数か月前から、スボレキサントという新しいタイプの眠剤の記事をアップしているが、いよいよ「ベルソムラ」と言う商品名で11月に発売される。気付いた人もいると思うが、このネーミングはフランス語から来る。
このベルソムラの効果はマイスリーと同程度と言われている。退薬症状、反跳不眠、持越しが少ない。半減期10時間とされているが、それほど持ち越さない。翌日への持越しは半減期では決まらない。筋弛緩作用なし。副作用として、傾眠が数%。
また、ジェイゾロフトOD錠が12月に発売される。薬価は従来の剤型と同じである。
ジェイゾロフトの薬価
25㎎ 147円
50㎎ 240円
100㎎ 305円
8月に発売された100㎎錠だが、見本をアップしてみた。このように、円形で真ん中に割線がある。これは見本であるが薬は本物である。
単位当たりの薬価は大きい剤型ほど安価になっているため、50㎎飲む人の場合、100㎎錠を割線で割って処方してもらう方が安くつく。しかし例えば精神科病院内の薬局の処方は無問題だが、調剤薬局では存在する「剤型」がある場合は、そちらを優先して処方するルールがあるため、このような処方は厚生局に指導される。
例えばジェイゾロフトは50㎎錠があるので、25㎎を2錠も指導されるのである。メマリーを15㎎処方する場合でも、5㎎を3錠ではなく、10㎎と5㎎錠を1錠ずつ処方すべきで、5㎎錠を3錠出すと指導されるのである。
小さな剤型を多く出すと普通は割高になるので指導は理解できるが、この場合、ジェイゾロフト100㎎を半錠処方することで国民医療費はかなり安くなっているわけで、ちょっとわからないところ。このようなステレオタイプな指導は、単にファイザーを儲けさせるだけである。
これは、敢えて割線で割る技術料を取っているように思われるのかもしれない。割線がある場合とない場合では、調剤薬局の技術料が異なると言う話。僕は細かいところは詳しくない。
なお、ジェイゾロフトの25㎎剤型は、長細い形状もあり極めて脆く、分包機内でよく破壊される。あるいは妙な形に割れる。これは変な形の野菜と同じく、商品性を失うため、病院でも調剤薬局でも純粋に損失になる。
過去ログではメーカーのマイナーチェンジで硬くなったと記載しているが、それでも弱くあの形状は良くないようである。あるいは、ジェイゾロフトの成分に問題があるのかもしれない。そのためか100㎎錠は円形になっている。ジェイゾロフト25㎎用の極めて割れにくく分包できる特別仕様のカセットがあるのには苦笑。今回発売のOD錠がいかなる硬度になっているのかは見ものだと思う。
また平成27年2月頃に、エビリファイの持続性抗精神病薬が発売になるらしい。これは1度実施すれば1か月持つというので、リスパダールコンスタよりは利便性が良い。ゼプリオンも一時は激減したが、次第に販売も回復傾向にあるという。やはり持続性抗精神病薬の2週間に1度の筋注は、かなりの欠点と言える。
ゼプリオンは1度ブルーレターで注意喚起されるほど死亡者が出て騒ぎになったが、最近は結構使われているのにそのような騒ぎになっていない。あれはインヴェガ服用者やリスパダールコンスタ利用者が、一斉にゼプリオンに変更したという要因が大きいようである。
それは新薬としては、かつてないほどの規模の数であり、そのN数があまりに多かったため、あたかも多くの死亡者が出ているように見えた。また死亡者数には、ゼプリオンのテレビ・新聞報道により、不安・焦燥状態に至り自殺した人も含まれていると言う。
実際、リスパダールコンスタとゼプリオンの死亡率はほぼ同じである。
現在、ヤンセンは、あまりにも多剤併用の人にはゼプリオンを筋注しないように注意喚起している。しかし本来、持続性抗精神病薬は、処遇困難の人とか全く薬を飲まない、あるいは飲んでも効かないような人に処方される薬なので、この制約は特性が出ないといったところだと思う。
ゼプリオンの事故的な死亡者は、多剤併用されていて病状も重い人に投与されたことや、最初から大きい量を使うルールだったこともありそうに思う。治験の時は、併用薬がないか少ない人を選んで実施しているわけで、実際の臨床での状況と乖離があったこともある。ゼプリオン換算にしても、外来患者さんは、医師が考えているほど十分に服用していないことも多い。
過去ログでは、ベンラファキシンは治験に失敗し、今のところ発売される可能性がなくなったと記載している。元々ベンラファキシンは、ファイザーではなく、ファイザーに吸収合併されたワイス(Wyeth)により1993年に創薬されている。(ファイザーは売上げ世界1位の製薬会社)
ベンラファキシンはワイスにより治験されて失敗しているのである。ファイザーはジェイゾロフトの治験でも日本では相当に苦戦しており、その経験を踏まえ、ファイザーが行えばベンラファキシンの治験を成功できると踏んでいるような気がする。ベンラファキシンは今回はファイザーにより再トライが行われているのである。
また、都合の良いことに、12種の新規抗うつ薬の有効性と許容性の比較:multiple-treatmentsメタ解析(MANGA Study)の結果などから、日本人の治験にあたる医師の先入観も支援材料になっていると思う。ベンラファキシンが評判の良い抗うつ剤なのは明らかだからである。
おそらくだが、ベンラファキシンは日本での治験に成功し3番目のSNRIとして上梓されるような気がしている。
(おわり)
↧
徒然なるままに新薬や新剤型のことなど(2014年9月)
↧