まず、上の新型コロナ後遺症とワクチンによる改善の動画をみてほしい(約3分)。
このニュースでは新型コロナ肺炎の後遺症がワクチンの接種により改善した経過を本人へのインタビュー形式で紹介している。この彼女の主症状は慢性倦怠感+疼痛であった。
これらの症状で日々困っていたところ、ワクチンの接種直後から改善し、ほとんど症状が消えてしまったという。
新型コロナ肺炎の後遺症は非可逆的なものと可逆的なものに分かれていると思う。非可逆的な後遺症とは、例えば肺胞が広く破壊されて生涯にわたり酸素吸入が必要な人などである。
一方、可逆的な症状は、実体はないが症状としては存在しているといったものである。このような記載は線維筋痛症、慢性疲労症候群、疼痛性障害のテーマによく出てくる。
上の動画で紹介された女性の後遺症は、まさに実体がないタイプだと思われる。参考に以下の過去ログを参照してほしい。
このような可逆的なうつの症状に近いものは、僕の臨床感覚としては脳が何かに引っかかっているような状態なので、なんらかのきっかけが欲しいところである。
全く予期していないのにワクチンで改善したとしたら、それはプラセボとは異なると思う。先入観などほとんど存在しないからである。
この女性はワクチンをした日の夜から「良くなっている感じ」がしたと言っている。これこそ狭義のうつ病と決定的に異なる点である。うつ病は、ワクチンをしたその日にかなり良くなるといった疾患メカニズムを持たない。
動画内のインタビューから
その日の夜、体から疲労感が消えたような感覚になったんです。すごく不思議でした。夫に「回復してきたみたい」と言ったら、「まあ、もうちょっと様子を見てみようよ」って。
その後、数日で症状は消える。
これは、まさに何か引っかかっていた状態が解消された経過だと思う。この動画内でノッティンガム大学のイアン・ホール教授の仮説は相当に鋭いと思った。彼は次のように言っている。
一部のコロナ患者が免疫システムのバランスを崩し、軽度の軽い炎症が続いていたところに、ワクチンを接種したことで免疫システムが「再調整」された。というのはありえます。
慢性炎症という視点が素晴らしいのである。イアン・ホール教授のいう慢性炎症はおそらく身体のことを指していると思うが、実際は脳の炎症と考える方が臨床経過にフィットしている。これは脳炎という意味ではなく、脳内の神経システムの軽微な炎症である。
僕の考え方としては、ワクチンの侵襲性の大きさ、つまり平均してワクチンの副反応が大きいことが重要ではないかと考えている。ワクチンの代わりにプラセボを筋注した場合、おそらくここまでの改善はみられない。実際、ワクチンの種類により改善率に差が出ているという。ワクチンの種類により差が出ているのに、プラセボは勝負にならない。
改善したと報告する割合の高い順。
モデルナ>ファイザー>アルトラゼネカ
インフルエンザに罹患後もコロナと同様な倦怠感、うつに類似した症状を呈することがあるが、おそらくそれをインフルエンザワクチンで改善することは容易ではないように見える。実際はインフルエンザではその流れにならないので不明である。コロナの場合、既感染者もワクチンを接種するため統計がとれるだけのN数があったのである。
なぜインフルエンザワクチンで感染症後の後遺症が改善しないかと思うかと言えば、ワクチンの侵襲性が高くないからである。(副反応が遥かに少ない)
精神科医は、呼吸器系感染症後の遷延性うつや慢性倦怠感、慢性疼痛の治療を行っているが、平均すればうまくいくことの方が多い。ワクチンなど使わずに平凡に向精神薬を投与して良くなっているのである。
コロナ後遺症の精神面に関しては、脳のある種の不釣り合いな状態なので、内因性ではなく器質性所見である。その視点は重要だと思われる。したがって治療にはいくらか工夫が必要だと思う。
上の動画に出てくる女性は約4か月間、慢性倦怠感と疼痛がみられたが、ワクチン接種後わずか数日でほぼ軽快している。彼女が一切、向精神薬を服用せずにほぼ治癒していることこそ、このタイプのコロナ後遺症の正体をよく表していると思う。
つまり、「実体はないが症状として存在する」である。一方、普通に向精神薬で改善する人もいると思われる。脳は何らかのきっかけを望んでいるだけだからである。
以下の記事も参考になると思う。