精神科リハビリ的治療としてデイケアが挙げられる。そのほか、治療状態のチェックや生活状況や服薬状況の把握などのため訪問看護が推奨されている。
一般にデイケアに参加し訪問看護を受けている人は、そうでない人に比べ再発率や再入院時の治療日数が短くなると言われている。
これらは長期的には重大と言ってよい。
その理由は、特に統合失調症では再発すると抗精神病薬の治療反応性が落ちることが稀ではなく、抗精神病も再発以前より多くの用量が必要になる上、そのために副作用が増加し、ひいては服薬中断に繋がり病状の不安定化、慢性化、荒廃に至りやすいからである。
だから、統合失調症の治療は服薬遵守が非常に重要なのである。
どのような要因で病状が進行するかというと、幻聴が消失しないこと、被害妄想が残遺すること、終日茫呼としてまとまったことができないなど陰性症状にの悪化が挙げられる。これらは日常の単純なこと、例えば入浴する、歯を磨く、新聞を読む、トイレに入って排便後トイレットペーパーできちんと肛門を拭くなどが挙げられるが、このようなことをしなくなってくることこそ、荒廃と呼べる病態である。
うちの病院のもっとも重いレベルの患者さんが入院している病棟では、なんと全体の3分の1程度の入院患者は大便後、トイレットペーパーで肛門を拭かない。ただし、全体的に便秘気味な人が多いので、思ったほどパンツは汚れないと言う話である。書いていて、実に悲しいことである。
統合失調症の荒廃は疾患のためではなく、薬の副作用だと屁理屈を言う人たちもいるが、多くの患者の長期の臨床経過を診ていないからそういうことが言える。
今回はリハビリ的な精神疾患の治療アプローチ、デイケアと訪問看護を取り上げている。一見、デイケアと訪問看護は前者の方が参加回数や時間が長いので、より病状安定の効果が大きいと思うかもしれない。
しかし実際には訪問看護の方がデイケアに比べ、再発率、再入院後の入院日数は短縮されるのである。この記載は、デイケアを軽視しているように見えるかもしれないがそうではなく、デイケアも参加しないよりずっと良い。
このような結果になるのは、デイケアの場面では自宅とは異なる環境なのでいくらか緊張し、少しよく見えると言うことある。ところが自宅に看護師やPSWなどが行ってみると、呆然として、それなりの接客もできず、デイケアでの様子と全く異なっていることがある。治療状態の良い人は、彼らに対する自然な接客ができる。例えば女性なら、「今お茶を入れますから待っていてください」と言うなどである。
また、部屋の中の片づけ具合や、服薬の状況も観察できる。デイケアではとりあえず、服薬しているかどうかは把握しにくい。
また、家族と同居しているケースでは、日常、どのような状況なのか教えてくれるため、家での生活の質というかレベルも詳細にわかる。例えば、女性ならお手伝いをしてくれるなどである。男性であれば、タバコの本数、コーヒーの量、どのくらい部屋を片付けているかなども参考になる。
また一般に、たいていの患者さんが悪化しきって入院することが多いのに比べ、デイケアや訪問看護を受けている人たちは、そうなる前に入院し、悪化の初期に対応できているのも大きい。だから、入院日数も短縮できる。
統合失調症の長期的予後のキモは、再発をいかに減らすかである。その点で服薬遵守は極めて重要だし、それをサポートする訪問看護、デイケアは非常に有用なのである。