抗てんかん薬や、ストラテラなどが劇的に効くことがあるからである。なにはともあれ、試行錯誤は必要。

 

23、アナフラニール点滴は外来の抗うつ剤2剤制限にかからないため、例えば、サインバルタ+リフレックスとか、サインバルタ+レスリンなど既に2剤投与中の人も実施可能である。つまり、アナフラニールを外来で点滴投与する際、それまで服薬中の抗うつ剤の中止は必要がない。

 

以上、とりとめもなくというか徒然なるままに挙げてみたので、重要性の順序は前後している。

 

参考

アナフラニール点滴マニュアル

躁状態なのに小声で話す

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ある時期、15年間ほど高齢の躁うつ病の患者さんを診ていた。彼女はうつ状態はないわけではないが、期間が短くその規模も大きくない。一方、躁状態はより明確で期間も相対的に長かった。その点ではあまりないタイプと言えた。

 

ある時、躁状態なのにいつも小声でしか話さないことに気付いた。しかし、その奇妙さに看護者は誰も注意していなかった。実際、看護記録にも記載されていない。

 

ある日、病棟婦長と話していた際に、「あの人は躁状態なのに、なぜか小声でしか話さないですね」と、このことについて意見を聴いた。彼女は「言われてみればそうですね」と言った感じだったが、「人に聴かれたくないからではないか?」と。確かに彼女の話はできれば聴かれたくない話の方が多かった。しかしそうでもない話もあるのである。

 

あれほど脱抑制しているのに、その配慮ができるというアンバランス。

 

躁状態の規模が小さいからという判断も可能だが、いかにもとって付けたような根拠だと思う。彼女の話は多弁で抑制を欠くが、奇妙な妄想的内容は診られなかった。また極端に食欲が亢進あるいは減退しているとか、そのような変化もないのである。

 

ある時、診察中、

 

復活するのは私とキリストだけですよ。

 

と元気そうに言った。ただし彼女はクリスチャンではない。自分はキリスト教ではないのでよくわからないが、自分とキリストを並列するのは、クリスチャンだと畏れ多くて言いにくいのではないかと思う。この時、更にバランスの悪さを感じたのである。

 

病棟婦長に、「どうも今回の躁状態はいつもとは違うようですね。」と言った話をしていた。ところが、ある日、躁うつ混合とはまた異なる流れの数日に1日だけ元気でない日が出現するようになった。これもまた奇妙な病態である。元気ではない日は食欲もない。しかし翌日には結構復活しているのである。

 

内科に受診させたところ、あまり異常はないようであるが、念のため大きな病院に予約しておきましょうと言う話になった。ところが、予約は2か月先くらいなのである。病状的に2か月も待てないと思ったので、精神科を併設する総合病院の内科に受診させることにした。受診する日は、躁状態どころではない元気のなさであった。

 

精査したところ、彼女には定期健診では発見できないタイプの癌だったのである。また、年齢的なものを考慮すると手術は困難な状況であった。その後、ホスピス系の病院に転院となった。

 

このような病状の流れを見ると、本来の内因性疾患にそうではないタイプの症状性の病態が混入していたという判断も可能である。

 

最後のエピソードに限れば、本人の内因性疾患そのものが、特別に選択した病態だったのかもしれない。

 

参考

剖検

躁状態とパンコースト腫瘍

ゴールドコーストのOrchid Aveを歩いてみた

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上は、ゴールドコーストのOrchid Aveを歩きながら撮影した映像。現地の人もいるが、観光客と思われる中国人もかなり多い。

 

Orchid Aveは、ちょうど大橋巨泉氏のOKギフトショップがある通りである。以前はなかったが、近年、Hilton Surfers Paradise Hotel & Residenceという高層ホテルも完成している。

 

最初の場面、すぐ右に見えるのは不動産屋で、とてつもなく高額の物件が掲載されている。中国人が購入目的で店内で話していることがあるので、日本だけでなく不動産を買い漁っているのであろう。中国人のお金持ちは桁が違うと言う話である。

 

