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身体的危機と精神症状の改善について

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精神科医は患者さんが身体的危機の後、精神症状が軽くなることを経験する。例えば、骨折、大きな手術などである。

 

この時期だと熱中症もそうである。これら身体的損傷は脳内のバランスを変えるのか、症状がかなり改善することが良く診られる。ただしこのために精神病が完治することはほぼない。

 

ある患者さんは、外泊時に高校野球を観戦に行き熱中症に至った。その地域の中核病院救急外来に搬送されたので自分も行ってみたところ、亡くなる確率の方が遥かに高い状況だった。

 

ところが奇跡的に救命し、再び精神科病院に入院したのである。

 

その事件後、精神病が著しく改善しなんと2年間は服薬が必要でなかった。(2年後再発し再服薬)。

 

また、過去ログで少し触れているが、イレウスを起こし大腸を1m程度切除した後、ネオペリドールの筋注量が以前の4分の1で良いほどに改善した人もいる。この人は手術後、今まで約10年ほど4分の1のままである。これも治癒したわけではなく、症状‐抗精神病薬のバランスが低い位置に下がった感じである。

 

大腸は脳と関係が深いと言われ、なんとなく理解できるが、臓器に関しては特に大腸ではなくても良いように見える。例えば単に痔核の手術をしただけで、クエチアピンが750㎎から100㎎まで減量できた人がいる。

 

また飛び降り自殺の際の大きな外傷後、著しく精神症状が改善した女性を2名知っている。1名は脊損し車椅子になったため、いくら精神症状が改善したとしても痛手が大きすぎると言えた。

 

この女性患者さんは、ある精神科病院で車椅子に乗っていたので、ちょうどその場にいた例の1行医師に聴いたところ、そのような病歴だったのである。つまり身体的危機>症状改善の例はいくらもあると言える。

 

なぜ大きな身体的危機の後、精神症状が改善するかは明確にはわからないが、一部は「非日常で精神面が改善する」流れと同じではないかと思う。ただし環境面の非日常より、身体的危機の方が遥かに改善の規模が大きい。

 

またECTによる精神症状の改善や悪性症候群回復後の精神症状の改善も身体的危機による改善のメカニズムと似ているように見える。

 

なぜECTがああも効くかだが、ECTは脳内の不適切なネットワークコネクティビィティを修復し、ひいては神経保護作用をもたらすからであろう。ところが、ネット上には全く逆のことが語られており、臨床を知らない人が誤った情報を流しているようにしか見えない。

 

また、長期に患っている精神病の人は、悪化のリスクからなかなか処方用量を減量できないものである。

 

身体的危機は、「塞翁が馬」で処方内容を整理できるチャンスになることがあるのは重要だと思う。

 

参考

精神疾患における非日常の考え方(12)

アトピーによる精神病状態および一連の記事

 

 

 

 

 


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