Quantcast
Channel: kyupinの日記 気が向けば更新
Viewing all articles
Browse latest Browse all 2198

フラッシュバック的死にたい発作

$
0
0

このブログには「希死念慮」がテーマとして挙がっている(希死念慮のテーマ

 

 

一般に「自殺願望」という言葉があるが、精神科では希死念慮が使われることが多い。意味はあまり差がないと思うが、自殺願望に比べ希死念慮と言う方が疾患由来(つまりうつ病、うつ状態など)のニュアンスが高くなると思う。

 

本来、希死念慮は願望ではなく受け身的なイメージである。つまり嫌だが避けられないでそういう気持ちに支配されると言った感じである。それに対し自殺願望はもう少しそれに対しアクションと言うか、積極的な印象はある。そもそも「自殺」のようなネガティブなものに対し「願望する」というのはちょっと変だと思う。

 

慢性的な希死念慮ではなく、フラッシュバック的希死念慮を体験する人がいる。上に挙げたフラッシュバック的死にたい発作である。フラッシュバック的希死念慮は、慢性的な希死念慮に比べ治療が少し異なる。一般に、希死念慮はうつ病やうつ状態(つまり状態像)から来るものなので、それ自体が改善すると、希死念慮はかなり弱まるか消失するケースはかなりあると思われる。

 

重いうつ病から来る直線的な希死念慮は、うつ病はそういう風になっているともいえる。うつ病の場合、重くなるとある分水嶺を超えていきなり希死念慮が出現することがあり、自殺既遂では周囲からは意外に思われることがある。専門的に言えば、ある程度エネルギーが残っていないと自殺も難しい。あまりに重いと行動面の抑制から自殺の段取りができず、決断もできない。

 

重度のうつ病で出現する希死念慮は、症状そのものなので抗うつ剤による治療で劇的に改善することがほとんどである。このようなケースは患者さんの人生が精神医療により変わると言える。

 

希死念慮のタイプによると、SSRIが不適切なケースもあると過去ログに記載している。また、希死念慮にはルジオミール(マプロチリン)は悪くないと言う話が出て来る。ルジオミールはセロトニンに関与しないことも関係しているのかもしれない。

 

今回のタイトルの「フラッシュバック的死にたい発作」は、普段はそこまで希死念慮はなく、たまに生じるフラッシュバック的な死にたい発作のことを言っている。したがってこれが原因で本当に自殺既遂が起こることはまずない。本人はその異常体験に違和感を持ち、なんとか治療したいと望んでいる。真のうつ病の重い希死念慮では、その吟味すらできずそれに支配されて自殺既遂が起こる。

 

このフラッシュバック的な希死念慮はSSRIは改善しないことが多い。希死念慮はうつ状態由来な部分があり、SSRIでうつがうまく改善すれば希死念慮のエネルギーは薄れる。しかし島のようにフラッシュバック的希死念慮が残る人がいるのである。

 

この治療はSSRIだけではなく、たいていの抗うつ剤や抗精神病薬はあまり改善しない。おそらくこの病態にフィットしていない。

 

経験的に最も治療的な薬はトピナ(トピラマート)だと思われる。患者さんに全く他の理由でトピナを処方した際、どのような改善があったか聴取したところ、フラッシュバックのような希死念慮が消えたというものがいくつも聴かれたからである。つまり積極的に医師が聴取したものではなく、レビュー的なものである。

 

言われてみると、トピナはそういう作用が起こっておかしくない。しかし、トピナは元々抗てんかん薬で、向精神作用としては期待値があまり高くない薬なので、過度の期待は禁物だと思われる。

 

他の抗てんかん薬をみていくと、フラッシュバック的希死念慮に多少は良さそうなものとして、ラミクタール(ラモトリギン)、ガバペン(ガバペンチン)、ビムパットが挙げられるが、トピナに比べるとあまり効果が目視できない。

 

上記3剤にはトピナにあるスナップというか鍵のようなものがないと思う。(謎)

 

 


Viewing all articles
Browse latest Browse all 2198

Latest Images

Trending Articles

<script src="https://jsc.adskeeper.com/r/s/rssing.com.1596347.js" async> </script>