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新型コロナ後遺症と年齢について

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新型コロナ感染後の後遺症の治療機会が最近多いが、その疾患像の個人的感想について。今回は、特に年齢との関係について紹介したい。

 

基本、新型コロナ感染症で精神科に来るような人は、息切れなどの呼吸器系症状がほとんどなく精神面の愁訴が多い。従って向精神薬で治療する流れになる。もし精神科に受診して、向精神薬治療を断るような人がいたとしたら、最初から治療を断ると思う。

 

新型コロナ感染後の後遺症は、おそらく非常に治癒率が高い。若い人であればほとんど痕跡なく治癒する人がほとんど全てで、それもたいてい2週間以内に良くなることが多い。初診で2週間分処方したら、2回目受診で既に症状がほぼ消退している。

 

僕の場合、リエゾンなどでも高齢者の新型コロナ感染症後遺症の治療をしているが、若い人と症状が異なる。また、合併症がある高齢者でも新型コロナに罹患したとしても、亡くなることはかなり稀な印象である。これは高齢者のワクチン接種率が高いことも関係していると思われる。

 

高齢者の新型コロナ治癒後の精神症状の乱れ(興奮、拒絶、暴力、食思不振など)は、一般的な感染症後の精神症状と差がない。だから、ほとんど薬物治療の流れも同じになる。

 

若い人は、うつ状態と言えばそうなるかもしれないが、症状性の病態っぽいのが特徴だと思う。例えば線維筋痛症的な病態。全身倦怠感、疲労感などである。あまり動けないので仕事にも行けないと言った感じ。

 

また、筋肉がピクピクするとか、レストレスレッグ症候群類似の症状を伴う人もいる。レストレスレッグ症候群と少し異なるのは、下肢の症状に限らないことである。

 

また、このような病態を診ていると、新型コロナ後遺症は人を選んでいるような気が非常にする。(つまり後遺症が出やすい人とそうでない人がいる)

 

この記事の最初のあたりで2週間以内に改善する確率が高いと記載したが、これは一般的なSSRIの効果発現までの時間を考慮すると間に合わない。SSRIは無駄とまで言わないが、SSRIを使わなくても良くなると思う。(使うべきではないとは言わない。例えば食欲不振がある人はSSRIは使い辛い)

 

今回、個人的に新型コロナ後遺症の治療する機会を持ち、レストレスレッグ症候群と慢性疲労症候群の理解が深まった。今日の記事は各論的なものなので詳細には触れないが、いつか機会があったら紹介したいと思う。

 

たまに高齢者なのに1回もワクチンをしておらず、新型コロナに罹患して後遺症を呈する人もいる。しかも家族全員がワクチンをしていないのである。

 

これは家族全体の自己責任も良いところと思うが、治療依頼されて断る理由もないし、治療そのものが自分の大きな興味の対象なのでもちろん他の人と同じように治療を行う。(医師は普通はそうだと思う)

 

この高齢者はすっかり感染症前に戻ったが、だからと言って「やはりワクチンは不要だった」ということにならない。

 

ワクチン接種することにより、明らかに重篤になる確率が下がることがわかっているからである。(エビデンス)

 

 


向精神薬の安定供給が難しい状況が今後数年続きそうなこと

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過去ログでは、ジェネリックの向精神薬の供給が困難になり、今は先発品も不足していることを記載している。

 

 

不足している向精神薬は納入業者と連絡を取り合ってなんとかやっているのが現状である。薬剤師と問屋の人的なネットワークは非常に重要で、うちの病院はそのために真に枯渇しないところがかなりある。(頑張って融通してもらう)

 

困るのは安定供給が難しい点。突然、1箱入ってきて、次はいつかわからないなどである。

 

最近、驚いたのは、院内薬局でリスペリドンが不足し始めたこと。ジェネリックの1㎎、2㎎錠が全くなく、先発品のリスパダールに変更せざるを得なかった。しかも入ってくるのリスパダール1㎎錠が普通錠で、2㎎はOD錠のみである。しかし、0.5㎎錠はジェネリックのリスペリドンがあるという歪な状況である。

 

処方箋を変更する医師の身にもなってくれと言いたい(処方変更の手間が増える)。

 

ところで僕の入院の受け持ち患者の処方を検索したところ、リスペリドンを投与している人がたった1名。それも0.5㎎錠を1錠だけであった。ただし外来患者(院外薬局)では数名リスペリドンを処方しており、たぶん最高量でも2㎎くらいだと思う。

 

医師のうち院内受け持ち患者数は僕が最も多い。僕は他の医師に処方についてあれこれ言わない方針なので、どのようになっているのか、リスペリドンの処方状況を調べてみた。

 

他の医師の処方状況を調べると、最近、転院初診などがあり一時より処方数が増えているらしい。このように一時より増加している状況が困るのである。ある向精神薬を従来さほど購入していない病院が急に増やすことは難しい。

 

市中の調剤薬局には1回だけ2週間分処方して、そのまま向精神薬が残っていることがある。例えば、デプロメールを1日2錠2週間分処方しその後、患者さんが来なかったような事例である。これは精神科以外の(門前)調剤薬局で起こりやすい。

 

このようなデッドストックは、そのまま期限切れになり廃棄される確率が高い。箱の封を切った市販されない向精神薬を他の調剤薬局に売ることなどできないからである。(小売業の資格があってもできない)。

 

ただし大手チェーンで展開する調剤薬局では、在庫調整という形で同じ会社の調剤薬局間で融通できるのではないかと思われる。このようなことから、不足当初は調剤薬局での状況はいくらか異なっている。しかし時間が経てばどこの調剤薬局も差がなくなる。

 

今回の全国的なジェネリック医薬品メーカーの不祥事に端を発した向精神薬不足は、これから工場を作るとかの状況なので、長患いになりそうである。まずくすると3年から5年間ほどかかるかもしれない。

 

考えてもみてほしい。正しくない製法で作っていた薬を、先発品メーカーの特許を避けて製造するプランから始まるのである。当然、道のりは険しいはずである。

 

参考

 

 

 

 

エミュー

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オーストラリア、ゴールドコースト、カランビン動植物公園で撮影したエミュー。小学生くらいの女の子と一緒に歩いているので大きさがわかると思う。いわゆる飛べない大型の鳥。

 

エミューはオーストラリアの非公式の国鳥らしい。

上はオーストラリアの国章。カンガルーとエミューが向かい合って描かれている。オーストラリアには特徴ある多くの動物がいるが、この2つが選ばれている理由は前進しかしないため。

 

 

