今年もインフルエンザ予防接種の時期になった。うちの病院では、入院患者、職員の予防接種はほぼ終わっている。
うちの病院では、インフルエンザワクチンは前年購入数以下しか購入できないので、外来患者さんまではカバーできない。入院患者、職員、デイケア参加者、グループホーム入所中の人たちくらいである。
今年のワクチンは例年より痛いと言う人が多い。個人的にはそこまで差はないと思った。かつての新型インフルエンザ流行時のワクチンは相当に痛かったと記憶している。インフルエンザワクチンは年々仕様が変わるのである。
精神科的には、身体的に大きな病気に罹患すると、脳のバランスが変わり、精神症状が変化し、向精神薬の身体的影響力が変化する。特に身体的な大きな疾患後は、減薬できることが多い。
上の記事は絞扼性イレウスで手術後に忍容性が低下し、少量の抗精神病薬で治療できるようになったことを紹介している。
絞扼性イレウスは死亡もありうる大事件だが、あらかじめ予定された痔核の手術はそこまで深刻なものではない。ところが、痔核の手術ですら同じようなことが起こるのである。
痔核の術前(統合失調症の長期入院患者)
トロペロン 9㎎
セロクエル 600㎎
デパケン 600㎎
術後
トロペロン 6㎎
セロクエル 100㎎
これでも十分にバランスが取れており、もう3年以上たつが悪化する気配がない。
中核病院に身体疾患で救急搬送され、身体的治療の際に向精神薬の内容が様変わりして、コントミン換算値的に軽くなることを診ることがある。これは身体的危機時には処方変更がしやすくなるためである。つまり脳の向精神薬への対応が変化し、中期~長期的に必要な向精神薬量などバランスも変わる。
さてタイトルに戻るが、ある時、外来患者さんのリボトリール0.5㎎を中止すると、どうしても頭痛が出るので、やめにくいと言う話があった。
僕は別に苦労してやめるまでもないと思ったが、どうしてもやめたいなら、「大風邪を引くとか、インフルエンザ罹患時にドサクサに紛れて中止してみては?」と助言した。
なぜなら、離脱的な症状は頭痛だったからである。結局、彼女は実際にインフルエンザに罹患し、その際にわりと簡単にリボトリールが中止できたのである。
なお、この話を仔細に見ると、リボトリール自体が頭痛に効いていたというストーリーもありうる。その理由は、リボトリールは両肩から上の筋肉を緩め、ひいては肩こりなどにも治療的だし、頭痛にも少なくともマイナスにはならないと思うからである。
実際、トピナを処方後、難治性の頭痛が劇的に消失した患者さんがいる。その人はスマトリプタンでも効かないレベルの頭痛持ちだったが、いとも簡単に良くなったのである。
なお、デパケンの効能効果は主に「てんかん」と「双極性障害」であるが、「片頭痛の発作抑制」も挙げられている。一般的に、抗てんかん薬は頭痛にも効いておかしくないのである。