コロナ後遺症に限らず呼吸器感染症後に生じる精神症状は、慢性倦怠感~疼痛系の人が多い印象である。前回アップしたイギリスの女性の動画も同様だった。
しかし慢性倦怠感~疼痛系とは言え、急性~亜急性に生じているので直接の疼痛治療より、脳に刺激を与えるような治療の方が実践的だと思う。(引っかかっているという表現はそういう意味)
そのような視点で現在日本で処方されている向精神薬の中ではレキサルティは推奨できる。例えば以下の処方。
レキサルティ 0.25㎎~0.5㎎
1x朝
最初から微量で良く、1㎎まで必要なことはほぼないと思われる。他、不眠などはあれば眠剤も追加して良い。眠剤はこのようなケースではベンゾジアゼピン系の方がむしろ推奨される。デエビゴでも悪くないが、レンドルミンやロヒプノールの方が良い。その理由は慢性倦怠感~疼痛系の治療だからである。
上でレキサルティと記載したが、エビリファイでも良いような気もするが、たぶんレキサルティの方がインパクトが大きいと思う。抑うつ悲哀感が明確な人はリフレックスやサインバルタも推奨される。
本来、慢性倦怠感~疼痛系の人たちは臨床感覚的にはサインバルタが良さそうである。なぜサインバルタを最初に推奨しないかと言えば、発症して間もないケースが多く、そこまで必要なさそうな人が多いからである。病態やこれまでの臨床経過次第(長期の場合)では、サインバルタの方が良いこともある。
ある日、コロナ肺炎後の後遺症で初診した人がいた。高熱が10日以上続き、退院して良いと言われた時には体力的にガタガタだったという。その後、背中のむずむず感、疼痛があり、易疲労感、不安感などで仕事どころではないという。
このような人にレキサルティ+リボトリールを処方している。なぜリボトリールかというと、背中のむずむず感もあるからである。14日分処方したところ、次回受診時には全快していた。(治療終了)
このような急速な改善は、内因性うつ病ではない経過である。
前回の記事の動画
この動画の中で(1分43秒くらい)、900名のN数でワクチン接種後後遺症がどうなったか?というグラフがある。
ワクチン接種後
改善した 56.7%
変化なし 24.6%
悪化した 18.7%
となっており、ワクチン接種後、なにがしか改善する確率は50%くらいである。逆に悪化した人は5人に1人くらいもいる。変化なし~悪化した人のうち、後遺症に精神症状の部分が大きいケースでは、もう少し踏み込んで精神科治療を受けるべきだと思う。
精神疾患の臨床経過では時間は重要なパラメータである。悪い状態のまま時間がかかると治療が難しくなることは少なからずある。
しかしながら、コロナ後遺症のうち慢性倦怠感~疼痛の人たちは時間の影響はさほどないと思う。何かが大きく変わるような病態ではないからである。