公園で見ている限り穏やな性格の鳥に見える。園内ではエミューの脂を売っていた。カンガルーは油断するとキックされて危険なこともあるというが、エミューはそこまで危険ではないと思う。

 

 

これらの写真はもちろん新型コロナウィルスの流行前。

 

この連休中、ハワイ旅行に出かける日本人観光客のことが報道されている。しかしオーストラリアには直行で飛行機が飛んでおらず、行くとしても香港やマニラとかの乗り継ぎでまずくすると20〜30時間かかる。つまりオーストラリア旅行は現実的ではない。入国制限(PCR検査など陰性証明)などはアメリカとあまり差がなかった。

 

 

海外旅行はアメリカ方面はまだ旅行しやすい。ただし円安でアメリカの物価が高くなっているので、出かけたとしてもけっこう大変そうだと思う。

 

 

 

 

コアラが犬のように足で掻いている動画

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これはオーストラリアゴールドコーストのカランビン動植物園公園のコアラ🐨。

 

最初、コアラも犬のように足を使って体を掻いていることに驚いた。犬は顎というか首あたりを高速で掻いているが、コアラは脚が短すぎて首に届いていない。

 

横腹を掻いているようにも見えるが、これって意味あるのかね。

 

以下は過去ログのコアラの動画。

 

 

 

 

 

 

 

リエゾンの患者さんの予後(総論的なもの)

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リエゾンでは診断をされて相談を受けることは少ない。紹介理由は著しい食思不振、興奮、看護への拒絶などが挙げられるが、これらは診断ではなく症状である。時にうつ病や認知症の診断を精神科で受けていて入院中の治療を依頼されることもある。

 

これは、その病院の入院患者のタイプにもよると思われる(中核病院なのかリハビリが主の病院なのかなど)。

 

リエゾンは対症療法なので、興奮や食思不振などの症状に対し相対的に良さそうな薬物を選択する。またリエゾンの特徴だが、ほぼ長期治療にならない。その理由は、数ヶ月後に退院し自宅や施設に入所することがほとんどだからである。

 

患者さんによれば退院後も外来治療することもあるが、その率は20%以下であろう。ほとんどのリエゾン患者は入院中にまとまることが多いからである。このことこそ、多くのケースが入院後に急速に発症した精神症状であることを証明している。

 

今の日本は高齢者の入院患者さんが多く、入院前に長期に治療すべき疾患が発症していることもある。例えば、アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、老年期のうつ病などである。リエゾンで相談を受ける患者さんのうち、アルツハイマー型認知症では既に向精神薬を投与されていることが多い。レビー小体型認知症は元々発症していたのだが、リエゾンで初めて明確になることもある。

 

レビー小体型認知症の症状は、入院時の感染症や身体疾患に由来する精神症状と似ていることがあり、しばらく経過を診てどちらなのか判断する。

 

重い神経内科疾患に伴う精神症状は神経内科疾患の消長につれて変動するため、少なくとも入院中はずっと関わることが多い。ほぼ手を尽くして固定したケースはそのままの処方で主治医に任せることもある。

 

神経内科疾患で最も予後良好に見えるのは、重い精神病状態で発症した症状精神病が完治するケースだと思う。神経内科疾患も完治した場合、疾患そのものが痕跡なく完治したと言える。(例えばギランバレー症候群)。

 

それに準じるのは、脳炎がほとんど後遺症なく完治したケースである(これもリエゾンで相談を受けることが多い)。

 

免疫系疾患もしばしばリエゾンの対象になる。免疫系疾患は症状精神病の中でも発現する精神症状の範囲が広い。つまり単にうつ状態やアパシー程度のものから、精神病やカタトニアに至る人まである。カタトニアに至る原因疾患として膠原病が挙げられるのは重要だと思う。

 

ある精神病状態を呈していた膠原病の女性患者さんはベッド上で彫像のようにほとんど動かないでいたが、紙おむつを嫌うのかそれを外す行為がずっと続いていた。家族によれば、紙おむつ代が月に13万円もかかると言う。

 

これを何とかしてほしいと相談を受けたのである。この場合、膠原病に対する直接的な内科的治療は僕はしなくて良い。

 

さてこれに対しいかなる治療をしたでしょう。この症状に対し最も有効で期待値が高い治療は明らかにECTであろう。過去ログにも重いカタトニアはECTを選択すべきと記載している。しかしリエゾンでは選択できない。

 

カタとニアに対し薬物療法で推奨されているのはワイパックスの大量である。ワイパックスの添付文書には、

 

用法及び用量
通常、成人1日ロラゼパムとして1〜3mgを2〜3回に分けて経口投与する。なお、年齢・症状により適宜増減する。

 

と記載されており、最高量は6㎎まで投薬できる。しかしワイパックス6㎎を投薬してもこのクラスの精神症状はたいした変化がないことも多い。ワイパックスは治療パワーが小さいからであろう。その点でワイパックスとECTでは治療期待値は大差である。

 

そこでワイパックスに抗精神病薬を追加するが、この患者さんの場合、最終的にリスペリドン2㎎+レキサルティ2㎎で治療していた。最終的にレキサルティとクエチアピンだったかもしれないがよく覚えていない。

 

カタトニアは統合失調症や躁うつ病だけでなく発達障害でも生じることがあり、もし発達障害に生じた場合、のんびり薬物療法で治療していた日には、良くなるまで何年かかるか予想もつかない。

 

僕の恩師の精神科医(児童専門)は、20歳でおむつ状態で何もできない発達障害のカタトニア状態に対しリスペリドンで治療したところ、改善まで5年間かかったという。抗精神病薬は多分カタとニアに治療的なのであろうが、完全にターゲットは捉えていないのだろう。まして統合失調症でないならなおさらである。

 

過去ログに保護室で便だらけになる話をアップしている。

 

 

膠原病のカタトニアで内科病棟で便まみれになる人は、少なからず特殊な精神病状態にあることを示唆している。しかも、単に認知症の不潔行為とは異なった次元にある。これは注意したい精神所見だと思う。

 

この膠原病の患者さんは疎通性が少し改善した程度で、さほどカタトニアの症状は改善していないように見えた。しかし家族に話を聞いたところ、オムツ代が激減しとても助かっていると言うのである(普通の高齢者のオムツ代)。

 

いかなるレベルの精神症状であれ、治療するかしないかは大違いだと思う。

 

 

娘さんや息子さんの治療を頼まれること

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外来診察の際、娘さんや息子さんの治療を希望されることがある。子供だけでなく、兄妹や親、あるいは孫のこともある。このような時、既に他の精神科病院で治療中のこともあるし、全くの初診のこともある。

