Quantcast
Channel: kyupinの日記 気が向けば更新
Viewing all articles
Browse latest Browse all 2198

高齢の統合失調症の人が認知症になりにくい話

$
0
0

新型コロナパンデミック以降、病院で容易に面会が出来なくなった。僕の病院はタブレット面会はできるが、外来面会室で会うことはできない。ただし、昨年末、新規患者数が激減した際に短い期間、許可したことはあった。

 

おそらく、国内の病院に限らず高齢者施設で家族と面会ができない状況は、世界中で起こっていると思う。

 

高齢者は面会ができない環境が続くと、家族と会っても誰かわからなくなる。認知症がいっそう進行するのである。

 

ところがである。高齢の統合失調症の人にそれが起こらないのは謎過ぎる現象だと思う。

 

基本、既に統合失調症に罹患している人は狭義の認知症になりにくい。しかし稀に典型的なアルツハイマー型認知症になる人がいるが、これは特殊例である。

 

しかし、かつて統合失調症という診断が早発性痴呆と呼ばれたように、ある一定の年齢から認知症っぽくなる人はいる。このタイプの1つは情意減弱が次第に酷くなり空虚になった人々。

 

過去ログに出てくるが、ベッドサイドに何も置いていないような人である。陰性症状が重い統合失調症の典型例だと思う。これはいわゆる荒廃状態である。

 

他に、不注意が目立ち、酷いADHDのような病態もみられる。彼らは日常、物忘れ、うっかりは非常に多いが、これを認知症と呼ぶのはかなり微妙である。

 

このいずれのタイプも、家族に会ったら誰かわからないと言う事態にはならない。また、箸の使い方がわからないとか、トイレに行ってやり方がわからないと言う病態にもほぼならない。

 

統合失調症でいっさい動けず生産的なことができない病態は、認知症ではなく昏迷である。昏迷の時、家族に会った時、無言、無反応だったとしても相手が家族と把握していると思う。

 

このようなことから、こういう人を認知症と呼ぶ人は呼ぶかもしれないが、やはり一般的な認知症とは異なっていると言わざるを得ない。むしろ統合失調症の病態の延長線上にある。

 

結論的に言えば、統合失調症の人は認知症にほぼならない。

 

統合失調症の治療の進歩から言えば、ずっと昔の統合失調症の人たちは健康な人よりずっと平均寿命が短かったので、認知症が明確になる年齢の人が少なかった。

 

ところが、近年は抗精神病薬の進歩から、80歳代まで身体的に健康な人たちが結構いる。

 

つまり、かつては高齢の統合失調症の人がどの程度、認知症を合併するのかよくわからなかったのである。


Viewing all articles
Browse latest Browse all 2198

Trending Articles



<script src="https://jsc.adskeeper.com/r/s/rssing.com.1596347.js" async> </script>