映像にはセブンイレブンも見えるが、サーファーズパラダイスだけに、サーフボードを売っていたりと、雰囲気は日本とちょっと違う。通りに南国系の植樹がされているが、この辺りにもロリキートが多い。

 

 

こんな風に。

この金属の輪は、動物が登らないようにしているのでは?と思ったが、いかなる動物を想定しているのかわからなかった。

 

 

蜂蜜を始めとしてさまざまなサプリメントを売っているお店。ちょうどOKギフトショップの道を挟んで正面にある。

 

この辺りは路地がたくさんあり、すぐ隣の通りにショートカットして行ける。色々なお店があるが、これはちょっと・・と思ったお店。

 

 

日本料理のお店だが、オーナーは日本人じゃないだろ!と言いたい。だいたい日本人は、有頂天という店名は、やりすぎになりかねないので選ばないと思う。微妙に字を間違っているし。

 

Orchid Aveは通りに面しているお店や植物、人、動物に至るまで、異国情緒がある。いつか、コウモリを撮影したのもこのOrchid Aveである。

 

参考

オーストラリアのオオコウモリ


Acanthosis nigricans(黒色表皮症)

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内臓疾患は時に皮膚に兆候が出現することが知られている。最初にAcanthosis nigricans(黒色表皮症)に遭遇したのは、泌尿器科のポリクリ中であった。

 

その患者さんは異常なほど皮膚が黒かった。ポリクリの指導をしていた教官によれば、このAcanthosis nigricansを呈する人は特に消化管の癌や悪性腫瘍を併発していることが稀ならずあり、精査が必要という。この患者さんは消化管ではなく腎臓癌だったため、泌尿器科で治療しているという話であった。

 

後年、大規模な精神科病院に行くと、1名くらいこのように異様なほど皮膚の黒い患者さんに遭遇する。そのような際に、病棟の婦長さんやあるいは看護長さんにこの人はいつ頃からこのような皮膚になったのか聴くようにしている。あの黒さは単に日焼けとか向精神薬の影響では到底生じないものである。向精神薬の中にはテグレトールやコントミンなど日焼けしやすくなる薬物があり、光線過敏型薬疹などと呼ばれている。これらは、皮膚の露出部位しか見られない。

 

Acanthosis nigricans(アカントーシス・ニグリカンスと読む)を呈している患者さんは、口内などの色素沈着なども調べてみる。口内に生じていたら、日焼けなどでは説明がつかない。悪性腫瘍などとの関係だが、メラニン産生細胞を刺激するためなどの意見があるが、その機序が本当かどうかは知らない。

 

しかし精神科では、消化管に癌が多いなどと言われても、それ以外の兆候がない場合、調べろと言われてもあまりにも漠然としている。一般に、人間ドックなどは別だが、何らかの兆候がないケースでは、診療報酬的に胃カメラなどはできないのではないかと思う。

 

今までのAcanthosis nigricansを呈した患者さんは、とりあえず皮膚科に紹介し、どのように判断されるか聴くようにしている。何らかの懸念があれば皮膚科医が考えてくれると思うからである。同じ内科や外科に精査を相談するにしても、精神科医がするのと皮膚科医がするのでは対応が全く違う。

 

実際に癌が見つかったケースでは、自分の患者さんでは消化管ではなく、むしろ甲状腺癌などの消化管ではない癌の方が多かった。しかし、100%、何らかの癌が見つかったのである。実際、かつてポリクリ中に聴いた「消化管の悪性腫瘍が多い」という話だが、特異的に消化管に生じるものではないのかもしれない。

 

後年思うようになったが、精神科医は表情の変化などを仔細に診る科なので、皮膚や頭髪なども含め観察眼が一般人と段違いである。それは他の科の医師や、看護師、心理療法士などをも遥かに超える。これは過去ログにも同じような話をアップしている。

 

参考

統合失調症と加齢臭

若手精神科医と病棟看護師の話

表情が良くなったことが全然わからなかったという話

統合失調症の人の癌の罹患率

統合失調症と痛みの感覚

医学部の雰囲気のことなど

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医学部に入学すると、成績の良し悪しがさほど恥にならなくなる。その成績の考え方というか評価が高校時代とは全く違うことに驚いた。また、教養課程で留年するかどうかは、入学時の成績とあまり関係がないという話だった。