 

診察中に直接患者さんの家族の治療を依頼されたら受けることが多い。断ることの方が遥かに少ない。

 

ただし、親戚の関係が薄いケースは他の医師に任せることもある。院内で僕は最も受け持ち患者が多いため、更に仕事が増えるからである。(書類も含め)

 

最初に一応、症状を聴いてみる。これは良くなりそうと思う時、仮に既に他の病院で治療を開始していたとしても自院に転院させる。目の前の患者さんが希望していることももちろんある。症状が十分にまとまっていなくても、今後の経過が良さそうに思う時は転院させてまで治療する意味は薄い。今の主治医に任せてみては?と伝える。

 

こうなってしまうのは、おそらく精神疾患への好奇心が強いからだと思う。つまり治療に挑戦する欲求が強いから多分そうなる。

 

ところが、実際に診察してみると予想よりずっと重いことも稀ならずある。それもちょっとどころではなく、数段階重い感じなのである。(例えば神経症か境界例かと思ったら、実際に診ると解離性同一性障害だったとか)

 

診察し始めると、なんとなく良い経過になることが多いが、治療当初は、

 

なんでこんな重い人受けたの?

 

と反省することも多い。このような経験から患者さん本人が僕に直接頼まない限り、自分から言い出して診察を受けることはなくなった。努めて自制しているのである。

 

そもそも患者さんが頼むのと、診察中に子供の話が出た際、自分が言い出して診察を請け負うのではプレッシャーが全然違う。精神医療的にもこの流れは良くないのではないかと思う。

 

いつかも書いたが、面白いから診るのでは体がもたない。

 

精神科医でも色々なタイプがあるが、おそらく僕は精神科治療に関して、アグレッシブなタイプではないかと思う。この年齢でも気持ち的に自制しているからである。

 

つまり、おせっかいはしないようにしているのである。

 

 

コンサータ患者カード紛失の話

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コンサータは現在、患者カードが発行されており、それを持っていないと医師は処方できない。患者さんはIDによりADHD流通管理システム内に登録されていて、患者カードはその証明となる。以下は過去ログ。

 

 

 

このADHD流通管理システムはコンサータ及びビバンセが対象薬品で、ストラテラ(アトモキセチン)、インチュニブなどは登録なしで処方できる。特例として登録日だけまだ患者カードがないため、暫定的に「初回処方時限定のID番号記載用紙」を出力し処方可能である。

 

本来、ADHDの人はその疾患性から患者カードを紛失しておかしくない。むしろ他の精神疾患より紛失しやすいと思う。また、コンサータを服用中にこのような重要なものを紛失してしまうような人は、あまり効いていないとも言える。患者カードを紛失すると、クレジットカードの紛失の時のような流れで再発行できるとは聴いていた。

 

今回、ある患者さんが実際に患者カードを紛失してしまった。しかし、ADHD流通管理システムのサイトの何処にその再発行申請ボタンがあるのか容易にわからない仕様なのである。

 

これは患者登録のウエブページの「修正欄」をクリックすれば良いことを学んだ。今回のように困ったときにサイトの質問をする際、質問を受けるヤンセンのMRさんはサイトを見たことがないのにアドバイスしている。だから70%は自力でなんとかしなくてはならない。

 

患者カードを紛失して「修正」と言うのは、インターフェース的にちょっと変だと思う。良く考えると理解できるだが。

 

修正欄をクリックすると、最上位の欄は「患者ID番号」と記載されている。そのID番号の下には、

 

□患者ID番号を再発番する
※ご確認ください※
患者本人が紛失時にのみチェックしてください。
以前使用されていたID番号が失効するため、そのID番号が記載されている患者カードが使用できなくなります。

 

とあり、この□をクリックすれば再発行される仕様なのである。上に記載されているように、本来のID番号は変更されて、誰かが患者カードを拾ったとしても利用できなくなる。これはクレジットカードを紛失した時とほぼ同じである。

 

結局、なぜ修正なのかと言えば、その患者さんのID番号が修正されるからであった。そういう風に考えると、患者カード再発行と言うボタンが見渡す限りなく、個人の修正欄に入って初めて話が進むことがなんとなく理解できたのであった。

 

ADHD流通管理システムは、その日の処方入力をした際に処方内容が上から最新の順にソートされて並ぶが、確認した後にOKで押したいボタンがなぜか「履歴」になっている。知らない人には何を言っているかよくわからないと思う。

 

アマゾンは最終的に支払い決定ボタンは上にも下にもあるためどの画面であっても容易に決定できる。

 

しかしADHD流通管理システムはそうではなく、最も押したい決定ボタンが一番下にあるため、必ず下までスクロールしなくてはならない。あの履歴ボタンは一番下にして入れ替えるか、このボタンはなくすべきだと思う。(入力の際にもう見えているわけで)

 

毎回、入力の度に腹が立つ。

 

ADHD流通管理システムのインターフェースは利用者にあまり優しくないと思う。

 

 

 

トカゲを完食したノラネコ

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今回の動画は気持ちが弱い人は観ないでください。あるいは、食事の前も観ない方が良いです。

 

ある観光地で、茶トラが口にトカゲを加えて歩いていたのでついて行ってみた。一瞬、口からトカゲを離したが、すごい勢いで逃げるところを手で押さえ、再び口に咥えて噛み始めた。

 

このような時、たいていトカゲをいじり回して食べないネコの方が多い。しかしこのネコは真のノラネコに近いのか完食されたのでした。

 

これはたくましい!と言ったところ。ノラネコが小鳥やトカゲなどの小動物を捕まえて結局殺してしまうのは、狩りの習性があるからと思われる。これは本能だと思う。

 

しかし狩りをして実際に食べることは飼い猫や地域ネコだと滅多にない。時に殺した動物を飼い主に持って来て見せるという行動を取る。これは誉めてほしいのかもしれない。

 

この習性のために、ネコ殺しの犯罪が起こったりする。

 

ネコ殺しの犯人はネコを殺した理由にこれ(食べるつもりもないのに弄って殺す)を挙げているからである。

 

 

 


入院して初めてわかる食事やサプリメントの副作用

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近年は患者さんにアレルギー体質の人が多くなり、入院の際に薬や食事も十分に注意を要する。しかし入院時は家にいるよりおやつも自由ではないし、服用中のサプリメントも服用できないので、思わぬ発見がある。(サプリメントは特に希望があれば許可することもある)

 

