現在、ラミクタール(ラモトリギン)などの新規抗てんかん薬は血中濃度が測定できるようになっているが、ラミクタールではてんかんでのみ測定でき、双極性障害ではできない。
これはデパケンR(バルプロ酸)での当初の状況と同じである。デパケンRは海外に比べ双極性障害の適応取得が遅れ、適応が取れた後もしばらく血中濃度は測定できなかった。これは診療報酬上の話で、レセプトで請求しないなら、双極性障害でラミクタール血中濃度測定は可能である。
ラミクタールは双極性障害で効果が出ている患者さんでは、血中濃度が5~11μg/mlの間にある人が多いという。
しかし、ラミクタールという薬は人により、血中濃度の上がり方にかなり個人差があるようである。つまり、200mg使っても全く5μg/mlに及ばない人もいるらしい。(200mgでも2μg/mlほどしか上がらない人もいる)
一方、25mgでは5μg/mlに達する人は全くと言って良いほどいない。つまり、この考え方によれば、双極性障害の人をラミクタール25mgでコントロールするのは難しい確率が高いのである。
臨床的には、25mgどころか12.5mg隔日で実に良好にコントロールできる人が存在する。それどころか、少量では非常に効いていても、25mgを超えて投与すると、厭世観、悲哀感、希死念慮が出現したり、不快感や思考力の低下を訴える人もいる。
つまり真の双極性障害でない人たちにも、ラミクタールは抗うつ効果を及ぼすので、ラミクタールの血中濃度は少し他の状況、背景も考慮して判断しないといけないんだと思う。
ラミクタールは漸増していくと、100mg~200mgの間で突然、効いている実感が出現する人がいる。このような人は典型的双極性障害とまで断言できないが、上記の5~11μg/mlの血中濃度に応じた効果が出ている可能性が高いと思われる。
このブログで度々言及しているように、現代社会の特に双極2型はかなりノイズのような人々も含まれているので、ごく少量で良好な状態が維持でき、増量するとむしろ悪化すると感じる人もいる。きっと、このような人はあまり血中濃度は関係していないのである。
このように考えていくと、ラミクタールの有効域は、あたかも二相性に存在する不思議な薬に見えるのである。
実は、これと同様な現象がイーケプラにも見られる。イーケプラは精神症状に使われることは稀で、てんかんに使われることがほとんどだが、1000mg以下で十分に効果的な人と3000mg使わないとコントールできない人に分かれているように見える。真ん中の2000mg辺りがすっぽり抜けているのである。
ラミクタールは200mg程度使って、他の向精神薬をあまり使わないで治療するか、他の抗うつ剤を併用し少量のラミクタールでコントロールした方が良い人に分かれるように思われる。(重要)
つまり後者は、あまり双極性障害的とは言えず、症状の波を持つ単極性のうつに近いのかもしれない。だから、主剤を普通の抗うつ剤にした方がうまくいくのであろう。この場合、ラミクタールは、スパイス的に抗うつ作用や気分安定化作用を及ぼしている。機序は違うと思うが、エビリファイの抗うつ作用と効果のあり方が似ている。
基本的に、抗うつ剤を避けてリーマス、デパケンR、テグレトール、ラミクタールなどの気分安定化薬のみで治療すべきケースは、抗うつ剤を併用すると、かえって情緒不安定になり事件が起こりかねない人々である。
些細なものでは、いつもイライラしている、友人と口げんかが多い、浪費や、無計画な行動が多いなど。また重大なものでは、女性なら性的放縦、男性なら暴力、犯罪などの行動に及びかねないケースであろう。このような人は低空飛行でも、できるだけ抗うつ剤は使わず、他の方法を探した方が良い。特にSSRIは危険性が高い。
新しいタイプの抗うつ剤の中で比較的このような人にも使い易いように見えるのはリフレックスである。リフレックスがまだ使いやすいのは鎮静的抗うつ剤だからであろう。
アナフラニールは点滴に限れば、そう悪くはないが、10%くらいの人はあまり良くない。アナフラニールの点滴が、このような使用に耐えるのは、おそらく点滴静注だからと思われる。(つまり鎮静的)
なお販売元のグラクソは、
ラミクタールは400mgよりも200mgの方がより双極性障害を安定させる。ラミクタール200mgはリーマスより優れる。
と言っている。
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ラミクタールの血中濃度の個人差についての考察
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