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学習障害とトピナ

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今回の記事はトピナが学習障害に効く、効かないの話ではないことを予め書いておく。

本当はタイトルは「トピナとディスレクシア」にしようかと思ったが、そうすると学習障害の中でも失読症など言語系に限られる感じになるため、上のようにしている。

学生の頃、友人たちと一緒に麻雀をしていた時、一部の友人になかなか点数計算ができないとか、聴牌の待ちがよくわからない人がいた。そのような人は牌効率の良い打牌もできない。いわゆる麻雀下手である。

皆、入学後に麻雀を覚え、ほぼ同じ時間、麻雀をしているのにこの差が生じるのは、やはりそのタイプのゲームが苦手と言う他はない。

一方、驚異的に上手い人もいて、ある友人などは理牌していない清一色の手牌を一瞬見せ、すぐに牌を倒し聴牌しているかどうか聞くと、聴牌かどうかわかるどころか、待ちまで即座に言えた。(その人が強いかどうかはまた別だが、有利なのは確かである。)

聴牌がわからず点数計算ができない人と、理牌していない清一色の待ちが一瞬に言える人の差は何なんだ!

と当時思った。同じ医学生でこの相違である。その学生もとても麻雀が好きなので、熱心さが足りないとかでは片付けられない。

これはたぶんある種の学習障害であろう。ただし日常生活や医学を学ぶのには支障がない。更に言えば、名医になる可能性も他の学生に比べ低くはないと思われる。

学習障害は、文化や文明にパラレルに存在しており、例えば3000年前に生まれていれば、学習障害と言えない人もいるはずである。また現代社会でも何らかの学習障害でありながら、それが顕在化しない人たちも多いとも言える。

ディスレクシアは日本人はたぶん漢字、かなの文化なので表れにくいらしい。一方、アルファベットを用いる国では日本に比べ多い(顕在化しやすい)。日本人でも、日本語は支障がないが、英語になるとアルファベットが読めなくなる(あるいは読めるが書けない)人がいる。

ディスレクシアの人は、脳内の言語系の情報処理の場所が違うと言われている。つまり、普段から脳の働き方が一般の人とは異なるのである。

民放かディスカバリー・チャンネルか忘れたが、事故で脳を外傷し、その後、脳死と判定された男性の話が紹介されていた。

臓器移植のために、まさに肝臓などを取り出されようとした瞬間、偶然「睫毛反射」が出現したのである。(あるいは単に瞬きだったかもしれない)

医師は、この男性はまだ脳死には至っていないと判断し摘出を取りやめた。しかも、医師らの様子は、本人はずっとわかっていたというのである。その後、この男性は特殊な意識障害から回復している。

その番組では、「脳の未知の回復能力」をテーマに語られていたが、その男性は「難読症」だったらしく、普通の人と脳のあり方が異なっていたことが誤診の原因になっていると思った。

そこでやっとトピナの話になるのだが、トピナは時々、「一瞬、言葉が詰まる」など「換語障害」と言われる言語の副作用が出現する。頻度は臨床的には問うとよく「それがあります」と言われるので、軽重はあるが頻度は比較的高いと思われる。

人によると詰まるどころか上手く喋られないほどの影響を受ける人もいる。周囲が気付かないほどの言葉の詰まりなら継続が可能だが、会話ができないようなら、トピナは中止せざるを得ない。

トピナは人工的にディスレクシアをつくるのかもしれない。

その結果、脳の各部分の役割が変化し、場合によると、それまで機能不全だった部分の脳の機能を活性化し、精神症状に好影響を与える。


しかしうまく行かない場合は、病状悪化を来たす。とにかくトピナの場合、精神症状に噛み合うことが重要と言えるだろう。

こんな風に思った理由の1つは、換語障害が全くなく、効果もなく、悪化も全くない人に何人も遭遇したからである。(効果も副作用もない人。トピナは抗てんかん薬の中でも服用しにくい薬である。ただし、この部分は根拠として自信なし)

トピナという薬は、効果なのか、あるいは副作用なのか、すぐに判断できない現象がかなりある。例えば、過食行動に対しての効果などである(過去ログではこれは副作用を利用しているのではなく、効果と記載している)。

ある女性患者さんは、うちの病院に来て、「過食に効く薬が本当にあったことに驚愕した」と話していた。(彼女は中くらい効いていたように思う)。

そのように考えていくと、トピナが器質性ないし内因性幻聴を遮断したりあるいは弱めることがあるのは、ひょっとしたら、トピナの副作用なのかもしれないと思ったりする。

参考
トピナ再考
過食に対するトピナの作用は副作用ではない
横文字文化とアスペルガー症候群
自分は2度死んだので多分長生きしますよ





 


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サプリメントを飲みたがる人

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こういう人は、

やめさせるのが大変! 

