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松田屋ホテルの池の鯉

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これは山口市湯田温泉、松田屋ホテルの庭園の池である。結構、大きな錦鯉が泳いでいる。

 

庭園に面した客室から撮影。

池に近づくと、餌を貰えることにすぐに気付き鯉が集まってくる。

 

 

餌をやるとこんな風に先を争って食べる。

 

 

 

この池には90匹近い錦鯉がいたが、新型コロナ流行などのストレスで少し減少し、今では80匹少し超えるくらいと言う。新型コロナは鯉にはあまり関係ないように思うだろうが、お客さんが一時的に減るなど環境変化が何かしら影響するらしい。

 

 

松田屋ホテルの創業はなんと1675年。江戸時代から続く由緒正しき旅館である。ホテル内には明治維の時期に活躍した人たちに関するものも展示されている。

 

 

高杉晋作が贈った龍馬愛用のピストル。

 

特筆すべきは、松田屋ホテルは料理が良いこと。この時の旅行では出なかったが、あのように美味しい西京焼きは初めて食べた。(正月の時)

 

松田屋ホテルの正面玄関を出ると、すぐに中原中也記念館がある。(山口県のスーパースター)

 

 

中原中也は詩はともかく、あまり知らない人が多いと思うが、この記念館に行くとどのような生い立ちでどのような人生を送ったかよくわかる。人柄も含めて。

 

一度、行ったが是非もう一度行きたい記念館。

 

下は松田屋ホテルのホームページ。湯田温泉は特徴があまりない泉質だと思う。すぐ近くに古希庵があるが、アメニティ全般は古希庵が優れるが、松田屋ホテルの方がなぜか泉質が良い。おそらく、350年前に既に創業していたのも関係していると思う。ただし、温泉の温度が高すぎるので少し水を入れないと熱すぎて長くは入れない。

 

 

 

 

 


統合失調症の子供と一緒に住む親の許容度が低下していること

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現在、統合失調症の患者さんはある程度の症状があっても、入院せず自宅で生活するケースが多くなった。

 

表現を変えると、30年前だったらおそらく精神科病院に入院し続けていた精神症状のある患者さんも病院以外で生活していることが多くなったのである。

 

単身でアパート、グループホーム、共同住居に入居する人は、家族と一緒には住んでいないので、家族の負担はかなり軽減される。

 

ところが、自宅で家族とひきこもりのように住んでいる場合、家族(特に母親)の精神的ストレスはかなり大きいようである。これも本人の精神症状の内容にもよる。

 

一般の精神病ではないひきこもりの人は年齢を経て、むしろ家族にとって役立っている経過もみられる。例えば家族の代わりに買い物行ってくれるとか、病院に通院するのに車で送迎してくれるとか、銀行で手続きをしてくれるなどである。

 

親は高齢になると車の免許を返上することが多くなるが、地方だと車がないと生活が成り立ちにくい状況があり、ひきこもりだった子供が役立つ機会が増える。

 

統合失調症の場合、人にもよるが、親が高齢になっても日常で様々な点で困らせていることが多くなる(確率的にそうである)。

 

ここが統合失調症の疾患性だと思われる。これは「統合失調症は単に特殊な考え方をする人に過ぎないのではないですか?」と言う質問のアンサーになっている。

 

両親(特に母親)は、本人の介護に疲れ果て、時にそのストレスで身体疾患を悪化させ、なんとか本人を病院で診てほしいと依頼する人もいる。両親が介護を受ける年齢になると、統合失調症の子供の面倒をみる余裕などなくなるのである。

 

このような時、入院させるかどうかは精神病の程度による。現在、精神科病院は入院しなくても良いレベルの人を入院させ続ける医療環境にない。可能ならアパート、グループホームくらいに入居させて、訪問看護やデイケアなどを利用してもらう流れになる。

 

このように自宅と異なる環境では、ストレスのため60~70歳代の患者さんが病状を悪化させ入院することがある。このような時、意外に治療に時間がかかることがあり、「もうこれは退院することは無理」と思うような状況もしばしばある。

 

不思議なことにそのレベルになっても、意外に退院できるものである。これは今の抗精神病薬が進歩したこともあるが、試行錯誤の末、よくわからない理由で偶然良くなって退院するパターンが多い。

 

少なくとも、70歳くらいは今は全然若い年齢なので、可能なら退院してほしいものである。

 

長期間、親と一緒に住んでいる患者さんが、親が介護できなくなった際に、対応が難しいのは、ずっと一緒に住んでいた生活歴が大きい。これがもし若い年齢でグループホームやアパートに住んでいた経験があれば、多少は対応が易しくなっていたと思う。

 

稀に、60歳くらいまで無治療の統合失調症の人を親が同居して面倒をみていた事例があり、本当にその後の対応が困る。

 

ひきこもりの人は慢性進行性でないので、親が高齢になったとき、むしろ役立つことさえあるが、統合失調症の場合、慢性進行性なので年齢が高くなるにつれて親の本人の介護の困難さが増すのである。

 

今の日本の統合失調症に対する精神医療は、国民が平均して高齢化したため、今まで経験がなかったような状況になりつつある。

統合失調症の人の癌宣告と余命の話

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上のリンクは統合失調症の患者さんは癌の罹患率が低いと言う話である。統合失調症の人が癌にならないかというと、長生きすれば癌で亡くなる確率は高くなる。癌は老化と近縁にある疾患だからである。

 

現代社会では統合失調症の人は昔より遥かに長命になったので癌に罹患し癌が死因になるケースが増えているはずである。

 

リエゾンなどに行くと、身体疾患の高齢者で1度ないし時に2回以上癌になりそれぞれ治癒した患者さんを時々診る。癌は予後が悪いものとそうでないものがあり、平均的に言えば癌は治癒することも意外に多い印象である。

 

 

外来通院している統合失調症の人たちはスクリーニングを受けていない人も少なからずおり、発見された時には既にステージが進んでいるということが良くある。

 

うつ病で「いつも希死念慮があるような人」は癌検診を受けないのでリスクが高いと思う。希死念慮がある人が癌検診を受けることは、ある意味、行動が矛盾している。

 

ある時、癌家系の双極性障害の外来女性患者さんに、年齢的に癌検診を受けるべきと伝えたところ、素直に検診に行き、偶然とても小さい乳癌(1円玉のサイズ以下)が発見された。この患者さんは手術と化学療法で治癒したが、今後も注意しないといけないと思う。他の癌のリスクも高いと思われるからである。

 

統合失調症の患者さんの癌の特徴は、けっこうステージが進んでも一般の人より遥かに動けることである。また化学療法にも強いことが多い。また「癌宣告という大イベント」にも強いことに気付く。

 

実際、ある肺癌に罹患した男性の統合失調症の患者さんは肺癌の治療開始後、しばらく仕事を休んでいたが、全く体調的に元気なので職場に復帰し、化学療法を受けながら仕事を続けていた。しかも肉体労働である。そして、なんと亡くなる数日前まで働いていたのである。

 

彼は最後は抗癌剤のために食欲不振と体重減少が生じ、少しだけ死期を早めたように見えた。ただし抗癌剤の苦痛はかなり少なかったので(微熱のみ)、トータルの化学療法の良し悪しの判断は難しい。

 

それにしても、まさに超人である。

 

他、末期癌で全身転移があり、血液所見も絶句するくらい悪い統合失調症の患者さんが食思が極めて良く、全く疼痛もないと言うこともよく診る。

 

結局、このような癌罹患後の身体状況があるから、長生きするし亡くなる寸前まで動けるのであろう。

金子みすゞ

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2022年7月8日、安倍晋三元首相が銃弾に倒れ救命の甲斐なく亡くなった。67歳だった。先進国で今回のような暗殺事件は聴いたことがない。まして銃が規制されている日本の話である。今日は哀悼の気持ちも込めて安倍首相に関係が深い長門市の「金子みすゞ」の話をアップしたい。

 

金子みすゞは、大正時代末期から昭和の初め頃に活躍した童謡詩人。彼女の人生は不運と不幸が重なり、26歳で自殺で亡くなったが、彼女の作品は現代でもよく知られている。例えば学校の国語の教科書に採用され、東京大学の国語の二次試験にも取り上げられている。

 

 

数年前のお正月に長門市を観光している。これは金子みすゞ記念館の案内。記念館はお正月でも開いていた。なお、中原中也記念館はお正月は休館している。

 

 