ある女性患者さんは麻痺性イレウスの際、プロスタルモンF(ジノプロスト)でSPO2が低下し、間質性肺炎を生じるのではないかと思われた。ただし併用薬もあり、プロスタルモンFが悪いのか確実ではなかったので要注意薬品として禁忌としなかった。しかし、後にもう一度同じ薬で同様な経過が診られたため、永久的に禁忌とした。間質性肺炎はいかにも薬剤性副作用で特に重い副作用に入る。

 

彼女はたいていの薬は問題ないのだが、リーマスやジプレキサは服用できず、ある種の特異体質と言えた。

 

ある頃から、自宅で肛門から粘液が出るという症状があり、いつもおもつをしていないといけない状況になった。僕は腕の良い外科(肛門科)を紹介したが、あまりこれと言ったアイデアがなく改善することがなかった。

 

ある時、うつ状態を呈して入院したが、なぜか入院中はその粘液が出る症状がみられなかったのである。

 

その後、軽快退院し自宅に戻ると、同じ症状が再現し、どうやらおやつも含めた食事あるいはサプリメントが悪いのではないかと思うようになった。そこで色々なものを食べない(服用しない)ように伝えたのである。

 

結局、その肛門の症状はよく服用していたサプリメントのために生じることが判明したのである。

 

服薬する向精神薬や内科疾患の薬が多くなると、何らかの副作用はこれらが原因と思いがちである。しかしサプリメントも副作用は十分にありえるのである。サプリメントは向精神薬のように副作用などの市販後調査が行われないのも重要だと思う。

 

ここでタイトルに戻るが、

 

入院して初めてわかる食事やサプリメントの副作用なのであった。

聴覚情報処理障害(APD)

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精神疾患には聴覚情報処理障害(APD)と呼ばれる障害が合併していることがある。ただし、軽度の時は障害があるかどうかわかりにくいのではないかと思う。

 

なぜ今回この障害を取り上げたかというと、新型コロナのマスクの環境だと、この障害を持つ人はより辛いからである。この機会に聴覚情報処理障害(APD)について紹介したいと思った。

 

僕が最初にこの聴覚情報処理障害(APD)が合併しているのではないか?と思った患者さんはてんかん性精神病だった。新型コロナ流行のずっと以前の話である。

 

その患者さんは一見、聴力は正常だが、聴き間違いがとても多く、しばしば全く異なる理解をしていた。ある時など、僕が「こんな風に言いましたよね」と言うと、それを否定し僕が嘘をついていると言い始めた。証拠のカルテを看護師さんに持って来て貰いそれを見せると、「このカルテは改竄している」と訴えたのである。

 

患者さんが自分の理解と異なると思った時、その反応がどのようなものになるかは、精神疾患や性格にもよると思う。

 

聴覚情報処理障害(APD)では周囲に雑音がある環境だと、一層、聞き取りづらくなるらしく、すぐ近くで話をしている人がいると、急に会話を止める。周囲で電話をしている人がいる時も同様である。

 

聴覚情報処理障害(APD)は明確にこの障害があると思われる患者さんはかなり少ない。もちろん軽度の人は問題にしていない。僕の患者さんではいかなる疾患であれ、発達障害を合併している人に診られるように思う。

 

例えば上で挙げたてんかんの人もASDを合併していたし、既に統合失調症の診断を受けている人も生活歴や家族歴的にはASDを合併していることが疑わしかった。

 

脳内で聴覚情報が混線しているとしか思えないが、僕の患者さんの場合、聴覚情報処理障害(APD)の障害を紹介し、それを指摘しても、それが受け入れられないことが多かった。(つまり病識がない)。

 

そのような風なので、僕が嘘をついていると言うのである。(カルテを改竄をしていると言うのと同様な理解)。

 

精神疾患がなく、聴覚情報処理障害(APD)だけある人は、仕事の際に失敗体験が多くなり、時間が経つとそれに気付く人もいると思われる。

 

聴覚情報処理障害(APD)は器質性疾患と考えられ、効果的な薬物療法は今のところないと思う。日常生活でそれを自覚して注意深くすることで多少は困難さは軽減するかもしれない。

 

脳血管障害や交通事故後の高次脳機能障害との相違は、これらが元々健康だった人が脳出血や交通事故で機能が損なわれたことに対し、聴覚情報処理障害(APD)は生来性の機能障害であることである。

 

治療の困難さの差があるが、将来、聴覚情報処理障害(APD)に対し有効なリハビリテーションが可能になるかもしれない。

 

あるいは遠い将来になるが、再生医療により治癒可能になるかもしれないと思う。

 

 

 

精神科と身体科の診断の相違

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同じ症状を診ても、精神科と身体科では診たてが異なる。例えば嚥下障害。

 

ある時、僕の患者さんが内科に入院したと連絡があった。その患者さんの重要視された症状は「嚥下障害」と言う。

 

ところが、入院後も全然改善しなかったらしい。入院した理由は訪問看護(当院ではない)で様子がおかしく、入院させた方が良いと判断されたのである。

 

嚥下障害が一向に改善せず年齢的にも自宅に戻ることは難しいと判断されたようであった。年齢も考慮し施設入所になる見通しだった。しかし家族はそれに同意しなかった。

 

細かい経緯は忘れてしまったが、嚥下障害の背景は精神科的には昏迷が疑わしいと思われた。なぜなら、その人は病状悪化するといつもそうだったからである。

 

昏迷と言うと、すぐに統合失調症と思われがちだが、本来そこまで疾患特異性がない。

 

過去ログで挙げた昏迷になりうる3大精神疾患。

1,統合失調症

2,躁うつ病

3,ヒステリー(神経症)

 

器質性疾患でも生じうるので、頻度の差があるものの疾患特異性がないという表現そのままである。なお、このブログ的にはヒステリー(神経症)は器質性疾患とみなしている(特にヒステリー)。

 

患者さんの家族が当院に来て転院させてほしいと希望されたため、転入院させ、昏迷が改善したら帰宅させる方針とした。この嚥下障害(食事が自力で取れない)の病態は、昏迷を来しているだけで、不可逆性ではないからである。(つまり治療で回復する)。

 

結局、入院後、抗精神病薬を調整したところ、霧が晴れるように昏迷は改善し普通食も食べられるようになった。おそらく退院後、正月にお餅も食べられたと思う。

 

身体科ではもうこれは自宅では生活できないとされていたのにあまりにも大きな違いである。

 

昏迷は血液検査、CT、MRIに異常所見がない。

 

診たことがないとわかりにくいので、個々の症状を重視してしまうところはある。

 

抗精神病薬治療におけるアキネントン処方量減少の話

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昔の統合失調症治療は定型抗精神病薬しか選択できなかったため、しばしばアキネトン(ビペリデン)が併用されていた。例えば以下のような処方。

