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レクサプロのQT延長以外の補足的な話

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先日、レクサプロのQT延長についていくつか記事をアップしている。今日は主にQT延長以外の補足的な話。

添付文書的には、レクサプロは夕食後に服用する。つまり10㎎、20㎎いずれも1日1回服薬で良い。

僕はレクサプロはむしろ朝1回処方することが多いが、これは併用薬の関係で、朝1回服用すればその日はもう薬を飲まなくても良い人がいることから来る。しかし、基本的には夕方服用なのである。

レクサプロが夕方服用を推奨されている理由は、二重盲検法でパキシルと効果の優劣を評価されたことが大きいと思われる。つまりパキシルが夕方処方なのでレクサプロも夕方服用を推奨されているだけなのである。実際、海外ではいつ服用しても良いようになっている。

添付文書的にはパキシルはIR、CR錠いずれも夕方服用を推奨されている。その大きな理由は、たぶんパキシルは比較的眠いSSRIだから。SSRIを老人に投与する場合でも、パキシルは夕方投与する方が(他のSSRIよりも)メリットが大きいと言われている。

レクサプロも眠い人は眠い。添付文書では、傾眠129例(23.5%)、と記載されており、4人に1人は眠さを感じる。しかし、その理由で夕方投与が良いとまでは言えない。実際、眠さを訴える人は朝飲んでも夕方飲んでも、量を5㎎まで減らしたとしても、眠さはあまり変わらないと言う人が多い印象。

レクサプロは半減期が30時間を超えるため、いつ飲むかはあまり日中の眠さに影響しないのかもしれない。(それでも眠さを訴える人が朝服薬だった場合、夕方あるいは就前の服薬に変更する。そうしないと、この精神科医は何を考えているんだろう?と思われるため。まして、添付文書に夕食後服用と書かれているのに。)

結局、レクサプロで眠さを感じない人は、いつ飲んでもかまわない。

レクサプロの前回の記事で、SSRIの等価換算をアップしている。その際に、レクサプロ10㎎=ジェイゾロフト100㎎という換算を記載しているが、公式(日本版)には以下の通りである。ここではたぶんジェイゾロフト100㎎を基準にしている。

ジェイゾロフト 100㎎
パキシル 40㎎(IR)
パキシルCR 50㎎
デプロメール 150㎎(=ルボックス)
レクサプロ 20㎎
(以下、SSRI以外の抗うつ剤)
サインバルタ 30㎎
リフレックス 30㎎
トレドミン  100㎎
レスリン  300㎎
テシプール 6㎎ 
トリプタノール 150㎎
トフラニール 150㎎
アンプリット 150㎎
スルモンチール 150㎎
ノリトレン 75㎎
アナフラニール 120㎎
プロチアデン 150㎎
アモキサン 150㎎
ルジオミール 150㎎
テトラミド 60㎎


となっている。

なぜ、時々レクサプロ10㎎=ジェイゾロフト100㎎という換算を聴くかといえば、おそらく、薬効的にジェイゾロフト114㎎とレクサプロ10㎎には有意差がなかったことによる(のではないかと・・)。

このようなことから、ジェイゾロフトの日本での推奨用量および上限投与量は、パキシルはともかく、レクサプロ、デプロメール、リフレックス、サインバルタの上限投与量を考慮すれば、少し低すぎると言うことになる。ジェイゾロフトは世界的に薬効、忍容性についてかなり上位に評価されているが、200㎎まで投与するという条件でそうなっているのである。

SSRIの副作用で比較的多くみられるはずなのに、あまり患者さんが訴えないものに性機能障害がある。おそらく、恥ずかしいので訴えにくいのではないかと思われる。

性機能障害はSSRIの中でも生じる比率が異なり、最も生じやすいSSRIは、パキシルとジェイゾロフトが双璧。この2つはなんと80%で生じると言われている。それに比べ、レクサプロはこの2つに比べると性機能障害がまだ起こりにくいSSRIとされている。それでも38%程度に生じる。

レクサプロの添付文書では、どの程度に生じるのかよくわからない書き方をされている。

泌尿器・生殖器1~5%未満 排尿困難、頻尿、尿蛋白陽性、射精障害
泌尿器・生殖器1%未満 勃起不全
泌尿器・生殖器頻度不明注2) 尿閉、持続勃起症、不正出血、月経過多


といった感じである。少なくとも、上記の40%弱とはかなり乖離がある。

なお、SNRIのサインバルタはレクサプロよりは少し高く、41~42%程度である。おそらく、最も性機能障害を生じにくい新しいタイプの抗うつ剤は、リフレックス(レメロン)で、それでも25%程度である。

3環系抗うつ剤は性機能障害が起こりにくいかというとそうではなく、たぶんサインバルタやレクサプロ程度には生じていると思われる。

なお、うつ状態の際に少量のエビリファイを使うと回春する傾向がある。ただし、エビリファイはうつ状態には単剤投与はできない。エビリファイは他の抗精神病薬による高プロラクチン血症を緩和させる作用があり、エビリファイのD2部分アゴニスト作用が好影響を与えているようには見える。(参考

現代社会のうつ状態における性機能障害の評価、考え方の難しさは、一部の人々に広汎性発達障害あるいはその辺縁に位置する「性同一性障害」も関与しているように見えること(Gender Identity Disorder, GID)。これは本来、薬物由来ではないが、これら向精神薬の過敏性から、処方後の経過に影響しているように思われる人もいる。

SSRIの中で性機能障害の生じる率が異なるのは、まだよくわかっていないことに入るのではないかと思う。その理由だが、セロトニンを上げることが性機能障害を生じさせるのなら、最も力価が高く、ピュアなSSRIであるレクサプロこそ最も性機能障害を起こしやすいと考えられるから。ところがそうなっていない。

元々、うつ状態自体が性機能障害の原因になっていることがあり、評価が難しい面はある。ドグマチールは高プロラクチン血症などを生じ、その関連から性機能障害がみられる。

性機能障害の生じるメカニズムは1つではないこともあり、複雑になっているのではないかと思われる。


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