金子みすゞのかつて住んでいた家は書店で、復元されて金子みすゞ記念館になっている。お店の奥に記念館がある。

 

 

店内に入ると、このようにかつて置かれていた書籍が当時のまま展示されている。

 

 

 

実にレトロな雰囲気がある店内。

 

 

発達障害を表現する際、良く紹介される「みんなちがって、みんないい。」は金子みすゞの作品である。

 

 

上の紹介文にあるように、金子みすゞの多くの作品はかなりの長い期間、見つかっていなかったのである。上の文章の中に「みすゞが512編の手書き詩集を雅輔と西條八十に贈っていたことを矢崎節夫さんが突き止め」とある。そのため、金子みすゞの著作権については今も微妙な扱いになっている。(青空文庫に収められていない)。

 

 

復元した書店内にはこのように金子みすゞの作品が展示されている。

 

 

 

金子みすゞの作品は、しんみりとした気持ちになるものが多い。ちょうど今の日本国民の気持ちと同じである。

 

彼女の作品を読んでそのような気持ちになるのは、おそらく彼女の不幸が重なった生活歴に由来するのだと思う。

 

 

 

 

 

金子みすゞは長門市仙崎の出身。漁村である。その辺りの道路や建物には彼女の作品が多く展示されている。

 

 

 

 

 

この「大漁」と言う作品も有名。彼女の未発表の作品が見つかるきっかけを作った作品でもある。

 

 

 

街中に展示された作品。

 

 

 

参考

長門市のホームページから

 

トリンテリックスは性機能障害が少ない話

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上のリンクはトリンテリックスの2020年4月頃の処方感触について紹介している。

 

患者さんは次々に嘔気のために止めていった。少なくとも日本人には、トリンテリックスは前評判ほど副作用が少なくて脱落が少ないとまでは言えない。(重要)

ちょっと驚いたことは、既に嘔気が出やすい薬、例えばSSRIやSNRIを服用中の人に上乗せでも嘔気が出現したこと。嘔気は導入の際にうまくいかない副作用の1つである。

 

この中で特に興味深いのは、「SSRIやSNRIを服用中の人に上乗せでも嘔気が出現したこと」だと思う。トリンテリックスの嘔気はセロトニンも一部は関係しているであろうが、どちらかというとドパミンの方が優位なのである。つまりトリンテリックスはセロトニントランスポーター阻害作用はSSRIに比べ弱い。

 

一般に長期にSSRIを服用し慣れている人はSSRIの種類を変更、増量した際に嘔気が再燃することはあまりない。慣れているからである。SSRIにトリンテリックスを上乗せした際に嘔気が出現することは、セロトニントランスポーター阻害作用で生じる部分は少ないとすれば、それ以外の作用が関係していると言える。

 

ドパミンが相対的に増えることで嘔気が出現する理由は、ごく簡単に言うと、プリンペランやコントミンのD2遮断作用で嘔気が改善することの裏返しである。

 

さて、今日のタイトル「トリンテリックスは性機能障害が少ない」について。

 

SSRIは性機能障害の副作用がしばしば出現することが知られている。しかし日本人の傾向であろうが、診察室でこの副作用をなんとかしてほしいと訴える人は少ない。性機能障害はどの程度生じているのかわかりにくい副作用である。

 

海外で発売されているブスピロンと言う抗不安薬があるが、主な薬理作用は5-HT1Aアゴニスト作用である。この作用は抗不安作用に加え若干の抗うつ作用を持つはずである。海外の適応は全般性不安障害などである。

 

トリンテリックスはデンマークのルンドベックにより創薬された抗うつ剤である。ルンドベックはかつてセレクサ(シタロプラム)というSSRIを創薬した歴史があり、本邦既発売のレクサプロ(エスシタロプラム)はこの派生薬である。セレクサは光学異性体としてR体とS体が混在しており、レクサプロはこの中からS体だけ取り出したSSRIである。

 

トリンテリックスの構造式は、3つの向精神薬の構造を持ち合わせている。その3つとは、セレクサ、ブスピロン、オンダンセトロンである。この中のブスピロンの5-HT1Aアゴニスト作用は性機能障害を緩和する薬理作用を持つ。そのような薬理バランスから、トリンテリックスはSSRIに比べ性機能障害が遥かに少ないことが想像できる。

 

トリンテリックスはSSRIに比べ、抗うつ作用の質的に良い部分を追加し、副作用を緩和する薬理作用を持ち合わせている。(SSRIは体が思うように動かないという人がいるが、トリンテリックスでは体が動くようになったなどの感想を聞く)

 

これはルンドベックが、セレクサをどのようにアップデートすればより効果的な抗うつ剤になるかを考えて創薬しているからであろう。

 

 

自律神経と顆粒球およびリンパ球の話

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今日の記事は精神科と直接には関係がないが、メンタルへルスを含め健康状態について参考になると思う。

 

ヒトは交感神経と副交感神経のバランスの上で体調を維持している。一般にストレスがかかると交感神経の過緊張になり、血圧上昇や頻脈を来す。この際に顆粒球は増加するが、これは顆粒球にはアドレナリン受容体があることと関係している。

 

ここで言うストレスとは、仕事上のストレス(多忙など)、怪我をすること、精神疾患も含まれる。統合失調症の幻覚妄想状態(幻聴が活発など)やうつ病ももちろん交感神経過緊張状態である。これらの身体環境では顆粒球優位な状態にあり、顆粒球の増加により組織障害を生じうる。組織障害とは、例えば胃潰瘍などである。

 

副交感神経優位な状態は、例えば風呂上がりのゆったりとした身体状況にある時にみられるが、この状況ではリンパ球優位となっている。リンパ球はアセチルコリン受容体がみられる。

 

ヒトは生涯にわたり顆粒球とリンパ球のバランスの変化が診られる。ヒトの出生直後は著しい交感神経緊張状態で顆粒球も極めて多い状況にある。イメージ的には真っ赤な顔で赤ちゃんが泣く状態である。

 

この出生直後の一時的顆粒球増加状態を過ぎると、20歳頃までリンパ球優位の状態がみられる。20歳頃に逆転し顆粒球が優位となり相対的にリンパ球が減り続ける。そして、老衰で死亡する時期には顆粒球ばかりになる。癌や肺炎などで亡くなったときに顔がどす黒く見えるのは、顆粒球の活性酸素による組織の酸化反応が関係している。

 

これらの顆粒球・リンパ球のバランスから、子供の頃は副交感神経優位な状態なのである。子供の頃に小児喘息が生じることがあるが、年齢が上がるにつれて次第に改善する理由は顆粒球・リンパ球のバランスの推移と関係している。

 

子供の頃は元々副交感神経優位な時期なので、ストレスにより副交感神経がより過緊張になり免疫系疾患を発症しやすくなるといったところであろう。

 

子供の頃、タクシーの排気ガスの匂いが好きな女の子の友人がいた。彼女はタクシーが家の近くに来ると、しばしば追いかけて後について行った。これは今から考えると、排気ガスの匂いが彼女を気持ちよくさせていたからだと思われる。

 

排気ガスのような有毒ガスは窒素酸化物である。これらが体内に入ると、組織から酸素を奪うため還元反応が生じる。これらは交感神経優位から副交感神経優位にするため、リラックスした気持ちになるのである。頭がぼんやりして体がゆったりする状態になると言ったところであろう。

 

実は、狭心症の薬、ニトログリセリンは窒素化合物で、同じように副交感神経を刺激して血管を拡張するメカニズムを持つ。

 

逆に過呼吸発作では、より生体内の酸化反応を亢進させるため、一層、交感神経優位になる。そもそも過呼吸発作はメンタルヘルス的にストレスがかかった交感神経緊張状態で起こっている。

 

これらのことを考えていくと、現代の免疫疾患(鼻アレルギーなど)の増加は排気ガスなどの環境汚染が少なからず関係していることがわかるであろう。

 

このように書きながら今気づいたのだが、僕の子供の頃は今よりずっと食品添加物や農薬の規制が緩かった。高度経済成長の中でこれらの健康への影響が問題視され次第に規制されていった歴史がある。実際、排気ガスの排出量も昔より改善している。

 

個人的には、今の親の世代の公害野放しの環境汚染の負の遺産が、現在の30歳前後以下の人たちのアレルギー疾患やメンタルヘルスに少なからず影響していると思う。

 

参考

 

 

 

 

 

 

雨宿りする地域猫

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散歩の時、ネコの鳴き声が聴こえるので探していると、高音の鳴くネコ発見。