 

セレネース 3㎎

アキネトン 2㎎

 

当時、僕が不思議に思ったのは、セレネースでさえ全ての人に薬剤性パーキンソン症候群が生じるわけではないのに、最初から併用を推奨されていたことである。

 

薬剤性パーキンソン症候群を緩和するためにしばしば選択されていた薬は、アキネトン(ビペリデン)、アーテン(トリヘキシフェニジル)、ヒベルナ(プロメタジン)の3剤である。前者2剤は、ブチロフェノン系抗精神病薬(セレネースやトロペロン)、ヒベルナはフェノチアジン系抗精神病薬に併用すると良いと言われていた(相性が良いと言う意味)。

 

かつてのほとんどの定型抗精神病薬は副作用を緩和する機能がなかったため、これらの抗パーキンソン薬が併用されていたのである。(プロピタンは例外)

 

もし定型抗精神病薬単剤で治療した場合、用量にもよるが、錐体外路症状などの副作用が生じ、たとえ幻覚妄想が減少したとしても副作用のために患者さんが苦しむ経過になりやすい。これは服薬中断に至りやすい要因と言えた。何を書いているかわからない人は以下のSDAの記事を読んでほしい。

 

 

上のリンクから重要部分を抜粋。

 

脳内には4つのドーパミン経路がある。そのうち黒質線条体ドーパミン経路は黒質から基底核に投射して、運動をコントロールしていると言われる。定型抗精神病薬などの投与により、ドーパミン受容体が黒質線条体経路のシナプス後部で遮断されると、パーキンソン病に似た運動障害が引き起こされる。このような定型抗精神病薬による、パーキンソン症状を薬剤性パーキンソン症候群などと呼ぶ。また、この時に出現する振戦、筋強剛、流涎などの症状は錐体外路症状(EPS)と呼ばれる。

 

時代は流れ、非定型抗精神病薬という抗パーキンソン薬を併用しないで良い薬が登場した。非定型抗精神病薬は錐体外路症状を緩和する薬理作用を内包していたからである。

 

しかし今から考えると、最初に登場したリスパダールは、比較的副作用が出やすい非定型抗精神病薬だったと思う。これはリスパダールの処方上限が当初24㎎(12㎎までで適宜増減で24㎎まで)だったことも大きな要因だった。(現在は6㎎で適宜増減で12㎎まで)

 

非定型抗精神病薬が順次発売されていくうちに、アキネトンなどの抗パーキンソン薬の処方量が激減することになった。これらの薬の併用の必要がない人が多かったためである。

 

当時と現在の処方内容を比較すると、このカテゴリーの薬の激減が最も大きい。

 

しかしながら、忍容性が低い人は非定型抗精神病薬でさえ錐体外路症状が出現しやすいため、用量を少なくして処方しアキネトンの併用を避けるか、アキネトンの併用の必要性がない非定型抗精神病薬を選ぶしか方法がない。

 

統合失調症の治療では、単にアキネトンを使いたくないと言う理由で、治療に値しない低い用量の処方をし続けることは間違いなので、今でもこれらの抗パーキンソン薬はある程度処方されている。

 

アキネトンが使われるパターンは主に2つあり、

 

1、忍容性が低く非定型抗精神病薬も比較的少ないのだが、副作用のために仕方なく併用される。

 

2、特に長期入院の重篤な患者さんでどうしても大用量を処方せざるを得ず、バランスを取るために併用処方される。(定型抗精神病薬を使わざるを得ない人もこれに近い)。

 

それでもなお、精神科治療でアキネトン(及びアーテン、ヒベルナ)の処方が激減したのは確かである。

 

アキネトンなどの抗パーキンソン薬を併用すると、非定型および定型抗精神病薬だけ処方するより便秘になりやすいなど更に副作用が増えるパターンになる。いかなる精神科医もなるだけアキネトンを使わない処方を心掛けていると思う。

 

アキネトンの処方箋数の減少は、抗精神病薬の進歩(バージョンアップ)もよく反映しているのである。

 

 

 

 

ミャッと鳴きくるくる廻る三毛猫

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なんとなくエサを欲しがっているような三毛猫。

 

最初はベンチの上にいたが、その後、降りてきてくるくる廻りながらミャッと鳴いていた。

 

尻尾が気になるのか?

 

これはどういう意味なのかわかる人いますか?

ADHD的困惑状態

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このタイトルはうまく伝わらないと思う。少し言い換えると背景にADHDまたはそのグレーゾーンがあり、それに由来する困惑状態。

 

どのような事態になるかと言えば、「会話の際に反応が悪くうまく返事ができない」という昏迷に近い病態から、会話ができるが日常生活で多くの場面で何も決められない、何もできないなど、もう少し動ける軽い病態までの範囲にある。後者がタイトルのADHD的困惑状態に近い。

 

この病態に至ると、やたら音が響いてストレスがかかるとか、いつも不安感に襲われるなどの非常に情緒不安定になる。

 

女性だと今日の夕食をどのような料理にするか決められない。家事全般に時間がかかる。しかし、例えば肉じゃがを作りなさいと食材を渡すと料理はできたりする。

 

余談だが、かなり重い統合失調症の女性も料理はできる人が多いので、おそらく料理を作ることは自転車に乗ることに似た自然にできることなのでは?と想像している。

 

困惑状態では幻聴が生じることがあるし、希死念慮が生じ自殺既遂までありうる。

 

しかし診察すると統合失調症とは到底見えない。また典型的なうつ病にも見えない。そうではないにしてもリスキーな病態だと思う。

 

この病態の治療だが、抗精神病薬が普通に有効である。ベストはジプレキサだと思うが、どのような抗精神病薬が良いかは人による。エビリファイを選ぶくらいならレキサルティだと思う。人によればリスパダールも良いと思われる。この病態はどのような事態になるのか予想がつかないこともあり、インヴェガを選ぶくらいならリスパダールが遥かにマシである。

 

抗精神病薬は包括していると言うか完結しているタイプがより良く、エビリファイとレキサルティの差やリスパダールとインヴェガの差もそれが関係している。決してエビリファイやインヴェガが良くないと言う意味ではない。

 

このようなケースでADHDに有効なのかと言うと、そこまで有効ではない。その理由はこの状態は2次的障害だからである。基本、抗精神病薬を優先するべきである。

 

特殊な病態でADHD的困惑状態(しかも昏迷に近い)を呈しており、希死念慮から数日以内に自殺するかもしれない事例は最初からコンサータが良い。

 

