ここ20年くらいでお正月の精神科病院の様子がかなり変わった。昔はお正月になると多くの患者さんが外泊するため、院内はがらーんとしていたものだ。
当時、お正月ではなく、親戚の人たちが自宅に戻るお正月を過ぎた頃に外泊する患者さんもいた。患者さんを親戚に見られたくない家族もあったからである。
いずれにせよ、当時、お正月やお盆に外泊する患者さんが多かったのは今と大きく異なるところである。
今年、うちの病院で外泊した患者さんはほぼ10%くらい。お正月やお盆に病棟内の患者さんが激減することはなくなった。
もはや高齢となった患者さんをみる家族がいないことも稀ではない。本人の両親が亡くなっている家庭が多いのである。そのような家庭では兄弟が外泊させることもあるが、わりあい稀なケースである。
最近は市内にもはや自宅がない人もいる。両親などが亡くなり自宅を売ってしまった家庭もある。そのような際、兄弟や時に兄弟の子供(甥や姪)が1泊だけ温泉旅館に連れて行く家庭もあるが、そこまでしれくれる家族がいる患者さんは恵まれていると思う。
入院ではなく、病院の近所のアパートやグループホームに住む患者さんも正月に自宅に帰省することはあまりない。特に両親がいないか亡くなっていなくても病院や施設に入っていると、帰るところなどないのである。
これはずっと以前に、将来必ずこうなることは予測されていたことである。(クラーク勧告)