 

ネコは雨に濡れるのを嫌い、雨の日にずぶ濡れになっているネコはほとんど見ない。この日は霧雨だったので、ここで十分だったのでしょう。

 

 

こちらも雨の日に雨宿りするぶちのハチワレさん。このネコも実によく鳴く。

 

ネコおばさんの話では、基本、外国産のネコはあまり鳴かないんだそうだ。野良猫は個々のネコで違うが、よく鳴くネコが多い印象。

コントミンやレボトミンで過呼吸発作が生じる話

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先日、「自律神経と顆粒球およびリンパ球の話」をアップしている。この記事を読んだ人は感じたと思うが、突然、終わっている。この記事は構想的には長い記事になるはずだったが、途中でなんとなく終わっても良い感じになり終了したのである。最近はこのような記事ばかりで、今のブログ記事は平均して短い。

 

今回、その記事にメッセージが送られてきた。送信した読者さんに了解を得たので、ここに紹介したい。彼の質問は、想像力を掻き立てられるものだと思う。

 

いつもブログを拝見しております。ご多忙のところ恐縮ですが質問があるのでメッセージを送らせていただきます。今回の記事で

「逆に過呼吸発作では、より生体内の酸化反応を亢進させるため、一層、交感神経優位になる。そもそも過呼吸発作はメンタルヘルス的にストレスがかかった交感神経緊張状態で起こっている。」

とありましたが、私も統合失調症の患者で一時期、外出するとストレスがかかり交感神経優位になるためか過呼吸発作を起こすことがありました。

一方で内的要因として、抗精神病薬を増薬すると過呼吸発作のリスクが著しく増加する現象が見られました。

特に、レボトミンやコントミンなどの強力なドーパミン拮抗作用のある薬を頓服として服用した際に過呼吸発作を頻発し、2年ほどにわたって就業などを含め日常生活を著しく制限された時期がありました。

一見、副交感神経優位になるように思えるレボトミンやコントミンを服用することで過呼吸発作を起こすメカニズムについて、先生はどのようにお考えになられるでしょうか?

その後、入院して主剤をロナセンからルーランに変薬したことで、頓服でレボトミンやコントミンを服用する必要がなくなり過呼吸発作はほぼなくなりました。

しかし、入院中の主治医からもその辺のメカニズムについては何の説明もなかったため未だに謎のままです。

ご回答いただけると幸いです。

 

このような内容である。元々、コントミンとレボトミンはフェノチアジン系の定型構抗精神病薬だが、身体への侵襲が大きいタイプの抗精神病薬である。レセプター的にはD2レセプター遮断作用より、それ以外の抗精神病作用も比較的大きいと考えられる抗精神病薬でもある。そのため一般的な非定型抗精神病薬より自律神経系も含め副作用が大きい。

 

 

上はコントミンの添付文書の副作用の部分を切り取ってアップしたものである。この中で、循環器系副作用に「低血圧」「頻脈」「不整脈」などが挙がっている。

 

過呼吸発作は心臓の活動と関係が深いので、頻脈を来すだけで不安を生じ過呼吸発作のトリガーになる。これら循環器系副作用はD2レセプター以外の作用(α1遮断作用)から来る。α1遮断作用は交感神経を遮断的に作用する。

 

僕の女性患者さんの話だが、彼女は仕事が終わり自宅に帰ってホッとしたタイミングで過呼吸発作が起こると言う。これは感覚的にはとても理解できる。仕事で緊張を強いられ、それが解けた瞬間に発作が生じやすくなったように見える。

 

過呼吸発作はこのように考えると、交感神経優位から副交感神経優位に位相が移った瞬間にも生じやすいと言える。

 

交感神経過剰の状態中に、何らかのショックで逆に副交感神経優位になる位相変化も日常で時にみられる。例えば「迷走神経反射」もそうである。(以下はグーグルで検索)

 

血管迷走神経反射は、緊張やストレスなどで起きる、血圧の低下、脈拍の減少などのことです。 「失神」とは、意識を一時的に失うことをいいます。 失神とは、一時的に脳への血流が減少することで意識を失うことを指します。 その原因として最も多いのが血管迷走神経反射によるものです。

 

このように考えると、自律神経系の側面から見ると、何らかの補償的な身体作用として過呼吸発作が生じている可能性もあると思われる。なぜなら、最初の記事で出てくるように、

 

逆に過呼吸発作では、より生体内の酸化反応を亢進させるため、一層、交感神経優位になる。

 

からである。迷走神経反射は自律神経系のある種の暴走である。このような反応があるため、自律神経系の発作は、時に奇異反応に見えることもある。(例えば上に記載した仕事が終わって帰宅して過呼吸発作が起こるなと)。

 

また、コントミンやレボトミンは光線過敏症が生じやすいが、もしこの副作用が起こると、過呼吸発作が起こりやすくなると思う。

 

そもそも過呼吸発作にはSSRIが有効だとすると、セロトニンが優位な状態で発作が減少すると言える。

 

例えば、クロザリルの治療中に強迫症状が出て来る患者さんがいる。なぜクロザリル処方中に強迫が出るかと言うと、クロザリルがセロトニン系をかなり遮断してしまうので、SSRIを服用することと全く逆の事態が生じているからだと思う。

 

 

コントミンやレボトミンのようなダーティーな薬は節操なくあれこれレセプターを遮断するため、クロザリルと同じような状況も生じやすいのであろう。一方、ルーランなどの非定型抗精神病薬の中でも、ピンポイントタイプの薬はその弊害が生じにくい。

 

また、ルーラン(ラツーダもそうだが)、セロトニンA1レセプターへの作用があるので不安感に治療的であり、過呼吸発作を減少させる作用を持っていると思われる。

 

 


夫婦や家族全員の主治医になること

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うちの病院では、新患を受ける際に医師の間で不公平にならないように割り振るようにしている。

 

以前は、オールカマーというか、患者さんが受診した日にそのまま新患として診ていたので、医師間で不公平が生じた。恐ろしいことに1日に8人新患があったりするのである。僕の1日の最多新患人数はたぶん4人か5人だと思うが、新患4人は数回どころではないくらいある。

 

リエゾンは1日に多くの新患が集中することがある。その理由は病院内の連携などなく、個々の科でバラバラに診察を求めるからである。そのようなわけで、1日のリエゾンの最多新患人数は8人である。リエゾンでは再診も診るので、まさに終わったらヘトヘトである。(もう若くはないし)。

 

精神科医に限らないが、勤務医は民間病院であったとしても公務員の感覚に近い。その理由はたくさんの新患を診たとしても、出来高で給料やボーナスが増えたりしないからである。ここがクリニックを経営している医師との大きな相違だと思う。

 

従って特定の医師に新患が集中するのは、不公平になるし医師間がギスギスした空気になるので宜しくない。新患が増えることは、自立支援法や診断書などの書類が増えることでもある。

 

上のようなことから、院内で公平に新患を割り振ることの重要さがわかると思う。

 

ところが、受け持ち患者さんから自分の家族を診てほしいと言うニーズが少なからずある。特に夫婦、親子、兄弟である。僕の場合、多くの外来患者さんを診ているため、このニーズのために更に新患が増えていく。

 

その患者さんが特定の医師にかかっている際、家族は他の医師が診るパターンはないわけではないが、主治医への信頼感が高ければ高いほど、同じ医師に診てもらうことを望むものだ。

 

そのような理由でうちの病院では、夫婦で診ているとか、親子で診ているというケースはかなり多い。例えば、家族4人全員診ていることも稀ならずある。

 

例えば夫婦で診ている場合、配偶者から見て本人が良くなっているのかどうかが、他覚的に意見が聴けるのが良い。本人だけ診ているのと大違いである。つまり家族を診るメリットはそこそこある。

 

そのような理由から、僕は患者さんの家族、親戚は同じ医師にまとめた方が良いと言う感覚を持っている。

 

元々紹介などなく、別々に初診し家族は他の医師が担当していると言うこともある。これもいったん主治医が決まったら変更することはなくそのままである。主治医が違うから非常に困るということはない。

 

この「家族を診てほしい」と言う依頼だが、主治医に期待に応えたいと言う気持ちが少なからず湧くため、快方に向かう期待値が少し上がっているような気がする。

 

その患者さんの経過が良いからこそお願いされるわけで、主治医への評価が低いなら、依頼するわけはないであろう。

 

もし、真にデジタルに新患を割り振るのであれば、家族全員が異なる主治医ということもありうる。

 