僕の患者さんで1名、女子大生でテスト期間にこの病態に至り、初診でコンサータを投与したことがある。この女子大生はその日以降、急回復し留年なく卒業。今は公務員試験に合格し就職して普通に業務を行っている。しかも今はコンサータは服用していない(そもそも服薬の必要がない、明確なADHDはあるが)。

 

ADHD的困惑状態の予後は良好で、この病態から統合失調症に移行することはほぼないと思う。少なくとも僕は診たことがない。

 

全く欠陥症状がなく快癒するため、回復後、そのような重い病態があったことなど周囲から想像できない。

 

今回の記事のタイトルになぜADHD的と記載したかと言うと、本人の検査でそれを示唆する所見があったり、非常に近い親族にADHDなどの発達障害がみられるからである。また統合失調症の家族歴が一切ない。また回復した状況も統合失調症とは程遠い。

 

いつまで服薬するかだが、服薬中断しても再燃するまで時間がかかる。いかえると、数年単位で悪化がない。しかしストレス時にそういう病態が再燃しやすい人もいるようである。例えば一度治療歴があり、治療中断して5年後に再発するなどである。

 

興味深いと思うのは、このタイプは再燃を繰り返しても統合失調症のようにならない、言い換えると毎回欠陥症状を残さないことである。

 

かつて心因反応と呼ばれた病態もこの疾患?を含んでいると思う。

 

おそらく完治した言う統合失調症?もこのような病態だったのではと想像している。

 

また例えば若い有名人の誰も予想もしなかったような自殺既遂も、このような病態が含まれているのでは?と思う。

 

その理由は自殺が起こるごく最近まで、普通に仕事をしていたりするからである。

 

この経過は、その瞬間は希死念慮を伴ううつ状態だったとしても、数か月単位の臨床経過が統合失調症や内因性うつ病的ではない。

 

(おわり)

効果が出るまで20日かかる

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不安感、軽い抑うつ、イライラ感にレクサプロ5㎎だけ処方している女性患者さんがいた。

 

彼女はレクサプロ5㎎でそれらの症状が良くなるらしく、1~2年の外来治療後、通院を止めてしまった。この人の特徴はレクサプロ5㎎(10㎎錠の半錠)以外は何も服薬していないこと。眠剤は必要ない。

 

ところが、1~2年後に再び受診したのである。彼女によれば、治ったと思ったらまた同じ症状が出たと言う。そこで、同じレクサプロ5㎎を処方したところ、次第に症状が改善し1か月ごとに通院していた。彼女の場合、レクサプロが良いのがわかっているので、最初から1か月処方で良さそうである。

 

数か月から1年くらい通院後、また治療中断。

 

僕はずっと服薬した方が良いとか、止めても大丈夫とかも言っていない。全て本人に任せていた。その程度の症状だったからである。

 

そして再び1年後くらいに再診したのであった。彼女はどうも春先に悪くなるようなのである。

 

今回、レクサプロ5㎎を服薬し始めて、どのくらい経って症状が良くなるか尋ねてみた。SSRIは症状改善まで時間がかかる抗うつ剤なので、5㎎服薬でどのくらいで症状が良くなるのか興味があった。

 

彼女によれば、服薬し始めて次に受診する日の1週間前くらいに良くなると言う。彼女にはブランクが空いても必ず1か月分処方しているので20日後くらいである。改善の仕方もじわじわ良くなるのではなく、急に良くなる感覚らしい。なお、レクサプロの効果発現は20日と言うことはない。平均すればもう少し早いことが多い。

 

これはSSRIの用量にも関係があると思うが、休薬後、離脱などの症状はないか気にならないくらいなのは間違いない。そういう話が全く出てこないからである。

 

彼女は自分の症状についておそらく深刻には捉えていないと思う。

 

悪くなったら服薬し、良くなったら服薬を止める。これは精神科以外の多くの疾患と服薬のスタンスと同じである。

 

精神疾患はその人の生活を大きく変えるところがあるので、このスタンスで良い人はいるのはいるが、あまり多くはないと思った。


慢性期の統合失調症では昼夜逆転の人は少ない

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睡眠の昼夜逆転は、認知症の高齢者でよく言われるワードだと思う。これは周囲に原因がなく、独立して生じている。つまり夜中に自ら騒いで昼間に傾眠状態となる。夜間に騒ぐから不眠ともみなせるので不眠は結果ともいえる。

 

小中学生には昼夜逆転はないなどと昔は言われていたが(本当か?)、現代社会ではスマホとかタブレットなどのゲームで夜間眠らず、朝から寝るために登校できないといった昼夜逆転が診られるようになった。これは果たして生物学的に「昼夜逆転」と言えるのか微妙だと思う。

 

昼夜逆転があるために暇つぶし的にゲームをしているのか、ゲームにあまりにハマってしまったためにそうなったのかで意味が違う。後者はいわゆる過剰な興味と言うかある種の嗜癖だからである。暇つぶし的にゲームをしているとしたら、最初から昼夜逆転が生じているともいえる。いずれにせよ子供の昼夜逆転は器質性所見っぽい(しかも可逆性←治癒しうる)。

 

さて、慢性期にある統合失調症の人はあまり昼夜逆転が診られない。一般的に統合失調症では不眠を避けるために眠剤を服用している人が多いが、これは不眠が続くと病状悪化を来すために予防的な意味も含まれている。

 

これは断眠療法がうつ状態を改善することと関係が深い。1型躁うつ病では不眠が続くことでうつ状態が改善し行き過ぎ、大躁転を来すことがある。統合失調症の人に不眠が良くないのはこのようなことが関係している。(以下のリンクカード参照)

 

 

慢性期の統合失調症の人は、眠剤さえ服用すれば睡眠は安定しているのが普通である。眠剤が全く必要でない統合失調症の人も一定の割合でいる。つまり、統合失調症は内因性オリジナルの精神所見として昼夜逆転はない。

 

統合失調症の人の睡眠が健康な人と異なるように見える点は、浅い睡眠が多そうなことと、加齢により睡眠時間短縮が生じない人がいるように見えることだと思う。これは浅い睡眠が多いからこそ、長く眠らざるを得ないのかもしれない。

 

慢性期の統合失調症の人は昼夜逆転の人は少ないと記載したが、発病したばかりなど急性期では夜間不眠は普通に生じる。ヒトは全く眠らないと言うわけにはいかないので、朝になってウトウトすると言うパターンになりやすい。そもそも、病状が悪すぎて隔離されている人は一晩中起きていることが多い。朝になり隔離室に診察に行くと寝ていたりするので、一晩中で寝ずに騒いでいた結果がこれである。