 

大学にもなぜかクラスがあり、2組に分かれており一応コンパなどもクラス単位でやっていた。それと別に語学のクラスがあり、これは形だけ3クラスに分かれていたが、たまにクラス単位で忘年会などをやっていたように思うがあまり記憶にない。また、実習やポリクリの5~6人のグループもあり、よく解剖学実習やポリクリの区切りに飲み会に行ったものだ。この辺りは競争意識が乏しく、むしろ戦友みたいなものだった。もう少し成績が評価される環境であれば、きっともっと教養部時代や専門の基礎科目の授業に出ていたと思う。

 

大学の専門課程の成績発表は点数ではなく、「合格」と「不合格」の2つしか評価がないのである。つまり全か無かで、100%近い成績だったとしてもそれが見えないようになっていた。

 

ある親しい友人は担任の教官に何点差で合格(入学試験)したのか聴きに言った。彼の話では7点差で合格していたが、もう1人の高校の同級生は30点以上合格ラインから離れていたという話だった。

 

もう1名、別の親しかった友人がいた。彼はなんと1位で合格しており、後に発表された合格最低点と最高点からすると200点差以上の圧勝だったはずである。しかし、彼は2浪だったし、話をしていてとりわけ頭が切れると言う感じでもなかった。

 

その彼が教養部時代に留年の危機に陥り、ある日の年末、彼を含む数人の友人で忘年会をした際、「もしこのまま留年してしまうと、トップ入学で教養部留年という記録が出るかもしれない」という話で大いに盛り上がった。特に例のロックに詳しい友人が面白おかしく冷かしていたが、実際に僕とそのトップ入学の友人はギリギリ助かり、冷かしていた本人のみ留年を決めた。

 

担任に点差を聴きに行くのは、現役入学の学生くらいしかしないようなことで、今さら聴きに行くのは意味がなさすぎる。僕は万一聴きに行って1点差とか言われると、一生忘れられないので聴きに行かなかった。実際、聴きに行ったのはほんの数人だったと思う。

 

最初の聴きに行った友人だがその後、楽に進級し現役入学ストレートで卒業し、今や医師としてのパフォーマンスは学年で3位以内に入るようである(推測で言っているのは、大学の基礎の教授が言っていたのをそのまま言っているため)。

 

ところが、彼の同じ高校の大学入試の成績が若干良かった友人は教養課程や専門課程で留年を重ねその後、国試に合格したので、医師になれなかったわけではないが、大学時代の成績は悪かったことになる。僕の同級生で現役で入学したのに、そのまま教養部を抜けられず放校になった人もいる。

 

結局、その人の真の能力は18歳や20歳ではわからないんだと思う。

 

特に医学部は卒業して医師になってからの考え方というか仕事への取り組み方などが大きく影響するよう思う。その点で、特に臨床では、どの大学を卒業したのかなども大きな問題にならない。

 

大学時代、成績の悪さが恥にならない雰囲気は、ある意味、理にかなっているように今では思える。

整形外科医のリウマチによる精神症状を捉える感覚の欠如について

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過去ログでリウマチの人は統合失調症にならないという話が出てくる。この理由は、はっきりしないが、既にリウマチにより脳が支配されているので、統合失調症にならないのではないかと記載している。

 

過去ログからそのまま抜粋(リウマチの人は統合失調症になりにくいという謎

 

これはあくまで私見だが、リウマチは若い頃から何らかの免疫異常が既に発生しているから、統合失調症にならないような気がする。この考え方もワケがわからないと思うが、検査値の異常や関節症状が全然出ていないだけで、サイレントな状態でリウマチの萌芽のようなものが若い頃からあると言う意味。このリウマチの萌芽が脳をあらかじめ支配しているので、統合失調症に移行が難しくなっているのであろう。
 

