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アンプリット25㎎欠品の話

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今回は、かなりマイナーな話。

 

アンプリットは、比較的忍容性が低い人でも服用できる3環系抗うつ剤という話を過去ログにアップしている。アンプリットの良い点は、効果と副作用のバランスが3環系抗うつ剤にしては良いことが挙げられる。

 

ただし、おそらく現在、日本国内でアンプリットを服用している人はほとんどいないと思う。

 

しかし、かつておそらく1990年頃だが、アンプリットばかり処方する精神科医すらいた。その理由は、トリプタノールやトフラニールに比べずっと処方しやすいからである。

 

アンプリットがほとんど処方されなくなった理由はいくつかあり、1つは現在の抗うつ剤がかなり優れていることが挙げられる。

 

また、アンプリットを処方したことがない精神科医もかなり多くなっていると思われること。民間の精神科病院で採用されていないことが普通にある。

 

1つ言えるのは、アンプリットが劇的に処方された時期など1度もないこと。やはりSSRI以前の主流の抗うつ剤はアモキサンとルジオミールで、重い人にはトリプタノール、トフラニール、アナフラニール、ノリトレンくらいが処方されていた。

 

 

アンプリットは後者4剤ほどの重い副作用がなく、効果もそこそこあると言う立ち位置であった。絶対値的な抗うつ効果はアンプリットよりアモキサンが上回っていたと思う。アンプリットの問題点は、当時でさえ精神科病院で採用されていないこともあり、知名度が低かったことも挙げられる。

 

指導医にアンプリット好きな精神科医が一定の割合でおり、彼らがうつ病の状態と忍容性のバランスでアンプリットの処方法を若い医師に教示していたと言えた。僕は直接に指導を受けたことがないが、当時、県内で名医で有名な○○先生が好んでアンプリットを処方していると言う話を聴き、自分でトライして効果を確認したのである。これは1990年より以前の話である。

 

ニッチに位置するアンプリットはこのような理由で、SSRIが忍容性的に使えない人たちに抗うつ剤を処方する場合、アモキサンかルジオミールが優先され、アンプリットは処方されないと言う微妙な薬であった。

 

アモキサンやルジオミールが副作用的に服薬できず、アンプリットは服薬できることも普通にあるが、現在の若い精神科医はそのルートに行かない。

 

そのようなことから現在アンプリットはほとんど処方されない抗うつ剤になったのである。

 

今回、アンプリットが欠品すると言うアナウンスがあった。アンプリットはもちろん先発品で、ジェネリックはたぶんないと思う。これは諸般の事情と言う話だが、先日アップしたアモキサンの自主回収の話と関係があるのか不明である。

 

少なくとも、アモキサンがなくなるので仕方なくアンプリットに切り替えた、という話ではない。その理由はアンプリットは処方したことがない精神科医も今は多く、処方したことがない抗うつ剤をこの機会に処方するわけがないからである。

 

 

アモキサンは2023年2月1日から自主回収が始まる。病院に残っていても回収されて処方できなくなるのである。発癌リスクの成分が入っているということはそういう意味である。

 

ファイザーは2022年8月、アモキサンカプセル及び細粒に発癌リスクのあるニトロソアミン化合物が検出されたことを受け、他の抗うつ剤への切り替えを要請している。

 

発癌リスクとはいえ、ニトロソアミンは焼き魚のあの焦げなので、多少食べたとしてもたいした有害性などない。しかしこれが長期に服用する薬に微量でも入っていると言うことは問題視される。

 

今回、アンプリット25㎎錠は購入ができなくなるが、10㎎錠は細々と購入できるらしい。アンプリットにはニトロソアミンは混入していないからである。

 

このような流れをみると、長期的には古い3環系抗うつ剤や4環系抗うつ剤は次第に発売されなくなり、新しい抗うつ剤だけのうつ病薬物療法の時代になるのかもしれないと思った。


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