 

つまり、統合失調症の急性期とか急性増悪期には昼夜逆転はむしろ普通に起こると言える。特に緊張病症候群ではそうである。

 

慢性期の統合失調症の患者さんは既に急性期の戦いを終えているので、そのような症状が収まっていることが多いのであろう。

 

このような視点では、昼夜逆転は器質性所見のように見える。過去ログでは統合失調症の緊張病症候群は「器質性局面である」と言う記載がある。

 

そうのように考えていくと、認知症の高齢者と学校に通う若い世代の昼夜逆転の点と線が繋がっているのがわかると思う。

 

 

 

 

落書きされたように見えるノラネコ

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基本、ぶちなんだろうが、落書きされたように見えるノラネコ。これはお互い目があったところ。

 

少し前に一度見たが、その後一度も会っていない。

 

 

 

ほとんど白ネコ。しかもけっこう綺麗な白ネコである。

 

 

このネコは避妊手術を受けていない。オスメスも不明だが、体が小さいのでメスネコなんだろうと思う。

ジスバル(遅発性ジスキネジア治療薬)

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2022年6月1日に遅発性ジスキネジア治療薬ジスバルが発売されている。製造販売元は田辺三菱製薬、販売元はヤンセンファーマである。プロモーションは吉富薬品も行う。

 

わかりやすい遅発性ジスキネジアは「口をもぐもぐさせる動き」で、精神科長期治療中の高齢の女性に生じているのを時々診る。

 

遅発性ジスキネジアは精神科ではドパミン遮断系向精神薬を長期に服薬した際に生じうる。頻度的には高齢の女性に診られやすいが、男性にも生じうる。

 

かつては非定型抗精神病薬がなかったため、定型抗精神病薬を長期に服薬した高齢女性に起こることがあった。ここ20年くらいで非定型抗精神病薬が主に処方されるようになり、頻度は減少している印象である。

 

また軽度の遅発性ジスキネジアは定型抗精神病薬から非定型抗精神病薬に変更することでかなり減少するかほとんど見られなくなる人もいる。(例えばセレネースからエビリファイなど)

 

逆に、大用量の定型抗精神病薬を服用していた人が非定型抗精神病薬に変更したためにかえって出現することも診られていた。これは大用量の定型抗精神病薬は、EPSを抑え込むことも可能だからである。

 

元々ドパミン遮断作用がほとんどないか僅かな非定型抗精神病薬、例えばクロザリルやセロクエルが遅発性ジスキネジアを生じにくいのはわかりやすい。非定型抗精神病薬の中でリスパダールの多めの用量は力価的に遅発性ジスキネジアが生じても全くおかしくない。また忍容性が低い人はジプレキサやシクレストくらいでも生じうる。

 

エビリファイはパーシャルアゴニストなので、作用機序的に遅発性ジスキネジアが生じにくくなっている。(ドパミンレセプターのアップレギュレーションが起こりにくい)

 

このようなことから、かつて定型抗精神病薬を長期投与された統合失調症の患者さんに遅発性ジスキネジアは診られやすかったが(高齢者)、非定型抗精神病薬の発売以降でさえ、高用量を服薬していた人も診られておかしくないと言える。忍容性の低い人は比較的若い人にも診られる副作用である(30歳後半から40歳代)

 

 

今回、遅発性ジスキネジア治療薬が新発売された。ジスバルという商品名で白のカプセルである。40㎎の1剤型しかなく、かなり薬価が高い。1カプセル約2331円もするため、1か月で7万円もかかる。しかも適宜増減でき80㎎まで投与可能なので14万円までかかりうる。

 

 

日本では新薬の薬価は、既に発売されている似た薬効の薬の薬価が参考とされる。ジスバルはコレアジンと呼ばれるハンチントン病の舞踏運動の薬の薬価を参考にされたらしい。

 

 

 

ハンチントン病はかなり稀な神経病で、遅発性ジスキネジアとの発症頻度は大差である。この2つが同様な薬価と言うのはいかがなものかと思う。

 

ジスバルは1箱100カプセル入りで23万円以上するので、おいそれと使えない薬だと思う。現在、処方しても良いかと思う人は、既にDBSの施術を受けていて、今なおメージ症候群などが残遺している比較的若い女性患者さん。この人は使う価値があるが、数回使って副作用で中止した際の損害が大きすぎる。(院内薬局の場合だが、院外薬局だって大迷惑だと思う)。

 

ジスバルを処方してみたいと思う人は入院患者さんにいるからである。この人にトライするだけでは到底購入はできないと思った。精神科に限らないと思うが、医療経済的(病院だけでなく国の財政も含め)なものも考慮すべきだからである。

 

ただし、食道のジスキネジアでいつも反芻が生じている男性患者さんは、ジスバルでこれが改善するならメリットが大きい。基本、ジスキネジアやジストニアは随意筋にしか生じない。食道は上部が随意筋なのでここに遅発性ジスキネジアが生じうるのである。もしジスバルが有効でこれらが軽減すれば長期的には誤嚥性肺炎を軽減するであろう。

 

しかしながらこのような患者さんは包括病棟にいることが多いので、そのままジスバルを処方したなら、その処方金額は病院の手出しになり、やはり大損害である。

 

このようなことから、ジスバルは上梓されたのは良いが、扱いにくい向精神薬だと思う。なお、有効性は70%くらいという話である。

 

今回の記事では、ジスバルの薬理作用についてあまり触れていないが簡単に以下に紹介する。

 

ジスバルの一般名はバルベナジントシル酸塩。VMAT2阻害作用を持ち、ドパミンの再取り込みを阻害することを通じドパミン過敏性を低下させる。

 

これは精神科では抗精神病薬の長期のドパミン遮断作用のため、ドパミンレセプターがアップレギュレーションし、ドパミン過敏性が生じるためである。ジズバルを投与することで受け手のドパミンレセプター数が正常に近づくのかもしれない。

 

ただし正確なのか自信なし。そう思う理由は、ジスバルの作用機序そのものが抗精神病薬に似ているからである。ジスバル自体は統合失調症の精神症状を感覚的には悪化させないと思う。

 

エビリファイがアゴニスト的な振舞を通じてドパミン過敏性を低下させることに対し、ジズバルは伝達物質のドパミンを(再取り込みを阻害することで)減少させる機序になっている。

 

このような医療上の感覚的なある種の乖離は時々診療で診られる。例えばDBSは統合失調症の精神症状を悪化させておかしくないが実際はそんな風には見えない。しかし、DBSの施術が始まった当時は、統合失調症には良くないのでは?と考えられていた歴史がある。