整形外科疾患はリウマチだけではなく、胸郭出口症候群も精神科に関係が深いと過去ログに記載している。特にリウマチは免疫疾患でもあり、さまざまな精神症状が出現しやすく、かなりバリエーションがあるのである。

 

その中で知られているものは、リウマチ性格や慢性疲労症候群、疼痛性障害などがあるが、特に疼痛性障害の中核群ではないタイプは、整形外科医でもリウマチから派生したものと気づかないことがある。特に一瞬で広がるタイプの全身性の疼痛エピソードや亜昏迷などである。特に亜昏迷は、リウマチに由来したものと気付かず、ありとあらゆる検査をしている。

 

特に高齢者の場合、MRIなどを撮ると陳旧性の小さな脳梗塞などが診られることも稀ではなく、これが原因ではないかと錯覚する。

 

特にCPKが1000近くあると、全く別な疾患ではないかと思うようであるが、精神科的には、単に非定型病像(このケースでは昏迷)が出現したことを示すものでしかない。これもリウマチからくる症状性の病態である。

 

呼名反応がないので大変な病態だと思う医師もいるようだが、翌日には元気に喋っていることもあるほどである。(精神科の教科書的には昏迷には意識障害は存在しない)

 

なぜこのような経過になるかといえば、非定型病像を通過すれば、精神症状が著しく改善することが多いからである。

 

紹介され補液をするだけで速やかに回復することが多い。この病態はそのようになっている。

 

整形外科医以外の医師なら、徹底的に精査をするのもわからなくはない。

 

整形外科医であれば、脳内に決定的な異常所見がないなら、これはリウマチからくる精神症状ではないか?くらいは気づいてほしい。

 

そのような厚みのある診療ができるようになれば、整形外科疾患と精神症状が立体的に捉えられると思う。

 

これはリウマチだけでなく、痛風も同様である。これまで、どうみても痛風ではないのに、整形外科医から痛風と診断されていた疼痛性障害の人を3人以上診ている。

 

疼痛と検査所見に惑わされているわけだが、仔細に観察すると、奇妙な点に気付くはずである。

 

参考

リウマチの人は統合失調症になりにくいという謎

悪性症候群の謎

原因不明の代謝障害

整形外科医とむちうちの話

 

 

ブログのプロフィールとサイドバーの更新

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このブログは、徐々にプロフィールや注意点の内容が実際に沿わなくなってきたのもあり、今回、はじめてプロフィール、サイドバー、メッセージボードを更新しました。

 

重要な点を挙げると、

 

1、コメントはパソコンだけでなくモバイルでも付けられるようになったが、承認制であること。

 

2、実際のところ、自分ではほとんどコメントは削除せずそのままアップしている。(コメント拒否処分にした人は除くが、極めて少数)

 

3、アメブロメールは返信まで14日かまずくすると20日くらいかかる。ほぼ返信しているはずで、返信が来ない場合、迷惑メッセージに入っていることがあるのでチェックすること。

 

4、アメブロにメールアドレスを貼ることは禁止されています。

 

5、詳細はコアラの写真のすぐ下のプロフィールをクリックしてください。
 

 

 

精神指定医資格89人取り消し 厚労省処分(2016/10/26)

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先日、厚労省から精神指定医資格89人取り消し処分についての発表があった。89人の内訳は2009年1月~15年7月に不正に申請した指定医49人と、指導に携わった医師40人。これとは別に申請中の5人に不正が見つかり、4人は申請を却下し、1人は自ら取り下げた。

 

今回、不正のあった医療施設や実名、年齢まで発表されており、患者さんの中には、これらに処分に関して、たまたま通院している病院だった等で不安をおぼえる人もいるかもしれないので、これについて記事にすることにした。近年は長文は避けるようにしているが、内容的に前後半に分けない方が良いと思ったので、今日の記事は長くなる。

 

基本的にこのブログでは、処分された医師を擁護するなどのスタンスはない。ひょっとしたら擁護していると誤解されかねないと思ったので、最初に書いておく。今回、この制度の歴史的経緯や、この資格がどのように運用されて来たかなどにも触れることもあり、若い精神科医や他科の医師にも参考になるのではないかと思う。