サプリメントにはまる理由は色々あるが、例えば、

①西洋薬は副作用が出すぎて飲めない。

②西洋薬は飲めないわけではないが、怖いから飲まない。

③サプリメントは副作用がないという、先入観&幻想がある。

④やたらお金は持っているので、高価なのは問題ない。高価なことがかえって安心感をもたらす。

⑤元々、たいして重くないと思ってるので、サプリメント程度で良くなると考えている。

⑥サプリメントは自然食系なので安心。(生産地に注意してほしい)。


くらいが挙げられる。

ある裕福な老婦人を診ていたとき、あまりにこの人は薬に弱いことに気付いた。また、彼女の場合、どうやら漢方薬やサプリメントでも副作用が出ているのである。

最初、なんとか説得して、くだらない漢方薬を止めさせた。ここまではなんとか本人も納得。漢方薬は一般の人が考えている以上に副作用がある。

しかし、病状(精神症状)がすごく悪いので、薬を減らすことはかなり不満だったようである。とにかく不安、焦燥が酷いが、その状態では西洋薬は到底服用できない。

問題は、彼女が日々服用しているとてつもなく高価なサプリメント。希少品らしいが、これも相当に怪しいため、なんとか止めるように言うが、頑として聞かない。

打つ手がないので、入院を勧め、そのくだらないサプリメントを取り上げた。まず、基本的にまっさらな状態からスタートしないと。

さて、このように次々にサプリメントを減らしていって、何を使ったでしょう?

このような時、精神症状にいくらかでも良い方向に向かわせ、なおかつ身体に負担がないか少ないものが良い。

そこで選んだのは、バッチフラワーの

①レスキューレメディー
②オリーブ
③ホワイトチェストナット


の3つ。これは自分の感覚による。

彼女にはいつも倦怠感や「身の置き所がない」といった焦燥感が見られていた。また、どこもかしこも疼痛があるため、それも苦痛なのである。このような人に比較的良さそうなものを選ぶと、この3つが無難に思われた。

バッチフラワーは実質、何も入っていないのがよろしい(敢えて言えば、お花のエネルギーが入っている)。自分では買えないので買ってきてほしいと言われたので、デパートに買いに出かけた。僕はデパートには滅多に行かないのに・・

最初に、かつてバッチフラワーを扱っていたショップのフロアに行ってみたら、模様替えがされており、どこに売っているのかわからない。

バッチフラワーを販売しているフロアの店員に聞いたところ、なんと、最初の2人の店員はどこのショップで売っているのか知らないことを発見。3人目でようやく教えてくれる。

バッチフラワーは、それほどまで知名度がないのである。精神科医が知らなくて当然である。

またこれも驚いたが、数年前より値下がりしていることも判明。今は日本製10ml入りで2100円である。以前はこの1割くらい高かった。(僕の感覚では2100円でもかなり高い)

彼女は、同じような症状が既に3ヶ月以上続いており、「なんとかしてほしい」といつも言っていた。それなのに、薬(彼女の場合、漢方やサプリメント)を次々と止めさせていたので、まるで何もしないで、放置していたように見えたらしい。

放置しているような医師が、プライベートの時間に、滅多に行かないデパートにわざわざバッチフラワーを買いに行くわけがなかろう。

これはこれで、なんとかしようと努力していたのである。

彼女は次第に倦怠感や、焦燥がやわらいで来た。しかし、決定的に改善するためには何らかの向精神薬が必要と思われた。バッチフラワーはサプリメントを中止する際に、いくらか緩衝材として効いているように見えるが、これだけでは完全に良くなるようには見えなかった。

かつて、彼女にリリカを75mg服用させて、大変な目にあわせたことがあった。75mg服用させたところ、めまいのため動けなくなり、しばらく立ち上がれず点滴を実施したことがあった。これは数年前であるが、そう昔の話でもない。

彼女の倦怠感と抗うつに対し、リリカは用量を工夫すれば良さそうに思っていた。そこで、25mgを脱カプセルして、12.5mgだけ夜に服用させたのである。

すると、あら不思議、全く副作用が出なかった。

今回はリリカは良かったのである。睡眠もこれで改善している。また、それに加え、しばらくしてリフレックスの半錠を加えた。彼女は食が細り、どんどん痩せていたことや、リリカだけでは抗うつと言う点で不足していたからである。

