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リエゾンの患者さんの予後(総論的なもの)

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リエゾンでは診断をされて相談を受けることは少ない。紹介理由は著しい食思不振、興奮、看護への拒絶などが挙げられるが、これらは診断ではなく症状である。時にうつ病や認知症の診断を精神科で受けていて入院中の治療を依頼されることもある。

 

これは、その病院の入院患者のタイプにもよると思われる(中核病院なのかリハビリが主の病院なのかなど)。

 

リエゾンは対症療法なので、興奮や食思不振などの症状に対し相対的に良さそうな薬物を選択する。またリエゾンの特徴だが、ほぼ長期治療にならない。その理由は、数ヶ月後に退院し自宅や施設に入所することがほとんどだからである。

 

患者さんによれば退院後も外来治療することもあるが、その率は20%以下であろう。ほとんどのリエゾン患者は入院中にまとまることが多いからである。このことこそ、多くのケースが入院後に急速に発症した精神症状であることを証明している。

 

今の日本は高齢者の入院患者さんが多く、入院前に長期に治療すべき疾患が発症していることもある。例えば、アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、老年期のうつ病などである。リエゾンで相談を受ける患者さんのうち、アルツハイマー型認知症では既に向精神薬を投与されていることが多い。レビー小体型認知症は元々発症していたのだが、リエゾンで初めて明確になることもある。

 

レビー小体型認知症の症状は、入院時の感染症や身体疾患に由来する精神症状と似ていることがあり、しばらく経過を診てどちらなのか判断する。

 

重い神経内科疾患に伴う精神症状は神経内科疾患の消長につれて変動するため、少なくとも入院中はずっと関わることが多い。ほぼ手を尽くして固定したケースはそのままの処方で主治医に任せることもある。

 

神経内科疾患で最も予後良好に見えるのは、重い精神病状態で発症した症状精神病が完治するケースだと思う。神経内科疾患も完治した場合、疾患そのものが痕跡なく完治したと言える。(例えばギランバレー症候群)。

 

それに準じるのは、脳炎がほとんど後遺症なく完治したケースである(これもリエゾンで相談を受けることが多い)。

 

免疫系疾患もしばしばリエゾンの対象になる。免疫系疾患は症状精神病の中でも発現する精神症状の範囲が広い。つまり単にうつ状態やアパシー程度のものから、精神病やカタトニアに至る人まである。カタトニアに至る原因疾患として膠原病が挙げられるのは重要だと思う。

 

ある精神病状態を呈していた膠原病の女性患者さんはベッド上で彫像のようにほとんど動かないでいたが、紙おむつを嫌うのかそれを外す行為がずっと続いていた。家族によれば、紙おむつ代が月に13万円もかかると言う。

 

これを何とかしてほしいと相談を受けたのである。この場合、膠原病に対する直接的な内科的治療は僕はしなくて良い。

 

さてこれに対しいかなる治療をしたでしょう。この症状に対し最も有効で期待値が高い治療は明らかにECTであろう。過去ログにも重いカタトニアはECTを選択すべきと記載している。しかしリエゾンでは選択できない。

 

カタとニアに対し薬物療法で推奨されているのはワイパックスの大量である。ワイパックスの添付文書には、

 

用法及び用量
通常、成人1日ロラゼパムとして1〜3mgを2〜3回に分けて経口投与する。なお、年齢・症状により適宜増減する。

 

と記載されており、最高量は6㎎まで投薬できる。しかしワイパックス6㎎を投薬してもこのクラスの精神症状はたいした変化がないことも多い。ワイパックスは治療パワーが小さいからであろう。その点でワイパックスとECTでは治療期待値は大差である。

 

そこでワイパックスに抗精神病薬を追加するが、この患者さんの場合、最終的にリスペリドン2㎎+レキサルティ2㎎で治療していた。最終的にレキサルティとクエチアピンだったかもしれないがよく覚えていない。

 

カタトニアは統合失調症や躁うつ病だけでなく発達障害でも生じることがあり、もし発達障害に生じた場合、のんびり薬物療法で治療していた日には、良くなるまで何年かかるか予想もつかない。

 

僕の恩師の精神科医(児童専門)は、20歳でおむつ状態で何もできない発達障害のカタトニア状態に対しリスペリドンで治療したところ、改善まで5年間かかったという。抗精神病薬は多分カタとニアに治療的なのであろうが、完全にターゲットは捉えていないのだろう。まして統合失調症でないならなおさらである。

 

過去ログに保護室で便だらけになる話をアップしている。

 

 

膠原病のカタトニアで内科病棟で便まみれになる人は、少なからず特殊な精神病状態にあることを示唆している。しかも、単に認知症の不潔行為とは異なった次元にある。これは注意したい精神所見だと思う。

 

この膠原病の患者さんは疎通性が少し改善した程度で、さほどカタトニアの症状は改善していないように見えた。しかし家族に話を聞いたところ、オムツ代が激減しとても助かっていると言うのである(普通の高齢者のオムツ代)。

 

いかなるレベルの精神症状であれ、治療するかしないかは大違いだと思う。

 

 


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