うちの病院では、上に記載した理由でそういう方針は採らないのである。

薬物療法の入院モード、外来モード

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精神科の薬物療法の話。

 

精神科では患者さんのいる環境のストレスが少ないほど薬物療法の効果が高くなる。つまりシンプルな処方で済むことが多い。

 

従って例えばうつ状態の外来患者さんが会社に出社しながら薬物療法を行うのと、仕事を休ませて同じ薬物療法を行うのを比べると、改善する期待値は後者の方が高い。

 

人により忍容性の差があるので、仕事を続けながら薬物療法を行ったために、処方用量が大きくなるとは限らない。同じ用量を服用したとしても、改善する規模と時間が変わると言ったところだと思う。

 

精神科薬物治療は、副交感神経優位な環境でより効果的になるという定石がある。会社に通い続ける環境が副交感神経優位のはずはないので、薬の効果が落ちると言うことなんだと思う。

 

最も良くないパターンは、休むべき時に休まず、外来でさまざまな薬が空振りになることだと思う。

 

これは副交感神経優位な環境だと効いたかもしれない薬も、緊張状態を強いられる環境だと効かない経過もあると言う意味である。明らかにその人に合わない薬や中毒疹などは、会社に行くか行かないかで差は生じにくい。

 

このような経過を診ると、副作用は出なかったが全く効果が見えなかった薬は、まだ可能性があると言える。つまり環境のパラメータで結果が変わると言ったところだと思う。

 

一般に精神科病院の入院環境は、より副交感神経優位な環境になるので、個々の薬物の正しい評価がしやすくなる。例えばアモキサン50㎎の処方で外来治療ではさほど改善しなかったが、入院治療では十分に有効という経過もある。外来から入院治療に移行した際、外来処方時の印象は重要だと思う。

 

入院治療では急性期に処方量が増えても、軽快するにつれて次第に処方がスリムになり、比較的少ない量で治療ができる確率が高い。しかし、当初の向精神薬の試行錯誤に時間がかかると、落ち着くまでの期間が延びる上に、スリムになるまでの期間が取れなくなるケースもある。

 

一方、処方をスリムにしすぎると退院してからが辛いことがある。これは家庭より入院の方が薬が効くからである。これは入院時は家庭より副交感神経優位になることが関係している。

 

普通、入院期間をかなり長期には取れないので、そこそこ改善して短い入院期間で退院させる患者さんも多い。この場合、処方は完成していないものの、退院後に少し悪化する経過も良くあるので、その時に調整すれば良いともいえる。これはある程度の改善が達成されているからできることでもある。

 

リエゾン治療で時々思うが、調子の悪いまま長時間中途半端な処方で経過観察していた患者さんは一度、リフレッシュした方が良い。(いったんその薬を中止し、他の薬をトライするなど)

 

例えばサインバルタ20㎎のまま半年以上様子を診て、あまり改善していないうつ病患者さんなどである。サインバルタの選択肢はほぼ正しいが、用量が十分ではないようなケースである。さほど改善しないままサインバルタ20㎎を継続することは精神科医ではありえない。(精神科医は、その薬が効かないのであれば増量するか他の薬に変更する)。

 

このようなことから、入院モードと外来モードでは処方や用量が異なる。それは治療環境が違うからである。

 

入院中にすっかり良くなったのに、退院した途端に悪くなったとしても、それは自然な経過のうちの1パターンのことも多い。

 

家庭に戻ったとき、入院モードの処方では耐えられなかっただけである。できれば退院直後に悪くならないほど十分な改善が診られてから退院する方が良いが、わかりにくいこともあるし、家庭でのストレスは個々の家庭により、あるいはその患者さんによりさまざまということがある。

 

仕事に復帰するとなると、更にハードルが上がるので、それに応じて処方変更されることもある。安定している期間が長いと、大きな処方変更なくレールに沿って復帰できる患者さんもいる。そのような時、驚くほど処方が整理されて、時に薬がゼロになる人もいるほどである(疾患によるが)。

 

僕の経験では、ゼロになる直前に服薬している薬は、ラミクタールかトピナのことが多い印象である。

 

近年はメンタルヘルスを患った患者さんの復帰の支援も昔より洗練されてきており、企業も徐々に勤務時間や出勤日数を増やしていくなど、うまく対応してくれることも貢献していると思う。

 

 

統合失調症治療の抗精神病薬最高量で効かない時の対処について

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統合失調症の薬物治療の際、最初の抗精神病薬で経過が思わしくない際に、その薬が合っていれば増量することで対処する。その薬が合っているとは副作用がそれほどではなく、幻覚妄想が改善していることである。もちろん意欲が出るなど陰性症状が改善しているケースもある。

 

忍容性の関係で最高量まで増量できない人もいるが、今の非定型抗精神病薬は副作用が少ないので最高量まで処方できる人が多い。副作用的に最高量まで増やしにくい非定型抗精神病薬は、リスパダール(12㎎)くらいである。

 

これは合わないと思える時、増量途中で少量であれば急に中断することもないわけではないが、普通は漸減しながら次の抗精神病薬を追加しつつ変更する流れになる。この際に一時的に併用になるが、精神科医は併用の際のその人の病状の変化を目撃することになる。

 

かつて非定型抗精神病薬がリスパダール(リスペリドン)しかない時代は、次の薬はセレネース、コントミンなどの定型抗精神病薬だった。非定型抗精神病薬で良くならないなら定型抗精神病薬を処方するしかなかったのである。

 

現在は非定型抗精神病薬の種類が増えたので、次にトライする抗精神病薬も非定型抗精神病薬のことが多い。

 

現在、最初に統合失調症の患者さんに処方される非定型抗精神病薬は、おそらくエビリファイ(アリピプラゾール)かレキサルティではないかと思われる。なぜエビリファイやレキサルティが選ばれるかと言うと、長期的な副作用が少なそうに見えるからである。この副作用とは主にEPSである。EPSについては以下の記事を参照してほしい。

 

 

D2レセプターに対する遮断作用が大きければ大きいほど、今は見えなかったとしても、20年、30年経てば顕在化する副作用のリスクが高くなる。現在、長期入院患者さんが多い病棟では、抗精神病薬の負の遺産のような事例が散見されるため、その結果は証明されていると言える。

 

エビリファイはEPSは少ないが、アカシジアだけは結構頻度が高い。それでもEPSの長期的リスクは低く見える。レキサルティはD2遮断作用はエビリファイより高い分、幻覚妄想にはより効果的であるし、バランス的に洗練されている非定型抗精神病薬だと思う。

 

非定型精神病薬は、統計的にどれを選んでも効果に差がない。その意味ではどれを選んでもそれが悪い選択肢とはみなされない。そのようなことから、いかなる薬から始めるかは精神科医の好みも少し影響すると思われる。

 

最初に選択される薬として、エビリファイ及びレキサルティを除けば、ジプレキサ(オランザピン)、リスパダール(あるいはインヴェガ)なども挙げられると思われる。ジプレキサやリスパダールは急性期の陽性症状を治療する際、抗精神病作用の期待値が高いため選択されていると思う。手堅い選択である。

 

なぜジプレキサやリスパダールから開始されることが多いかと言うと、統合失調症の患者さんが初診した際、ターゲットは幻覚妄想が活発など陽性症状だからである。急性期でしかも症状が重い時、大量のエビリファイ(24㎎)かジプレキサかリスパダール(あるいはインヴェガ)が選択されることが多いと思う。

 

このような重い病状の初診時に、シクレスト、ラツーダ、ロナセン(ブロナンセリン)などから始める精神科医は、よほどその薬を使い慣れているか、第1感でその薬が良さそうに見えた時と思われる。これらの非定型抗精神病薬は、陽性症状への効果は決して劣ってはいないので、これらの処方が悪い選択肢とはみなされない。

 

治療が難しい統合失調症の患者さんにはクロザリルが選択されることもあるが、副作用的な問題で初診から処方されることはほとんどない。この薬は原則、入院させて処方開始せねばならないこともある。

 

さて、エビリファイやレキサルティを上限まで処方し、結果的に経過が良くない場合、他の非定型抗精神病薬に切り替えるが、近年は2nd選択がセレネースになることはまずないと思われる。

 

エビリファイかレキサルティが合わない際に、2番目に処方される薬は環境も選択肢に影響する。外来患者さんであれば、比較的軽い薬、ラツーダ、セロクエル(クエチアピン)、ロナセン、ルーランなども選択されうる。それは外来の時点で、それほど陽性症状が重い状態ではないこともあると思われる。いずれにせよ、ここで中途半端に併用にせず、どれか1剤で治療を試みるのが一般的である。