リフレックスも良かった。彼女は徐々に食欲が増してきた。倦怠感も改善したのである。彼女ははっきりしない疼痛があるが、サインバルタは非常に危険である。焦燥感が再燃する可能性のほうが高い。鎮静的な抗うつ剤が良さそうである。

リリカ 12.5mg
リフレックス 7.5mg
レスキューレメディー
オリーブ
ホワイトチェストナット
(他、胃薬などの内科薬)


この処方で徐々に快方に向かい、今や90%は改善している。

参考
バッチフラワーレメディ
デプロメールとレスキューレメディ&PMS
非定型精神病性格とレスキューレメディ
スターオブベツレヘム
魔法の薬
オリーブはうつ状態の全身倦怠感に効くのか

セロクエルには飲み応えのようなものがあるが、ジプレキサにはそれがない

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これは一般的なことではなく、ある女性患者さんの感想である。その次に続く言葉は、

その分、飲み足りない感じ。

なんだそうだ。飲み足りないのは「ジプレキサ」の方である。

彼女は統合失調症ではなく躁うつ病圏に入るが、セロクエル、ジプレキサはともに躁うつ病に有効な薬物である。

彼女にとってジプレキサはたいして「手応え」のない薬物らしい。量にもよるが、彼女はセロクエルの方が効き味が大きいとみなしているのである。

しかし・・

彼女にはジプレキサの方が遥かに効いたのである。おまけに体重も減少。最初、一過性に食欲亢進がみられたが、その後まもなくして消失している。

ジプレキサで体重減少する人はどのような前薬から変更するかにもよるが、珍しくない。僕の患者さんでは、今まで最高にジプレキサで減量できた人は、マイナス16kgである。ジプレキサの場合、30~40kgといった極端な減量は経験がなく、減ったとしても10kg未満が多い。

ジプレキサは色々な意味で奥行きが深い薬物だと思う。セロクエルも良い薬だが、若干大人しい薬で、爆発力のようなものがジプレキサより欠ける。その分、服薬できる人が多い。


彼女の場合、表情が締まり、生き生きとした感情が表出されるようになった。情緒に効いているのである。

彼女に試みた薬物
デパケンR ○  
リーマス  ×
ラミクタール △
トピナ  凶
ガバペン ×
イーケプラ ×
リリカ  ×
テグレトール 凶
リボトリール ○
ブプロピオン △
ベンラファキシン ×
トレドミン ×
バルドキサン ×
リタリン ×
ルジオミール ×
テトラミド ×
トフラニール ×
ノリトレン △
アモキサン ×
アナフラニール錠 ×
アナフラニール点滴 ×
アンプリット ×
テトラミド ×
リフレックス ×
サインバルタ 凶
パキシル ×
ジェイゾロフト 凶
デプロメール △⇒×
レクサプロ 凶
セレネース ×
トロペロン注 ○
トロペロン錠 ×
PZC ×
クロフェクトン ×
クレミン ×
コントミン △
ルーラン △
リスパダール ×
リスパダールコンスタ ×
セロクエル ○
ジプレキサ ◎
エビリファイ △
インヴェガ ×
ロナセン ×

以下省略

これを見ると、「どの薬が良い場合に、どの薬がフィットしそう」と言う相関は、あまりアテにならないような気もする。特に難しい人では。

なお、ジプレキサの必要な量は5mgであった。盲点もいいところである。

参考
リタリンが処方されなくなった後、絶望的に悪化した人(この人は男性で、治療の苦労の仕方が少し似ている)

ブログ6周年

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このブログは2006年7月11日に始まっているので、今日で6年になる(既に日が替わってしまったが)。これは大変な時間で、まさかここまで続くとは思っていなかった。

最近の記事だが、さすがにマンネリ化しているが、大幅に内容を変えるのもどうかと思うので、多少は趣向を変える程度で、そこそこマンネリ風に続けている。

例えて言えば、日曜日の夕方に放映されていたサザエさんのようなものだ。余談だが、かつて

なぜ、日曜日の夕方にサザエさんがあるのか?