 

元々、このブログでは時事に関するものは、サッカーのワールドカップ予選など精神科と無関係なものしか記事にしない方針でやっている。その理由は最初は詳細が十分に分かっていないことも多く、飛びついてコメントした場合、時間が経って奇妙な記事になりかねないからである。事件が起こった当初は、全貌が見えておらず、真相は全く違うところにあったなんて良くある話である。そのようなことから、僕はツィッターはしない。

 

本来、精神保健指定医なる資格は、患者さんの人権の視点に立つ国家資格であり、現在、各科で行われている専門医制度とは異なる。したがって、精神保健指定医は、取得当初は経験年数も少なく経験症例数もかなり少ないのが普通である。その点で、その精神科医の治療の技量を証明するものではない。

 

実際、ケースレポートは、個々の症例の治療内容も記載するものの、いわゆる非任意入院(医療保護入院、措置入院)の際の法律の運用判断のあり方が重視されている。

 

過去ログに精神保健指定医が始まった黎明期の話を記載している。精神科医は書類に忙殺される(前半) から抜粋

 

僕が精神科医になった時、まだ精神保健指定医なる資格は存在せず、その後、必要ということになり、厚生省(現;厚生労働省)がその国家資格を履歴書とレポート提出により認めることになった。当時、精神科病院でいろいろな事件が起こっていたこともあり、精神障害者の人権を守る視点から制定された面が大きい。(一般に法律に関係が深い科は精神科と産婦人科である)。精神保健指定医の資格ができる以前に精神科医になり、しかもある程度の年数を経た人は国はその資格をタダでくれてやった。僕より数年上のドクターは何も努力もせず指定医を取得している。当時、長く精神科に勤めていた内科などの他科のドクターもちゃっかり指定医を貰っている。

 

まあ、高齢のドクターもいるわけで、今さら書きようがないレポートを提出せよと言っても無理な話ではあった。そういう経緯もあり、数年上の先輩がちょっと羨ましかった。医学部を卒業した時点で、そういうものから開放されたと思っていたからだ。ちょっと面白い話があり、当時規定の年数を経ていたような人でも大学院に行っていた人はタダでは指定医をもらえなかった。これは大学院はあくまで学生だからであろう。大学院でも海外に行っているならともかく、国内にいれば普通、臨床もしていることが多い。妙な話ではあった。だいたいタダでくれてやった人が大勢いるのに、ここで突如厳しくするのはナンダカナ~感は抱かざるを得なかった。

 

精神保健指定医は試験はないので取得しやすいように思うだろうが、そうでもない。現在の詳細は知らないが、レポートには「児童思春期」と「措置入院」の症例が含まれているからだ。措置なんて、県によってはろくに件数がないところもある。措置入院で処遇するかどうかは、ローカルな面が大きく、人口比の指標で県により措置数にかなり差がある。

 

例えば精神科救急に自殺未遂で救急車で運ばれたような患者さんがすべて措置入院になるかといえば、なった方が奇跡のような確率と思われる。だいたい彼らをすべて措置入院にしていたら、自殺未遂は夜間にも多いので、寝ていたのに駆けつける県庁の人が倒れてしまうであろう。措置鑑定をする精神科医も大変である。

 

結局、自殺未遂の人は入院の必要性がある場合、医療保護入院か任意入院、あるいは一般内科の普通の入院になることが多い。これが現実に即した対応なのである。これを見ても、「自傷他害」という所見は柔軟に解釈されていることがわかる。この柔軟さに地域差があるので、県によってかなり措置件数が異なるのであろう。

 

他害行為があれば必ず措置になるかといえば、そうとも言えない。家で暴れて、母親に怪我をさせたケースでは措置入院になることもあるが、医療保護入院か任意入院になることもある。家族は他人ではないからである。普通、措置入院になるのは由々しき事態である。これは偏見で言っているのではなく、家族の意見も無関係の強制的入院になるのはそうそうあるものではないという視点で言っている。(家族の退院希望が受け付けられないという意味)