 

まだ自分にはよくわかっていないからだと思うが、エビリファイ理解しやすいが、ジスバルはまだよく理解できないでいる。

 

なお、今まで遅発性ジスキネジアに対して精神科では主に適応外処方が行われてきた。正確に「遅発性ジスキネジア」に適応がある薬などなかったからである。唯一、グラマリールはジスキネジアが適応に挙げられていたが、他の適応外処方に比べとりわけ効くようには見えなかった。

 

 

遅発性ジスキネジアに使われていた適応外処方薬は、リボトリール、ユベラN、シンメトレル、グラマリール、ビ・シフロールなどである。

 

なお、抗コリン薬はEPSに処方される薬だが、遅発性ジスキネジアには良くないと言われていた(現在のエビデンスは詳しくない)。

 

 

子供のスポーツ大会の勝利至上主義と商業主義

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“柔道三兄弟”の父親として知られるお笑い芸人のはなわさんのインタビュー記事がNHKのサイトに紹介されていた。

 

最近、行き過ぎた勝利至上主義が散見されるとして、全柔連により小学生の一部の柔道大会が廃止された。子供の柔道大会で特に問題があるものとして過度な減量も挙げられるので、特別のように思うかもしれないが、柔道に限らず子供のスポーツ大会の勝利至上主義と商業主義は目に余るものがある。

 

今回この話題を取り上げた理由は、子供のスポーツ界で勝利至上主義が原因でメンタルヘルスを病み相談を受ける事例が増えてきているからである。

 

小学生や中学生でスポーツで特別に良い成績を上げると、スポーツの名門校にスポーツ特待生として学費免除など優遇される。この優遇のレベルはどのくらい成績が傑出しているかで異なる。全国大会で優勝を狙えるような選手は、学費免除に加え生活費まで支給されることもあるようである。

 

スポーツ特待生は、全国大会で良い成績を残してその高校の知名度を上げることが期待されるが、成長期の子供は急に成績が伸びなくなることもあるし、大きな怪我が原因で競技を続けられなくなることもある。

 

競技が続けられなくなった時に免除だった学費を支払わねばならないかは入学時の契約によると思うが、普通はその学校に居りづらくなると思われる。スポーツを期待されて入学したのに退部した場合、学校からは役に立たない生徒とみなされるであろう。この辺りはかなりシビアで商業主義的だと思う。

 

その生徒は学校でかなりの疎外感を感じるであろうし、学費を出してまでその学校にいるより転校して新しい生活になった方がマシと思っても不思議ではない。

 

スポーツ特待生の競技が続けられない事態は誰にもすぐに気付きやすいが、それ以外にもかなりの闇がある。

 

例えば、自分の子供が重要な大会前に他の生徒の父兄により怪我をさせられるなどである。これは競技能力の差が自分の子供と差があるので妬みのようなものが原因かもしれない。また、レギュラー人数には上限があるので境界にいる子の親は切実なのであろうが到底容認できない話である。

 

はなわさんのインタビュー記事でも、試合中に指導者や父兄の罵声が酷いと言う話が挙げられているが、メンタルヘルス的には罵声は暴力と何ら変わりはない。手を上げなかったら暴力ではないという考え方は間違いだ。

 

酷い暴力があったなら、思い切って警察に相談すれば良いと思うかもしれないが、話はそう簡単ではないのである。ケースによれば、その学校が全国大会出場を辞退せねばならなくなる。

 

これは日本的な全体責任のような考え方で、他の無関係の競技者の心を折る処分だと思う。このような処分も、その競技連盟の商業主義的一面だと思う。

 

今回の全柔連の決定は、今後の子供のスポーツをどう考えるかという点で、大きな問題提起だと思う。

 

参考

 

全柔連(全日本柔道連盟)が今年3月、「心身の発達途上にあり、事理弁別(物事の判断)の能力が十分でない小学生が勝利至上主義に陥ることは好ましくないものと考えます」として、小学生の一部の全国大会を廃止することを発表した。

 

 

 

 

1年間の新患人数

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数年前から初診の時にサマリーを書くことにした。ノートパソコンでワードにサマリーを記載する。従って、ここ数年間は1年間で初診を何人診ているかがだいたいわかる。

 

なぜだいたいなのかと言うと、サマリーを書かない新患がいるから。

 

サマリーを書かない新患でも、リエゾン患者は必ず身体科の主治医へ返書をするので、その人数はわかる。この返書はあるとないとでは大違いである。(レセプトの時に役立つ)

 

問題は警察の留置者と夜間輪番の新患。

 

警察官に同伴される留置中の新患は、平均的な新患より新型コロナウィルス感染のリスクが高いと思われる。従って安全を期して病院外のプレハブの簡易的な診察室で診ることにしている。ここはエアコンやプリンタやベッドはあるが、パソコンはないので当初は自分のノートパソコンを持参して記載していた。ところが、次第に非常にストレスになることに気付いた。

 

フェイスガードをしているとよく自分の呼吸のために前が曇り、パソコンも十分に見えない。従って警察官同伴の新患は基本、紙カルテにそのまま書くようになった。従って、サマリー数がそのまま新患数にならない。

 

今、ここ1年間の新患数をサマリーで検索すると58名だった(2021年6月から2022年5月)。これにリエゾンと警察関係を含めるともう少し増える。レセコンで調べるとだいたい80~90人だった。

 

これが、1年間に僕が診る新患数である。これが多いかどうかは不明だが、おそらく単科精神病院の院長としてはかなり多いのではないかと思う。

 

最近、新患の患者さんが、「○○クリニックに初診したら、主治医はテレビばかり見ていて、全然こちらを見てくれなかった」という不思議な苦情を聴いた。

 

これは状況的に、主治医は電子カルテばかり見ていて、ろくに患者を見ていなかったと解釈できる。

 

これをもちろん本人に説明したが、実は単科精神科病院は電子カルテの普及がかなり遅れている。その理由はいくつかあるが、うちの病院では以前に勤めていた病院で電子カルテ化されたために退職し、うちの病院に避難してきた年配のナースが幾人もおり、容易に電子カルテにできない。まとめてナースが退職しまうのは大変な事態である。

 

また近年、電子カルテがハッキングされてカルテ情報にアクセスできなくなった病院も出てきているので、紙カルテが安全性が高いと言う要素もみられるようになった。

 

精神科では、主治医が電子カルテに記載しているため患者さんに疎外感があるとしたら、紙カルテもそこまで悪くないと思っている。

 

(おわり)

 

 

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