

ジプレキサの筋注製剤は昨年12月(2012年12月)に発売されている。上の画像はジプレキサのバイアルを2.1mlの注射用蒸留水で溶かした写真。このようにビタミンのドリンク剤のごとく、黄色の透明の製剤である。
注射をする際の抵抗はかなり少なく、すっと入る感じ。それに比べ、ネオペリドール(ハロマンス)などの粘り気のある筋注製剤はかなり重い。実際、ネオペリドールを注射器に引くだけで、注射針の切れが悪くなる。
ジプレキサ筋注製剤を実際に使ってみた印象だが、ジプレキサの内服薬に比べ異なった効き方に見える。つまり、実施したために賦活するケースはかなり稀である。
興奮状態に対しこの筋注製剤を筋注した際、速やかに眠くなり1~2時間眠る人が多い。効果発現が速いし、鎮静効果は、ジプレキサ20mgを一度に服用させた時に比べ大きい。
しかし、1アンプル実施しても全く効果がない人がいる。まさに、ケロリとしているといったところ。
この際に、更にジプレキサ10mg筋注を実施できるが、2時間は空けるというルールがある。つまり一度に2アンプル筋注はできないし、短い間隔で立て続けに2アンプルすることはできない。
過去に、ジプレキサを2アンプル実施してなお効果がなかった人もいるが、この人は仕方なく、更にセレネース2アンプル筋注してやっと鎮静した。
このクラスの人の興奮状態を放置するのは、患者本人が最も危険である。(隔離室で事故が稀ではない話が過去ログにある)。
古い統合失調症の入院患者さんの場合、今までにセレネースやトロペロンの筋注を受けている人が多いためか、セレネースを2~3アンプルしたところで、全然効果がない人がいる。そのような人に、ジプレキサ1アンプルで鎮静効果が出ることはかなりの驚きである。
人によれば、1回の筋注でヘロヘロになる。しかし、セレネースに比べ、それでも自然な鎮静の印象なのである。
なぜ自然に見えるか考えてみたところ、従来型の筋注製剤に比べ、それによるEPSがかなり少なく見えることもある。
一般に、統合失調症の人にセレネース2~3アンプル筋注する鎮静効果は、ジプレキサ20mg内服させることよりもずっと大きい。しかし、筋注製剤だと10mgでもかなり鎮静効果が大きいことが、精神科医には不思議に見えるのである。
その方向性が内服薬に比べブレる範囲が狭く、ほぼ鎮静方向に向かい、ジプレキサ内服薬に見られる予測できない反応が稀になっている。
ジプレキサの筋注製剤はやがて中間報告が出るようであるが、約2000名に使われ、結構、副作用が少なかったようである。
ジプレキサ筋注製剤による体重増加は2000名を超える患者に対し1名だったと言う。(まあ長くは使用しないわけで)。
僕は過食を伴う統合失調症の患者さんにジプレキサを筋注したが、全く過食行動が出なかった。そういう点でも、従来の内服製剤の比べ相違がある。
鎮静の際に、コントミンやレボトミンの筋注製剤を使うことは、セレネースやトロペロンの筋注製剤に比べリスクが大きい。その理由は、循環器系、特にQT延長の作用が大きいからである。
その点で、ジプレキサの筋注製剤はその即効性や副作用の少ない点でとても有用といった印象を持っている。(現時点では)。
参考
ジプレキサの注射剤について、一部訂正
ジプレキサ筋注用10mg発売予定