2018年2月13日、厚生労働省はツムラの生薬「サンシシ」を含む漢方薬を長期服薬することによる腸間膜静脈硬化症の副作用について、添付文書の「使用上の注意」を改訂するよう製造販売業者に要請している。
これはサンシシと同成分の含有製剤14製品について、腸間膜静脈硬化症に関連した国内症例が計86例報告されたことによる。特にサンシンが含まれる漢方製剤については、患者の証を考慮して投与することや十分な経過観察を行うこと、症状・所見の改善が認められない場合には継続投与を避けることを記載し、漢方製剤などを併用する場合は、含有生薬の重複に注意するよう追記している。
2013年に厚生労働科学研究が全国調査の結果を報告している。これによると、腸間膜静脈硬化症患者の8割以上がサンシン含有漢方薬を服用し、その内9割以上で服用期間が5年以上だったという。これらのことから、2013年と2014年には「使用上の注意」の改訂指示が出された。サンシンを含有する製剤で腸間膜静脈硬化症が「重大な副作用」に記載されているのは、加味逍遥散、黄連解毒湯、辛夷清肺湯、茵蔯蒿湯(インチンコウトウ)である。
腸間膜静脈硬化症は、大腸壁内から腸間膜の静脈に石灰化が生じ血流が阻害されることで腸管が慢性的に虚血状態になる疾患。症状は、右側腹痛、下痢、悪心・嘔吐や便潜血陽性(無症状)などがみられ、重篤になるとイレウスに至る。主な原因はサンシンの生薬成分であるゲニポシドだと考えられている。大腸の腸内細菌がゲニポシドを加水分解しゲニピンを生成し、ゲニピンが大腸から吸収され腸間膜を通って肝臓に到達する間にアミノ酸やたんぱく質と反応し血流をうっ滞させ、腸管壁の浮腫、線維化、石灰化、腸管狭窄を起こす。
サンシンを含む漢方製剤を5年以上長期投与している患者が、腹痛、下痢、便秘、腹部膨満感、嘔気・嘔吐等を繰り返す、または便潜血陽性になった場合は投与を中止し、CT、大腸内視鏡などの検査を行い漫然とした長期処方は避けるように注意喚起している。
サンシンにより発症した腸間膜静脈硬化症は、中止することで改善すると言われている。
一般に、患者さんたちには漢方製剤は西洋薬より副作用が少ないといった感覚があるかもしれないが、そうではなく西洋薬と同様な注意が必要と言ったところだと思う。そもそも、漢方薬にはどのようなメカニズムで薬効を発揮しているのかも明確でないものがある。(漢方が副作用が少ないと言うのは間違い。過去ログの通り)
サンシンを含む漢方薬
茵蔯蒿湯、温清飲、黄連解毒湯、加味帰脾湯、加味逍遙散、荊芥連翹湯、五淋散、柴胡清肝湯、梔子柏皮湯、辛夷清肺湯、清上防風湯、清肺湯、防風通聖散、竜胆瀉肝湯
この中で精神科で関係が深い薬は、黄連解毒湯、加味帰脾湯、加味逍遙散であるが、防風通聖散も向精神薬の副作用の便秘や肥満に使われるので注意が必要である。
一般にレセプト的には漢方は2剤までで、3剤処方すると査定されかねない(これはローカルなもの)。2剤までだとしても、上記、サンシンを含む漢方薬に挙げられているものを2剤服薬するのことは避けるべきである。(例:加味逍遙散+防風通聖散)