2019年末に発売されたトリンテリックスは、2020年12月1日から投与期間制限が解除される。したがって現在14日間処方が上限だが、12月1日から1か月処方も可能になる。なお、トリンテリックスは抗うつ剤なので3か月処方もできないわけではないが、新薬であることや大量服薬のリスクもあるので1か月処方までに留める病院やクリニックが多い。
新薬の14日制限は、28日処方を希望する人が多いので大きな制約だと思う。ましてコロナウィルス流行下ではなおさらである。12月以降、これが解除されることで処方可能な人たちが増えると思われる。
個人的にトリンテリックスは、新薬で発売後、急速に処方数が伸びた向精神薬の1つである。トリンテリックスは自分の外来患者のうちデータベースに記載している人だけで10名もいる。入院患者さんでは今たまたまであろうが1名もいない。発売後、1年間で10名くらいまで処方数が増えた抗うつ剤は文句なく良い薬だと思う。
しかも新薬なので、他の抗うつ剤で不十分だったケースに使っていることが多い。この薬が発売されて良かったと思える人たちである。
現在の処方用量
5㎎ 2名
10㎎ 4名
20㎎ 4名
といったところである。トリンテリックスは体が動くようになったと言う人が多い。つまり意欲や積極性が出る。ここがレクサプロやジェイゾロフトとの大きな相違である。サインバルタもノルアドレナリンが増えて体が動きそうに見えるが、サインバルタより更にブーストがかかる印象である。これがちょっと人工的には見える。あたかもコンサータのように。
従来の抗うつ剤ではアモキサンに似ている。これはあくまで効き方であって、副作用などは全然違う。
サインバルタ60㎎処方中にストレスでうつ病性昏迷になりかかった人が、トリンテリックス変更後一気に昏迷を抜けて、大学に復帰している。これはちょっと驚きだった。うつ病性昏迷とは、何もできず、登校するとか出勤するなど到底できない状態である。
調べてみて気付いたのは、トリンテリックスの前薬がリフレックス(ミルタザピン)だった人が全然いなかったこと。つまり、処方前に既に鎮静系ではない抗うつ剤が投与されていることが多かったのである。(サインバルタやアモキサン)
新薬だけに初診からトリンテリックスを使った人はまだいない。
トリンテリックスメモ
夕方飲む
傾眠 5%以下
悪心 15%ほど
めまい 頭痛
肥満 5% (増えた人の平均 4~5㎏)
理論的には肥満はない。
現在、10数名くらい使っていると記載しているが、処方開始して何らかの理由で中止した人がたぶん30人以上いる。このような脱落は、新薬だと普通の流れである。
なぜ軽度の副作用で簡単に止めるかというと、新薬の場合、その副作用を我慢してまで続ける価値があるかどうか、まだよくわからないからである。
精神科の新薬は増えれば増えるほど、治療の選択肢が増えるので歓迎したい。