実際、精神保健指定医の症例ほしさに、普通なら措置入院にするほどではないのにレポートのために措置入院の処遇をしたため、家族とトラブルになり訴訟にまで発展したこともあったらしい。

 

もう少し曖昧な他害行為、例えば、店先で空きビンを叩き割りまくったなどでは、措置入院になることもあれば、医療保護入院か任意入院になることもある。これはやはり他害の程度や被害者の有無にもよる。手続きの煩雑さを避けるのもあるのかもしれない。この辺りの感覚が県によりたぶん異なるのだろう。軽微な他害行為でも、本人の境遇や医療的な面で、むしろ措置入院にした方が良いケースもある。それは浮浪者同然の人で、医療費が支払えそうにない人たちである。生活保護にすれば良いのでは?と思うかもしれないが、普通、住所のない人は生活保護は受給できない。

 

民間病院も、今は公的病院もそうだが、家もなく、健康保険も国民保険もなく、現金も皆無の人を入院させても非常に困る。こういうケースでは他害行為があるのなら措置入院にするのが自然だ。公的に医療費が支払われるからである。厳密には、措置入院は須らく無料ではない。お金がある人には医療費を支払ってもらうことになっているらしい(僕はそのケースは1名しか経験がないが・・)

 

もう少し重大な犯罪、例えば殺人や放火などでは、かつては措置入院になっていたが、今は医療観察法の処遇になる。もちろん今でも最初、いったん措置入院になることもある。現在、医療保護入院と措置入院の書類は新規は当然として、定期的に更新書類を都道府県に提出することになっている。

 

以上、抜粋

 

精神保健指定医制度が始まる以前、自傷他害の可能性がある精神疾患者の措置入院の判定は厚生大臣に指定された精神衛生鑑定医が行っていた。ただし、鑑定医は措置入院の判定以外には係らず、現在より鑑定できる精神科医の実数はずっと少なかったと考えられる。

 

現在、医療保護入院と呼ばれる非任意入院は、「同意入院」と言われていた。誰の同意かというと、たぶん家族か市長だと思うが、運用上、主治医の意見が非常に重視されていたので、これはまずいのではないかと言う話になったのである。なぜなら、かなり若い経験の少ない医師でも自由に人権の制限に関わることが可能だったからである。

 

この精神保健指定医は、上の抜粋に書いた通り、うんざりするようなものであった。レポートだけに一朝一夕には取得できないからである。

 

今回の処分が厳しいものになった理由は、本来、厳格に法律に沿うような視点で制度を運用する当事者が法律違反をしていたものだからである。

 

余談だが、この制度の導入の際、精神病院協会は反対したらしい。ところが、当時の厚生省と精神病院協会との間で密約があり、「精神保健指定医」は法律的視点に立つものなので医師の技量には関係がないことから、導入後、「診療報酬に組み入れない」という話だったと言う。(当時、携わった先輩医師の話)。

 

ところが何年も経ち、この密約を反故にされ、診療報酬に組み入れられるようになった。ここが今回の事件の重大なポイントだと思われる。

 

その理由は、個々の病院は精神保健指定医数は診療報酬に影響を及ぼし、ひいては病院の収入に大きく関わるようになったのである。実際のところ精神科病院は、精神科の医師が精神保健指定医かどうかでかなり給与の差をつけている。

 

つまり精神科病院では、精神保健指定医でないと、法律的にも医療保護入院もさせられないため実務ができないだけでなく、一人前の精神科医にもみなされない。一方、無床の精神科クリニックの場合、多少は診療報酬に影響するが、入院させる場面がないのでやっていけないほどではない。それでも10年以上前より、精神保健指定医かどうかが影響するように診療報酬が改変されている。それは、精神科のトレーニングを受けていないクリニックが滅茶苦茶なことをやっていたことも理由の1つだと思う。

 

また、個々の精神科病院は都道府県にもよるが、「棲み分け」のような状況にあることも関係している。一般に、児童思春期症例は、大学病院でも比較的簡単に経験できる。しかしかなり児童思春期症例を経験したとしても、全ての児童思春期症例が医療保護入院になるわけではないし、症例の記載として相応しくないものも少なからずある。つまり、レポートにならない症例も多く存在する。これはそれでも時間が解決してくれるものである。