 

入院患者さんであれば、病状が重いことが多く、エビリファイないしレキサルティが効かない場合、たいてい、ジプレキサ、リスパダール(あるいはインヴェガ)、シクレストくらいが2nd選択になると思われる。その理由は、これらの薬は鎮静作用が大きいからである。ジプレキサは筋注製剤もあるほどである。

 

エビリファイやレキサルティでは忍容性的に最高量まで増量できないような人は、リスパダールやジプレキサを処方した場合、とんでもない近未来が予測できる。そのような人は侵襲の少ない薬が選択されることも多い。他のピンポイントタイプの薬である。

 

ピンポイントタイプではないが、セロクエルを少量から増量するなども選択されるであろう。セロクエル(クエチアピン)はたいていの薬が服用できない人でも、750㎎まで服用できることがある。700㎎まで処方すれば非力なセロクエルでも効果はまあまあである。

 

非定型抗精神病薬でことごとくうまくいかない場合、主に2つの手法があると思われる。1つは、非定型抗精神病薬の2剤併用、もう1つはセレネース、コントミンなどの旧来の定型抗精神病薬の単剤治療である。

 

おそらく長期的には前者が副作用的に優れるので、定型抗精神病薬の単剤治療をするくらいなら、非定型抗精神病薬の2剤治療の方が良い。

 

特殊なケースとして非定型+定型の併用治療もあるが、この組合わせは1剤がエビリファイの場合、定型1剤より優れている感覚がある。その理由は長期的なEPSの原因がD2レセプターの過度の遮断作用にあり、一方、エビリファイはD2親和性が特別に高く、たいていの定型抗精神病薬を押しのけるからだと思う。

 

エビリファイ+定型抗精神病薬は、エビリファイのD2部分アゴニスト作用と定型抗精神病薬のD2以外のレセプターへの作用の総和になっているように見える。これはひょっとしたがそう単純なものではないかもしれないが、エビリファイ+トロペロンの2剤併用ではそのように見えることが多い。

 

この考え方は非定型+非定型の2剤併用でも同様である。1剤にエビリファイがあれば、もう1つの非定型抗精神病薬の効果を修飾し、もしかしたら20~30年後の遅発性EPSを緩和できるかもしれない。このエビリファイを含む併用は相補的ともまた異なると思う。

 

例えば、年配の女性患者さんがセレネースを2㎎だけ長期的に処方されていて、口ジスキネジアやメージ症候群などが生じている際に、エビリファイ6㎎くらいに変更した際、十分に時間が経つと、全てそのような副作用がなくってしまうことがある。それらは決して非可逆性ではないことがわかる。また可能なら長期的なEPSを避けることが重要なことも理解できると思う。

 

理想は非定型抗精神病薬単剤治療が良いが、2剤にならざるを得ない際、単に抗精神病薬増量にならないような処方を心掛けるようにしている。2剤併用でも増量的な併用だと長期的な影響は予測しにくく、理想的ではないことがあるからである。

石垣に登り鳴いているキジネコ

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こういう風にひっきりなしに鳴いているのは、何らかの意思表示なんでしょうなぁ。

 

ネコと目が合う。尻尾が何故か短い。

 

 

このネコは昨日初めて会ったのだが、そこまで警戒感はなかった。よく見ると避妊手術をされていない。(よく見ると耳をカットされている)。

 

単科精神科病院の医学生の支援の話

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今日は少し特殊な記事。

 

国立大学医学部では貧困家庭など金銭的援助が得られない学生が一部にいた。例えば母子家庭の学生などである。あるいは在学中に家族が亡くなった学生も含まれると思われる。今日の記事の内容は僕が在学中には全く知らず、精神科病院に勤めるようになって知ったことである。

 

このような学生がいかなる金銭的計画で入学したかは不明だが、当時は学費も比較的安く、アルバイトで学費と生活費を得て卒業しようと思ったのかもしれない。

 

単科精神科病院へアルバイトや常勤するようになって、単科精神科病院のオーナーが、少なからずこのような学生を援助していることを知った。例を挙げると、学費、生活費の全額を援助するなどである。その総額は当時でも400~500万円くらいになったと思う。これは援助期間にもよる。

 

その返済だが、借金として支払わねばならないのだが、医師になった後、当直に来てくれるなど出世払いで良かったと思われる。従って精神科病院から援助を受けていたからと言って、精神科医になることを強制されるわけではなかった。(ただしこれも病院による)

 

当初、どのようなルートでその契約のようなもの?が結ばれていたか知らなかったが、どうやら担任の教授が精神科病院に「このような学生がいて金銭的に困っているので援助してもらえないか?」などと話を持ち掛けていたようである。これは何人も援助を行っていた単科精神病院の院長夫人が話していたので確かな情報である。

 

このような学生は滅多にいないので、なんとか金銭的理由で退学にならないように配慮し、援助してくれる病院を探していたものと思われる。そのような病院が単科精神科病院なのである。いかにお金の余裕があると思われていたかもわかる。

 

僕は精神科医なので、そのような援助を受けてその後精神科医になった人を数人知っているが、強制されなくても、精神科は人気のある科なので結果的に精神科医を選択した学生も多かったと言える。そのような人は数年、その病院に勤めていた経歴を持つ人もいる。数年働いてクリニックを開業し、既に引退している精神科医も知っている。

 

おそらくだが、精神科病院は僻地に立地していることもあるため、そのような援助をしたことで、多少の見返りはあったと思われる。僻地では当直に来てもらえるだけでも大助かりである。当時は、今ほど交通事情が良くなかったこともある。

 

ところが、そのような借金をし踏み倒そうとした不届き者の精神科医も知っている。彼は僕の同級生で母子家庭だった。このタイプの援助の良い点は、育英会の奨学金に比べ留年しても援助が止まらないし、毎月の金額が大きいうえに返済してしなくても契約書自体がないため、保証人が迷惑するとか、差し押さえが来るなどがないことである。

 

その友人(と言うほど親しくなかったが)は、最終的に数年留年し、その後国試も数年落ちてやっと医師になった。卒後4~5年経ち、どのようになっているか尋ねたところ一向に返済する気がないようであった。

 

僕は、その当時、既に援助事例がいくつもあることを知っていたので、あまりに常識やオーナーに感謝する気持ちがないことを指摘し注意した。そのようなことがあれば、病院が援助をやめてしまうこともあり得るからである。結局、彼は病院に呼び出され借用書のようなものを書かされたのであった。僕が知っているのはそこまでで、その後どうなったのか知らない。

 

そういう人は滅多にいないと思っていたが、実は自分の病院のオーナーも同じような踏み倒しにあっているらしい。

 

またちょっと異なるパターンとして、地方の精神科以外の病院の援助を受けて、その後、外勤(アルバイト)に行った精神科病院のオーナーに立て替えてもらったという事例もある。単科精神科病院からすると、まだ医師になっていない学生に援助するより、はるかに見返りが大きいので当時は喜んで立て替えていたと思う。

 

現在、国立大学の入学試験では、卒後その地方で9年間くらい働かないといけない義務がある「地域枠」と呼ばれる少し最低点が低い合格枠がある。これも学生からするとけっこう重い制約だと思われる。自治医科大学と同じようなルールだが、異なるのは国立大学なので援助の総額が低いことだと思う。

 

しかしまだ入試を受けていない時期に、援助してくれる病院へのアクセスは難しいともいえる。

 

当時、国立大学医学部では本当に金銭的に困窮している家庭の学生がいたが、少なくとも金銭的理由で退学した人がいなかったのは、このようなパイプが存在していたからと思う。

 

このような話はまだ良い。意味が分かるからである。

 

当時の精神科病院で僕が理解できなかったのは、重い精神病の患者さんの子供の援助である。例えばある生活保護を受けている精神病の子供が「○○になりたい」と言った話を病棟などで聴く。その話を受け入れて、高額な学費を要する大学や専門学校に行かせてやるなどである。僕から見ると、同じ援助するにしても、その病院に勤めている看護師さんの子供に援助する方がまだ福利厚生になっていると思う。

 

このような援助の良くないところは、学費だけでなく生活費も含まれるので、その援助される総額が決まっていないことである。このような援助はやがて子供の度々のお金の無心になり、学校も続かず退学になったりしていた。これはそもそもこうなることが、事前に予想されていた。看護師さんたちはその子供がいかなるパーソナリティなのか病棟で見ていたからである。

