オランザピンは統合失調症や躁うつ病の躁とうつだけでなく今は抗悪性腫瘍薬の消化器症状に副作用にも処方できる万能タイプの抗精神病薬である。以下は先発品のジプレキサの添付文書である。
精神病状態を抑えるために、1.25mgで良いことはまずない。急性期は概ね10から20mgは必要で、回復している人でも5mg程度は維持用量として処方されることが多い。
躁うつ病のうつを改善するためには2.5mgで良い人も比較的いるといった印象である。たまに忍容性の低い人が1.25mg服用しているといったところである。
ところで、ジェネリック医薬品は先発品ほど広く適応が認められていないことがある。以下は日医工のオランザピンの添付文書である。これを見ると、ジプレキサとオランザピンの適応の差はない。
どのような時にオランザピン1.25mg錠が必要かと言うと、高齢者に対して処方する時である。僕はリエゾンで高齢者にオランザピンを処方する際、摂食不良や器質性昏迷に対して0.625mgから処方することが多い。従ってやや不正確になるがオランザピンを4分割して処方していた。もちろん分割するのは院内薬局の薬剤師さんである。共和薬品(アメルと書かれている)に1.25㎎錠があることを、院外薬局の薬剤師さんから聴いたのであった。
この高齢者への0.625mgが嘘みたいに効き、それだけで食思や精神症状が改善したことも多く経験している。
不思議なのは既に身体科のドクターが5mg処方していて、しかも無効だったのに、いったん中止し、数日から数週間の間隔をあけて0.625mg再処方した際に、急回復したことも数度ならずあったことである。
リエゾンではたいてい病棟に薬剤師がおり、ある女性の薬剤師さんが僕に質問した。「(うまくいかなかったのは)オランザピンの量が多すぎたからでしょうか?」
この理由は単純なものではない。少なくとも、多すぎたから失敗したわけではなさそうである。そう思う理由は、身体科の医師は少量から漸増していたからである。しかし、効かないから増量しまったのは確かであった。
その理由はオカルトだが、精神科医がタイミングを見て処方するのと、身体科の医師がルーズに処方する差としか言いようがない。
過去ログでは、なぜか向精神薬は精神科医が処方するのとそれ以外の医師が処方するのでは効果や臨床経過が異なると記載している。
向精神薬は純粋にデジタルな薬理作用が発現しているわけではなく、一定程度のアナログの部分が存在している。
精神科医が身体科の医師より、少量で効くことも同じ理由である。(言い換えると「手」が違う)
分包するのは薬局の薬剤師なのに、全く不思議な話だと思う。
1.25㎎があると便利なのは、0.625㎎が2分割で済むことと、2.5㎎の4分の3錠を処方することが易しくなったことだと思う。4分割はやや不正確になるが、この程度の少量だと、その不正確さの影響も多少は大きくなる。
このように考えていくと、有効でない多剤併用は、精神科医として未だ成立していないか、修業が足りていないと言われても仕方がないと思う。