という疑問があった。サザエさんは、なんとなくだが、日曜日の夕方にしか馴染まないような気がしていた。おそらくサザエさんは、

ヒトの精神症状に寄り添っているのである。たぶん。

明日からまた大変だ・・みたいな。


アメブロメールはいつもかなり数が溜まっており、最悪でも20日以内には返信するようにしている。たいてい2週間以内だが、たまに一度に大量に頑張って返信することがあるので、10日くらいで返信できることもある。10日くらいで返事があったり、ごく稀に即座に返信が来たと言う人はラッキーである。これは、その時の状況にもよる。

だから、20日経っても返信がない人は、迷惑メールに入って葬られたか、あるいは、返信しなかったかどちらかである。また、メール内に特殊な言葉が入っている場合、アメブロの方で赤字で「これは開けません」とような警告が出て、読めないようになっている。どのような基準でそうなるのかは不明である。

たまに、単にブログの感想が書かれており、特に返信を必要としないもの?と思えるような意図が微妙なメールがあり、返信をしないこともある。読者の方によれば、「返信は不要です」と記載があることもある。そのようなメールでも感想を返信することもあるので色々である。

音楽の記事で、自分のお気に入りになったという嬉しいメールもある。洋楽なので、あまり日本で知名度がないが、素晴らしいミュージシャンも紹介しているからと思う。

医師の方からも時々メールがあるが、ほとんど全てといって良いほど好意的なものである。特に若手の精神科医の方から、「非常に参考になる。このような経験をオーベンから全て学ぶことなどできない」と書かれているものもあった。

ある開業の女医さんの話では、このブログは何気ない部分で奥が深いんだそうだ。内容の断片で意図して暗示的に書いているものもあるので、その辺りに気付かれているんだと思う。

一般の読者の方からは、自分自身やその人の家族の治療についての相談が多い。これらはセカンドオピニオンを希望されていると思うので、それに沿った内容の返信をするが、返信が長いことも短いこともある。返信が非常に難しいものも一部にあるのは確かである。このようなメールの内容については本人を診ていないし、限界があることを知っていてほしい。

たまに、僕の返信内容を印刷して、主治医に持っていく人がいるようだが、これはいただけないと思う。

なぜなら、その人の主治医に失礼だし、その人の主治医がその際に、どのような感情を抱くか配慮していないから。その辺りがわかっている人と、全く気付けない人がいる。自分が医師の立場になって、どのような気持ちになるか想像してみると良い。

このブログは重大なところにいつまでも入っていかず、モラトリアム状態にある。

それは「内因性の正体」のテーマがあまり更新されないから。このブログのメインはやはりあのテーマなのである。モラトリアム状態になっている主な理由は、過去ログにどこか書いている。

アメブロメールの質問を見てよく思うのは、全ての質問の答えの85%くらいは過去ログに既に出ていること。ぜひ、グーグルで検索してからメールしてほしい。

○○○ kyupin

○○○の部分は質問のキーワードである。このようにするとかなりの数の過去ログが挙がって来る。

最近は、更新のペースが一時より落ちているが、それでも2日に1度以上は更新している。これは自分でもよく続けられていると思う。このペースで更新をする理由は、2200名以上の読者の方がいるのも大きい。もし読者の方が200名くらいだったら、1週間くらいお休みすることもあるような気がする。

アメブロメールの僕の助言で劇的に改善する人がいる。その人たちの一部に「是非、謝礼をしたいので・・」などと書かれたメールをいただくことがあるが、謝礼は必要ない。

それはこのブログが、元々、全くアフィリエイトを採用していないこともかなり関係がある。このブログは本来利益を得るためのものではないから。そのような意図があるなら、とっくに音楽や書籍の記事にアマゾンのリンクをしている。

自分の病院の院長の報酬だけで十分だし、そういうことが好きではないのである。これは、自分の父親もそのような考え方だったので、気持ちは複雑だが、似ているんだと思う。(この部分は長くなるのでここでは書かないがいつかアップするかもしれない)

ただし、自分の病院の患者さんないしその家族の方からのお中元やお歳暮は貰っている。これは断ることはない。自分で食べられない(あるいは飲めない)ものは、看護師さんやコメディカルスタッフにあげている。

これはかつて研修医の頃、オーベンから「断ってはならない」と指導されたからである。特に生活保護の患者さんからのご贈答品は、断ることで本人が傷つく場合もあるので禁忌と言われた。精神科医だからではないのであろうが、このようなことも一応配慮するのである。

このブログは、いつ止めるか決めていないが、もし「内因性の正体」の重大な記事をいくつか書き終えたら、いつでも止められると考えている。

逆に言えば、よほど特別なことがない限り、その一連の記事を書き終えるまでは止めない方針である。



うつで足らない素材を入れても良くならない話

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サッカーであまりに戦績が悪く、このままでは降格になりそうなチームが毎年数チーム出てくる。日本のJ1は、下位3チームは自動的にJ2に降格するルールである。

日本の場合、J1は18チームしかないため、3チームの降格は結構厳しいと思う。

日本の場合、降格危機に至った場合、優れた外国人選手を獲得するか、監督を更迭し新監督の下、チームを立て直す方針を採ることが多い。実際、降格になったほとんどのチームは監督が更迭されている。