 

これらの理解できない行為は、援助する人のある種の承認欲求ではないかと考えている。

 

(おわり)

休日の朝食

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今年のお盆は帰省せず自宅で過ごしている。上は休日の僕の朝食。肉、ハム、ソーセージ、卵とかないのは、お盆だからでなく、毎週休日は同じである。平日は上のメニューで、クロワッサンとヨーグルトがなく、少なめのサラダとトマトジュース、ヤクルト1000である。

 

仕事のある平日は昼食を病院で食べるので、野菜サラダくらいで良い。この野菜サラダは前日の夕食に出されたものだが、夜にサラダを食べると夜間頻尿の原因になるので翌朝食べる。おそらく、きゅうり、タマネギ、キウイなどが頻尿に悪いんだと思う。それまでは朝はトマトジュースだけだった。休日にクロワッサンを食べるのは、この朝食以後、夜まで食べないからである。

 

このような感じで食事を少なめに摂っていても体重は78㎏くらいである。一時、新型コロナワクチンの副反応の体調不良で脂ものなどの食事が摂れなくなり体重が激減し、約1か月で72㎏まで減少したが今は元に戻っている。それでもワクチンは4回目まで接種している。

 

僕の場合、1回目~2回目のインターバルが短かったこともあるのか2回目に大きな副反応が出たが、3回目、4回目はたいした副反応がなかった。発熱もなく局所の疼痛だけである。これはある種の免疫寛容だと思うが、免疫寛容には良い意味と悪い意味がある。

 

最近、僕の外来患者さんに、ワクチンを全くしておらず、新型コロナ感染した人がポツポツ出てきている。これだけの大流行になると、いくら引きこもり生活を送っていたとしても、いずれ感染するリスクは高くなる。今のところ、感染のためにワクチンをしていない患者さんで亡くなった人はいないが、相当にきつかったとは聴く。体温が41度まで上がったらしい。もう40歳超えていて40度超えるのは辛い。

 

そもそもワクチンをしていた人が風邪くらいかというとそうでもない。もう少し重い。いわゆるインフルエンザクラスの辛さはあるようである。

 

現在のワクチンは今のウイルス株に比べ感染させない効果は低くなっているが、重篤にならない効果が保たれているので意味がないとは程遠い。今の重症者(厳密な定義とは異なる)は2種類あり、1つは感染のために基礎疾患が重くなっている人。つまり癌などの末期で新型コロナ感染のために死亡してしまう人たちである。このボリュームで感染が広がると、この経過になる人の数も多くなる。

 

もう1つはワクチンをしておらず肺炎を来しICUが必要な人たち(定義に近い)。ワクチンをしているかどうかはリトマス試験紙みたいなものである。

 

 

 

上のような情報がTwitterのTLで挙がってくる。

 

今年のお盆は、史上最高の感染者数でも帰省などの制限はせず、高校野球も普通通り行われている。政府から国民にはワクチンで身を守り、通常通り経済を回していきましょうと言うメッセージが送られているといった感じである。

 

友人で毎年数回、軽井沢に行く人がいる。軽井沢は良く知られた避暑地であるが、僕は何県にあるか知らなかった。おそらく富士山の近くで箱根あたりかと思っていたら、実は長野県にあったのである。行くだけで大変である。行ったことがないが、湯布院でもう少し避暑地のようなイメージを持っている(だけ)。

 

なにしろ新型コロナの感染者が出始めて飛行機に乗ったことがない。これは大変なことである。もちろん海外にも沖縄にも行けない。JALのマイルが16万マイル以上あったので、失効しないように数か月ごとに商品に替えている。お肉とか。

 

現在、海外に行きにくいのはメジャー以外の航空便が長く欠航していることあるが、水際で色々日本の側の制約が大きいのもある。海外で感染して療養するのも大変だし、もしそうなったらうんざりである。

 

そのようなことから、今年は実家に帰らないなら自宅で大人しく生活する方針にした。9月に既に旅館を予約しており、母親と一緒に旅行する計画である。

 

そういえば、お盆にうなぎを食べに行った。うなぎはお盆に食べない方が良いと言うのがあるが(生き物なので)、元々そこまで考えないし、逆にお客が少なくて良いかも?と思ったからである。これは嫁さんの希望で、たいていうなぎを食べに行くのは嫁さんの企画である。

 

ところが、ざっぱーんで、空いているどころか、駐車場には案内のアルバイトのおじさんが2名もおり、お店の中は3密どころか4密だった。うなぎはお盆は避けるなんて過去のことだったのである。

 

たいていうなぎ屋には高齢者しかいない。うなぎは高価だし、そのお店は高級店だからである。いつもは子供連れの家族がまずいないので安心しききっていたが、この日は違っていて大変な事態である。ここ2年間、このようなリスキーな場所は初めてだった。だって、すぐ隣のテーブルで子供たちが食べながらお喋りしまくっているのに。何が危ないといって会食ほど危険な場所はそうない。

 

帰ってから、嫁さんが「ごめんね」と謝り、いつもなら支払いはしない嫁さんが料金をくれた。それぐらい予想外な事態だったのである。

 

お盆のちょっと前に従妹にふるさと納税でお肉を送ったら、沖縄から返信が来た。なんと超長期で沖縄に遊びに行っていると言う。彼女は僕より10歳も年上なのである。「なかなかたくましいじゃないですか?」とメッセージを送ったら、こんなに良いところとは思わなかったと凄く楽しそうにしている。沖縄に友人がいて、お世話になっていると言うが、米軍基地にも入っていると言う。お礼にパッションフルーツを送ってくれた。

 

ところがである。彼女が帰郷後、その一緒に遊んだ友人から電話があり、新型コロナに感染したと濃厚接触の連絡があったのである。自宅待機したが、なんと5日も経って発病したのであった。今のオミクロン株は潜伏期が短いと言われているが、発病までに5日かかることもある。症状そのものはワクチンをしていて大したものではなかったらしい。

 

そういえば、若い頃、僕も嘉手納ベース内のおそらくメキシコ料理店?で食事をしたことがある。嘉手納ベースは非常に大きく、アメリカ的なレストランがたくさんあり、かなり異国情緒がある場所である。当時は、米軍基地には一般の日本人は関係者同伴なら入ることができた。今はどのようになっているかわからない。

 

なお話が変わるが、このブログは先月16年を超えた。なんとなくだが、最近はそう面白くもない記事をダラダラ書き続けている。

 

流石に若くはないので、発想と言う点で衰えが来ているらしく、最初のイントロに時間がかかる。書き出せばそのまま流れに沿って書けるが、そこまでがややストレスなのである。

 

それと最近は、新型コロナの流行のためにホテルなどで講演会もなく、インスパイアされるものが減っているのもある。ZOOMでWEB講演会はあるが、聴くのが難儀である。少なくとも僕はそうである。

 

なかなかこの状況が変わらなそうなのも困ったことだと思う。

 

参考

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カロナールやロキソプロフェンが品薄になっている話

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この規模で新型コロナ患者が増えると解熱剤が品薄になる。カロナールとロキソプロフェンがそうである。これらはいずれも納入しにくくなっている。うちの病院では数日前納入されるはずだったカロナールが納入されなかった。

 

この2つは同じように見えるが、カロナールの方が新型コロナ感染症には処方されやすい。その理由はいくつかあるが、1つはカロナールはロキソプロフェンより副作用が少ないことがある。カロナールは幼児や子供にも処方しやすい点は大きい。

 

ざっくりいうと、ロキソプロフェンは腎臓に負担がかかり、カロナールは肝臓に負担がかかる。従って腎臓が弱い人はロキソプロフェンはなるだけ服用しない方が良い。ロキソプロフェンは腎血流が悪くなると言われている。またロキソプロフェンは胃腸障害も起こりやすい。

 

しかも、これらの解熱剤は今のように感染が広がっているとしばらくは品不足が続くようなのである。新型コロナ感染症が出現当時、マスクが不足したが、薬はマスクのように急に増産はできない。

 

実はカロナールもロキソプロフェンも半減期が短いため作用時間も短時間になっている。しかもロキソプロフェンの方が少し短いようで、今回のような結構高い熱が出る感染症にはカロナールが選ばれることもあると思う。患者さんは長く効くのでカロナールを希望する人がいる。

 