 

一方、措置の症例は大学では滅多に経験できない。かつては要件が厳しく、措置入院患者が癌などの手術のため、大学病院に転院した時期だけ診ただけでは症例に値しなかったからである。措置患者を受け入れる精神病院は都道府県により数病院に限られている地域と、比較的広く受けている地域がある。

 

措置入院は覚せい剤など薬物(及び暴力団関係者)など、ここは刑務所か?と思えるような精神科病院に集約されていることがある。ここでは措置入院の症例はすぐに集まると思うが、このような病院に勤めるハードルは特に女性医師には高い。

 

当初、精神指定医資格89人取り消し処分の中に女医さんが比較的多い印象があり、きっとお嬢様精神科医は到底、そのような病院には勤めたがらないので、そのような結果になったのかも?と一瞬思ったが、ここ5年間の処分なので、その視点では医学部在籍の女子学生は昔より多くなっており当然かもしれないと思うようになった。

 

ここは刑務所か?と思うような精神科病院を否定しているのではなく、そのような棲み分けも精神科では必要なのである。総合病院の精神科に勤めていた頃、原則、覚せい剤など薬物関係の入院の必要性のある患者は初診で断り、それらの病院に紹介していた。その理由は、入れ墨をしている入院患者が多数いるような療養環境では、一般のサラリーマンの人を入院させにくい上、長期入院の統合失調症の患者も恐怖感から病状が悪化するからである。(例えば入れ墨を恐れて入浴を嫌がるようになる)。

 

また、今回5年以内に精神保健指定医を取得した医師のみ処分されたが、これはおそらく、カルテの保存義務が5年になっていることと関係がある。厚労省は、レポートをデータベース化し、カルテとの照合まで実施しているのである。また、本人への事情聴取(申し開きの機会を与えた)も実施している。5年を超えて調査をした場合、照合しようにもカルテが存在しない精神保健指定医もいるはずで、彼らが免罪されるとしたら極めて不公平である。

 

上の記載の先輩医師からの話で、精神保健指定医は、厚生省と精神病院協会との間で診療報酬に反映させないという密約があり、その後厚生省がそれを反故にしたと記載しているが、後年、それは実は間違いではないかと思うようになった。

 

それは療養病棟が誕生した経緯である。療養病棟は出来高病棟に比べ1人当たりの療養スペースがかなり広くなければならない。本来、療養病棟には入院患者さんの人権を考慮し少しでも療養環境を改善しようと言う意図もあったと思われる。実際、大して広くない畳部屋に6人入院していることなどもザラにあったからである。

 

このような経緯で精神科病院はスペースが広い療養病棟を建設するようになった。療養病棟にはまずコストがかかったのである。黎明期の療養病棟は、いわゆる社会的入院(グループホームなどに入れそうな自立度が高い患者)で溢れていた。現在は社会環境の変化から介護の必要性がある高齢者が増えてきたので、当時からかなり変容したと言える。自立度の高い患者ばかりの病棟はスタッフの数の必要性も低く、看護者のレベルもさほど高くなくてもやっていける。したがって、今もそうだが看護基準的な制約が緩和されているのである。そのようなことから、マルメ(いくら薬を使っても定額)病棟であることもあり、収益率が高い病棟であった。

 

この療養病棟は広いスペースで療養環境も良いことが普通でありコストもかかっていることから、比較的高い診療報酬が設定された。そこで、比較的高い診療報酬の医療的根拠として、おそらくあまり関係がない精神保健指定医の常駐の規定が導入されたのであろう。これは、むしろ精神病院協会から厚生省への提案だったかもしれない。その点で厚生省が反故にしたとは言えない可能性がある。

 

