精神科で昏迷と言う際、意識障害を伴わないものを言うが、器質性疾患では意識障害を伴う似た病態があり、意識障害があってもそう呼ばれることもある。以下を参照。
今日のタイトルの亜昏迷は昏迷の軽い病態を言うが、軽いとは言え重いものも含まれる。昏迷は、統合失調症、双極性障害、うつ病、ヒステリー、器質性疾患(ASD、ADHDも含む)のいずれでも出現しうるので、とりわけ疾患特性があるわけではない。
昏迷になると日常生活は何もできないため、自宅で看病するのは困難である。普通、入院する経過になることが多い。
この記事では亜昏迷でも極めて軽症なものを取り上げている。すなわち、かろうじて日常生活ができる程度の亜昏迷である。実際にはそこまでできる人を亜昏迷とは呼ばないと言う精神科医もいると思うが、これらの症状は重いものから軽いものまでスペクトラム上にあるので、読者の方には参考になると思う。
ある女性患者さんは時に通院を中断し、数か月後に亜昏迷になり再受診していた。彼女は怠薬すると亜昏迷になりやすいのである。彼女の診察時の状態は、
〇座るように言ってもすぐに座らない。
〇診察時、反応が悪い。
〇いつまでも黙っていてやっと話し始める。
〇簡単な質問なのに返事が遅れる。
〇喋るスピードが遅い。(普段と比べて)
〇戸惑いのようにも見える。
〇表情に繊細な変化が見られない。
このような病態だと、家では食事、掃除、入浴などもほとんどできないと思う。亜昏迷で車を運転する人もたまにおり、注意力が低下しているので事故を起こしやすい。
いつもではないが、ある時期に朝起きれない、いつも寝ている状態になると言う人がいる。これは軽度の亜昏迷と呼んで良い人とそうでない人がいる。
もしこの病態が双極性障害の症状なら、リーマスなどの気分安定化薬はそれらを改善しそうに見える。しかし、リーマスが効かなかったとしても双極性障害が否定されるものではない。
逆に、「亜昏迷」という症状は疾患特異性がないので、それが双極性障害の一部かどうかの議論もあまり意味がないと思う。
非定型精神病には亜昏迷が伴いやすい。これは結構、重要である。非定型精神病は年齢的に更年期の女性に生じやすく、ホルモンバランスの変化など器質性疾患の色彩が大きい。
また非定型精神病の亜昏迷~昏迷は時に重篤になり、意識障害も伴っているように見える。意識障害を伴いやすい点も器質性色彩だと思う。
逆に、単にうつ病で更年期に亜昏迷を生じたら、非定型精神病の診断を視野にいれるべきだと思う。
そう考えることで治療法のアイデアも出てくるからである。