また、カロナールが不足しやすい理由に、新型コロナのワクチンも影響している。前回ワクチンの接種で熱が出たような人はカロナールを事前に準備している。

 

カロナール、ロキソプロフェンは市販薬として薬局で購入できるので、以下のリンクも参照してほしい。ここにはカロナールとロキソプロフェンの作用、リスクの相違が紹介されている。

 

 


灰色ネコの動画

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ロシアンブルーのような美しい灰色のノラネコ発見。ネコ的には灰色はブルーである。左耳がカットされており、避妊手術を受けたメスネコと思う。地域猫なので人に慣れているんだろう。

 

寝転びポーズをとってくれたり、すぐ目の前で欠伸や背伸びをしていた。

 

単一の灰色でミスカラーもない。ロシアンブルーの本物は見たことがあまりないので、どのくらいそれっぽいのかわからない。

 

このネコはノラネコの割にこの暑さの中、あまりくたびれていない。

 

テーマを整理しています(現在工事中)

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アメブロのテーマは上限が100個である。このブログは当初、新しい向精神薬が出る度にテーマの項目を追加していたが、すぐに100個に到達し新しい向精神薬がテーマに登録できなくなった。

 

そのようなことから、レキサルティ、ラツーダは新しいテーマにならず、レキサルティはエビリファイ、ラツーダはルーランのテーマに居候していた。

 

今回、古い3環系抗うつ剤、アナフラニール、トフラニール、トリプタノール、アンプリット、ノリトレンを「旧来の3環系抗うつ剤」にまとめている。

 

 

この中で最も記事が多い抗うつ剤はなぜかアンプリットである。

 

ただし、アモキサンは存在感が大きいことや11個も記事があるため3環系抗うつ剤ではあるが独立したテーマとしている。4環系抗うつ剤のルジオミール(マプロチリン)も同様である。

 

またレスリン(トラゾドン)は、3環系でも4環系でもSSRIでもない上、現在もリエゾンで有用な抗うつ剤であるため独立したテーマとしている。

 

このような経緯で少しテーマが追加できるようになった。この結果、トリンテリックスとシクレストが新しいテーマとして独立している。(これまでは向精神薬のテーマに入っていた))

 

 

 

また、レキサルティはエビリファイのテーマに、ラツーダはルーランのテーマに入っていたが今回独立したテーマとしている。

 

 

 

レキサルティはなんと28個もエントリがある。このブログはレキサルティは主観的な内容も含まれるが情報が多い方だと思う。レキサルティはまだ発売後1年も経たないうちにリエゾンでも特別に頼んで採用してもらい処方を始めている。僕にとって使い始めるのが遅かったラツーダと比べ大違いである。

 

まだ今後、あまり重要でないテーマをリストラし、今後、ベルソムラ、デエビゴ、コンサータ、イフェクサーなども独立したテーマとするつもりである。

 

なお、今はジェネリックの方が多く処方されている向精神薬の項目をどのようにするか読者の皆さんに意見を聴きたい。

 

セロクエル(クエチアピン)

ジプレキサ(オランザピン)

 

などを単に、クエチアピン、オランザピンとする方が良いかである。パソコンで見てもらうとわかるが、上のように表示すると見辛いというが、ばたばたして見た目が美しくない。

 

今回、整理してわかったことはテーマの変更をしても、個々の記事の見た目に大きな変化が生じないことである(パラグラフの間が間延びするなど)。以前はそうではなかった。そのためにテーマの整理を躊躇っていたのである。

 

今後、少しずつテーマを整理するつもりである。

 

 

ロゼレムはなぜ夜間頻尿に効くのか?

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過去ログにロゼレムは夜間頻尿に効くと言う記載がある。

 

 

このリンクカードから抜粋。

 

また、高齢者の頻尿に対しロゼレムは治療的に働く。アリセプトを服用していて酷い頻尿になっている女性に対し、アリセプトを中止し、メマリー、ロゼレム、ルーランの1mgでかなり頻尿が改善した患者さんがいる。ルーランはこだわり、強迫にも効く上、少量だと副作用もほとんどないので便利である。

 

元々、高齢者でなくても夜間に何度も起きると頻尿の原因になる。寝ている時より、起きている方が尿の量が増えるからである。不眠と夜間頻尿にはニワトリと卵のように相互に関係が深い。

 

高齢者ではさまざまな理由で夜間頻尿になりやすい。これらの理由として、高齢者では眠りが浅くなること、過活動性膀胱、男性では前立腺肥大症などが挙げられる。これらは膀胱に十分な畜尿ができなくなることと関係している。

 

なぜロゼレムが夜間頻尿に有効かと言うと、まず、睡眠の質を改善することが治療的に作用する。

 

元々、メラトニン血中濃度と抗利尿ホルモンは関係が深い。高齢者は加齢に伴い血中メラトニン濃度が低下し、ひいては夜間の抗利尿ホルモンが低下している。その結果、夜間の尿産生量が増加し頻尿になる。

 

元々、ロゼレムはメラトニン以上にメラトニン的である。ロゼレムはメラトニンにブーストがかかった薬である。以下は上のエントリから抜粋。

 

ロゼレムはメラトニン受容体のアゴニストだが、厳密にはMT1アゴニスト作用と MT2アゴニスト作用に分けられる。MT1アゴニスト作用は視交叉上核神経活動の抑制や睡眠のプロモーションの効果を持ち、結果的に睡眠の質を改善し深くする。一方、MT2アゴニスト作用は、位相変動作用を持ち、後方にずれた睡眠位相を前方に移動させる(睡眠の後退などを改善)

 

このMT1およびMT2受容体だが、ロゼレムのMT1受容体への親和性はメラトニンの6倍、MT2受容体への親和性は3倍に及ぶと言われている。

 

ロゼレムのこれらの夜間頻尿への効果だが、処方したその日にはあまり効かない。次第に効果が発現するといった印象である。たいてい1週間目には多少は良いと言った感じである。また機序はよくわからないが、時間が経つと上記の夜間尿量の減少に加えて、膀胱容量の有意な増加がみられると言われている。

 

高齢者の夜間頻尿に伴う転倒による怪我、および介護者(主に妻)の介護疲れのため自宅での生活が立ち行かなくなることは近年良く見られる。

 

高齢者へのベンゾジアゼピン系の眠剤はこれらを悪化させる(特に筋弛緩作用)ため、ロゼレムに変更することで非常に良い経過になることがある。例えば、夜間数えきれないほどトイレに行っていたのが、ロゼレムに変更することで2回ほどになるなどである。2回と言うのは定義的にはまだ夜間頻尿だが、5回以上言っていた高齢者からみると大違いである。

 

ロゼレムと言う薬には謎が多い。ロゼレムは半減期が極めて短く(約1時間)、作用している時間はあまり長くない。意外に翌朝に眠さが残る人がいるし、あの短い半減期でこのような夜間頻尿の改善効果が診られるのは、何らかの複雑な作用から来ると想像する。

 

近年、高齢者にはデエビゴが処方されることが多くなったが、これは入眠作用がマイスリー並みに強いためである。しかし今なおロゼレムは有用性が高い薬だと思う。

 

参考

 

 

 

微量のロナセンで発達障害の症状が改善する理由

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微量のロナセン(ブロナンセリン)を処方することで、発達障害の症状が改善することがある。

 

ここで言う発達障害とは、主に知的発達障害を指しているが、ASDやADHDの症状にも同様に好影響を与え得る。とりわけADHDの人。

 

作業療法などで綺麗に積み木を並べるプログラムがあったとしよう。ある発達障害の人が集中力や正確さがなく、バラバラにしか並べられず、指導してもうまくならない。

 

このようなケースでもし西洋薬を処方するとしたら、ADHD系の薬が選択されると思われる。普通はストラテラ(アトモキセチン)である。

 

抗精神病薬で良さそうな薬は第1感で、レキサルティ、エビリファイ、ロナセンくらいだと思われるが、前者2剤よりロナセンの方が深く効くように見える。少なくとも感覚的にはそうである。

 

例えば、上の症状(上手に積み木が並べられない)などの症状に対し、ロナセンの2㎎かそれ以下の用量を処方すると様変わりし、落ち着いて綺麗に並べられるようになる人がいる。ただし用量が多すぎると、単に副作用が出るだけである。

 

今なら、ロナセンテープを切って僅かの量を処方することも可能である。例えば、ロナセンテープ20㎎を1/4枚貼ると、微量のロナセンを門脈を通過させることなく処方できる。(注意:製薬会社は切って貼付することは推奨していない。用量が不正確になるからであろう)

 

ロナセンテープは剤型㎎の1/5程度の効果を持ち、20㎎の剤型だと4㎎相当なので、1/4枚だと1㎎相当である。しかもロナセンテープの1/4枚(1㎎)は門脈を通過しないので内服よりエフェクティブである。この理由はロナセンテープ貼付はピュアなロナセンが処方できるからだと思う。

 

そもそもロナセンテープは80㎎上限なので、その1/5の16㎎相当しか処方できない。つまり内服より低い上限になっていることを見ても、エフェクティブなのがわかるであろう。

 

なお、ロナセンがなぜ発達障害に対してタスク能力を改善させるかだが、おそらくD3レセプターアンタゴニスト作用によるものと思われる。

 

ロナセンD3アンタゴニストは、遂行機能、学習、認知機能の改善などに関与していると言われている。

 

作業療法中、発達障害の人が僅かなロナセンテープにより、うまくタスクをこなせていることを目撃した時、D3レセプターがどのような意味を持つのか、目視できることに気付いたのである。

今から医者になる人は大変?