注意点として、精神保健指定医を常駐させる規定があると、むやみに療養病棟を増やせない抑制効果がある。十分な数の精神保健指定医がいないからである。精神保健指定医をリンクさせることは、おそらく当時の厚生省にとっても都合の良い話だったと思われる。(注:ほんの数年前、療養病棟について精神保健指定医の要件が外されている。これはこれで重大なことで、今後、療養病棟の診療報酬の減額に手がつく懸念が増している。)

 

そのようなことから、精神保健指定医確保は大きく収益に関係し、彼らの報酬に大きく関わってくるようになったのである。実際、僕の病院では、一時、精神保健指定医が不足し、療養病棟を返上したことがあるが、その際、出来高病棟に移行する際に看護基準を高めなければならず、正看護師を確保することにも苦労した。また当然だが、病院の収益も減ったのである(指定医の給与の必要なくなる以上に、収入の減少及び正看護師の給与の増加が大きい)。

 

精神保健指定医は、今では急性期病棟などにも診療報酬に規定が入っており、まず安定して精神保健指定医が確保できないと、高い診療報酬を維持できないようになっている。資格の価値が高いのは当たり前である。

 

また、近年は精神科病院経営者の2世ないし3世の世代に入っており、一刻も早く、精神保健指定医になりたいというニーズも大きい。その理由は、直接、診療報酬や経営の安定に直結するからである。

 

うちの医局の場合、彼ら、つまり2世の世代は、県外など遠方の関連病院に行きたがらなかった。特に女医さんはそうである。その理由は、遠方に行ってしまうと、自分の父親の病院のお手伝いができないからである。

 

民間の精神科病院は基本的に世襲制であり、これは一般の中小企業と何も変わらない。その点で、自分の子供たちが早いうちから実家の病院に勤めることは、報酬を支払う点で、早くから相続が始まっていると言える。子供が精神科医になるとならないとでは大違いなのである。それでもなお、精神科病院は非常に広い敷地、建物があるので相続は難事業である。精神科病院は一部を切り売りできないうえ、株式会社ではないので一般の企業のように子会社や株式を売却して支払うことも難しい。

 

そのようなことから、経営者はできるだけ多くの子供に精神科医になってほしいと思うものだ。他科の医師は親の世代と同じ専攻しないこともよくあるが、精神病院を持つ精神科医のご子息は精神科を専攻する人がほとんどである。たまに計画的に1名だけ内科を専攻することもあるが、これは内科医が1名いるとそれはそれで便利だからであろう。その点でも世襲という言葉は合っている。

 

今回の厚労省の処分にあたり、色々なことを徒然なるままに記載してきたが、処分された当事者は、重大な不正があったとはいえ、インターネット上に名前がずっと残ってしまうのは気の毒だと思った。ここが昭和の時代と大きく異なる点である。

 

最近の裁判で、

 

逮捕歴のグーグル検索削除認めず=詐欺で有罪の経営者敗訴-東京地裁

 

というものがあった。ある経営者はインターネット検索で10年以上前の逮捕歴を表示されるのは人格権の侵害だとして、米グーグルに検索結果の削除を求めたが、敗訴したのである。

 

インターネットの時代になり、さまざまな事件や芸能人の不祥事まで、リンチ的な扱われ方をすることが多くなった。これは当事者にとって極めて精神衛生に悪いことである。実際、今回の調査で、死亡者2名というものも気になった。というのは、ここ5年以内なので指導の立場の人以外、高齢者はまずいないと思うからである。

 

昨年の聖マリアンナ医科大学病院での不正申請発覚の際も、処分者全員の名簿がうちの病院にまで送られてきたが、就労履歴を調査するためだったようである。聖マリアンナ医科大学病院まで、ちょっと考えられない距離であり、こんなところまで名前が伝えられるとは、彼らも大変だろうと思った。

 

社会がインターネットの時代に変わり、従来に比べ無形のペナルティが大きくなっていると思う。これは昭和の時代と決定的に異なることで、今回の当事者だけでなく、あらゆる人が精神を病む環境に変化している。

 

これはいわば、旧ソ連時代の東欧諸国のような密告社会のごとき窮屈さであり、この辺りの環境を少し変えていくことも必要な時代になりつつあると思ったのである。

 

 

 

 

 

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