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今から医者になる人とは、医学部の学生さんだけでなく、小中高生の若い人も含めている。

 

医者になるためには今も昔もある程度以上の学力が必要で、入学するまでに必要な労力(勉強に費やす年月)は平均的な他の学部より大きい。高卒後3浪以上すると一般の学部では何かと不利になるが、医学部はそれほどハンデキャップにならない。実際、3浪して医学部入学しある国立大学の内科教授になり、それが自慢の教授がいた(実話)。

 

逆に3浪以上までしてしまうと、医学部進学の理由になると言える。ハンデを解消するために、一発逆転が可能だからである。

 

このような理由で、ある時期、医学部受験生に多浪生が多くなったこともあり、近年は面接なども採用されている。この結果、多浪生がある程度不利になるのもやむを得ない。例えば45歳で合格した場合、順調でも医師になるまでに50歳を超え、一人前になる前に体を壊したりし働けなくなる確率が高まる。国家財政から見ても同じ税金を使い医師を養成するのなら、若ければ若いほど良いと思うのが自然である。

 

1浪1留くらいだと医学部だと問題にならないが、一般の学部では就職時にやや心証が悪くなる。そもそも遅れて社会に出たとしても定年は今は65歳くらいなので、トータルの就労期間が短くなり退職金や年金が減額になる。浪人や留年はやはりハンデなのである。

 

医師の場合、定年でぴったり退職しその後、何もしない人は稀なので、定年はあってないようなものだ。これが良いか悪いかはまた別な話である。

 

僕が医学生の頃、ある病院の経営者と話したことがあった。彼によると、これから医師になる人は大変であろうが食っていけないことはないだろう、という見解だった。

 

僕の一部の友人はやや悲観的で、開業は借金が大変なので到底無理、勤務医をしながら細々と暮らしていくしかないと話していた。ところが、自分の同級生で医院を開業した人は結構いるし、開業など無理と言っていた友人は大学教授や中核公的病院院長などにおさまっている。これは悲観的だったこそ、逆にそういう進路になったと見ることも可能だ。

 

重要点

学生時代の将来の楽観、悲観はその人の将来の地位に影響する。(かもしれない)

 

僕の場合、将来に対し楽観も悲観もなく精神科医になりたいというのはほぼ決まっていたので、迷いはかなり少なかった。もし来世があるとしたら、またぜひ精神科医になりたい。そう思う理由は、精神科医ほど面白い職業はないからである。ここで言う「面白い」は学問的興味とやりがいから言っている。過去ログのプロフィールにはそのあたりの話が出てくる。

 

さて、今在学中の医学生さんは、僕が在学中に比べ一層先が見えないイメージがある。あくまで想像だけど。第一、人口比で医師養成数が増えているし、近い将来の国家財政を考えると、今の給与水準が維持される保証などないからである。

 

 

医師の働き方も徐々に変わってきているようで、業者に日当直医師を依頼すると、時々プロの当直医師が斡旋されてくる。このタイプの医師は常勤の病院がなく、おそらくアルバイトのみで生活している。これでも結構な月収になるのである。日勤や当直でどのくらいのアルバイト給与になるかは、どの専攻科や病院の立地により多少は違うが極端に低額ということはない。その理由は低額だと誰も来てくれないからである。

 

このような医師は、今風に言えば、既にプチfireしているようなものだ。

 

ただし人口比で医師が増えているという事は、将来、この辺りの需給が変わってくるリスクはある。実はこのようなことは僕が医師になった当時から言われていたことでもある。

 

近年は金銭的な優位性を重視し専攻を決める医学生もいるようだが、基本、その専攻科が好きでないと長くはやってられない点は注意したい。専攻科を間違うと向上心にも影響が出るし、それはひいては患者さんにもマイナスになりかねない。

 

医師免許は基本的に歯科以外どの科でも選択できるが、途中で専攻科を変更する事は長期ではスキル的なハンデになると思う。想像してみてほしい。ある新入医局員を遥かに経験年数が少ない医師が指導しなくてはならないのである。

 

精神科の場合、転科してくる人には2種類あり、最初から意図して例えば救急や一般内科を勉強してから入局する人と、他の科で壁にぶち当たり辞めて精神科に来る人である。僕のオーベンは後者の評価が非常に低かったが、その理由は彼らを落ちこぼれのように見なしていたからだと思う。それでもなお、オーベンは来てくれないよりは遥かにマシと話していた。兵隊は多ければ多いほど良いからである。

 

現在の研修医制度は、前者の選択を強制しているとも言える。これも時代の要請なのであろう。

 

時代は変わり、今は医局の雰囲気や上級医がダメすぎる(例えば保身やパワハラ気質など)くらいの理由で、転科や医局を辞める心理的プレッシャーは小さくなっているように思う。

 

これは以前は個人的に良い点、悪い点双方あると思っていたが、今風だと個人の自由というか選択が開かれていて、専門職らしいと考えるようになった。

 

重要なのはこれは精神科に限らないが、ある程度の年数、集中的にその専攻科の臨床を学ぶ必要性である。そうでないと長くやっていく基本的知識が身につかないし、中途半端な医師になってしまう。これは例えば精神科の指定医とか専門医を取得しているという次元のことを言っていない。以下は高須クリニックの求人についての注意書きである。これは精神科でも参考になる。

 

 

このブログは既に16年くらい続いているが、たまに、これこれの状況にある患者さんにどのような処方が好ましいかアメブロメールで聴いてくる精神科医?がいた。たいてい女医さんで、どのように治療すれば良いかわからないような印象だった。何度もさまざまな症例について同じような質問をしてくるので、こちらも呆れて、「このブログはそのような目的で続けているわけではない」という感じで返信を断っている。このブログは現在治療中かこれから治療を始めるか迷っているような人たちやその家族向けに発信しているからである。

 

おそらく精神科医局的な教育を受けていないのではと思ったが、ひょっとしたら他科を専攻していて、出産育児などでブランクが生じ、元の専攻科では復帰が厳しいので、簡単にできそうな単科精神科病院に勤めている(あるいはパート)のでは?と想像した。

 

そのような事は同じ病院の上司に聴くべきであり、もしそのような医師がいないとしたら、大変な限界単科精神科病院であろう。このあたりの記載は女医さんをディスる意図はない。

 

医師に限らず何でもそうだが、医学を学ぶことには根気が必要である。僕に取り柄があるとしたら、精神科に対する学問的興味がいつまでも保てている事だと思う。実は、この根気という特技は仕事に限らない。

 

タイトルに戻るが、医師という職業が将来どのように評価が変わっていくかわからないが、結局は自分次第なのだと思う。

 

ある精神疾患の人を治療した時、指定医を取ったばかりの精神科医と30年経験のある精神科医の診療報酬は同じである。こんな事は普通はおかしいが、日本は良くも悪くもそういう国なのである。

 

特に若い医師がスキルという点で考えが甘くなるのは、多分そのような医療制度も関係している。なんだかんだ言って、日本の医師は高級公務員的な存在だと思う。医師にコスト意識が低いのもそれが影響している。

 

これ以上書くとより老害的になるので、この辺りでやめておく。

 

参考

 

 

 

 

 

この記事で、それだけはやめておけ、と助言した友人は今は教授になり、2人の子供も既に医師になり働いていると言う。久しぶりに会ったら、あまりにも教授っぽいのでびっくりした。若い頃の面影などなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

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