とてつもないメッシ級の選手ならともかく、一般的には降格するようなレベルのチームはお金もないので良い選手は獲得できない。従って監督を交代させる方が現実的だし、成功率も高いように見える。

過去にも、大分トリニータのシャムスカ、ジェフ千葉のミラーなど、奇跡的に降格を免れる名采配を取った監督がいる。

つまりだ。
チームの不調、弱さの改善には、良い選手を補充するより、監督を交代させる方がまだ効果があるのである。これは素材を入れるより、システムを変更する方がより優れていることを意味する。

精神科の話に変わるが、うつ状態を改善するために、脳内で不足している素材ないしその材料になる物質を補充する方針はあまり効果的でないことが多い。普通は無効かたいした効果は得られないのである。

これはパーキンソン病の薬が、ほとんどうつ病には適応がないことを見てもわかる。

一方、SSRIやSNRIは再取り込み阻害作用があるだけで、直接に素材としてセロトニンやノルアドレナリンを脳内に注ぎ込んでいるわけではない。つまり、脳内のシステムに影響し、結果的にこれらの神経伝達物質の効果を増加させている。

その意味では、抗うつ剤は、降格危機に至ったサッカーチームの監督を交代させることに似ている。

沖縄の鳥

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kyupinの日記 気が向けば更新 (精神科医のブログ)

沖縄のホテルのベランダにやってきた鳥。鳩の種類ではないかと思った。

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窓ごしにこちらが見ていることに気づかないのか、しきりに毛繕いをしている。

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そういえば、沖縄にはヤンバルクイナと言う珍しい鳥がいる。ヤンバルクイナはむしろ水鳥のようなもので、ほとんど飛ばないらしい。ヤンバルクイナはヤンバルに生息するクイナで、基本はクイナである。クイナはツル目にある。

ヤンバルとは沖縄北部地域を指す。

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やっと顔を挙げたので、全身が見えた。

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苦しいときは、私の尻尾を見なさい。

新しいタイプの抗うつ剤の薬価

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新しく発売される抗うつ剤の薬価は、1日の上限を服用した場合、ほぼ同じ薬価になるように決められているように見える。例えば、

サインバルタ 20mg 168.7円
サインバルタ 30mg 228.8円

リフレックス 15mg 167.5円

レクサプロ  10mg 212円


ジェイゾロフト 25mg 106円
ジェイゾロフト 50mg 184.7円

パキシル 5mg   60.5円
パキシル 10mg  105.6円
パキシル 20mg  184.7円


新しいタイプでも、発売後長期間過ぎ既にジェネリックが出ているような抗うつ剤、デプロメール(ルボックス)、トレドミンなどは挙げていない。

サインバルタは1日上限だと60mgなので、228.8*2で450円程度になる。リフレックスは15mgのみ発売されており、最高3錠まで服用できるので、450~500円程度。レクサプロも1日最高20mgまでなので420円くらいである。レクサプロは最も新しいわりに薬価が安い。

これらはもちろん健康保険もきくし(3割負担)、自立支援法を使えば1割負担になる(ただし、世帯の収入により更に低くなることもある)。

ジェイゾロフトとパキシルは今や発売後時間が経っているので、1日最高量でも400円までかからない。ただしパキシル50mgだと400円を超えるが、50mgの処方は少ないのではないかと思う。(適応が限定されているため)

パキシルはCRの剤型が2012年6月22日発売になっているが、従来型の剤型と薬価は同じである。(過去ログ参照)。また長期投与もできるようになっている。グラクソは将来的に従来型の剤型を中止するつもりのようである。

パキシルは既にジェネリックが発売される時期に来ており、なんとグラクソのCR錠と同日に発売されている。

ジェネリックは先発品の薬価の60%程度になったようである。ジェネリックはもちろんCR剤型ではない。

パキシルのジェネリック
5mg 36.2円
10mg 63.4円
20mg 110.9円


この60%について、あれっ?と思う人もいるかもしれない。一般に、最初に発売されるジェネリックは70%の薬価に決められることが多いからである。

これには細かいルールがあり、10社以上ジェネリックを発売する場合、70%ではなく60%に決められるらしい。また、30社以上になると、更に60%の薬価の90%の薬価に決められるという(つまり54%)。

パキシルは10社以上がジェネリックを発売するため、たぶん60%になったのではないかと思われる。

過去ログにはアリセプトのジェネリックの発売の際に多くのジェネリックが競合し、最初からとても安価になった話が出てくる(納入価格も含め)。

参考
パキシルCR
アリセプトのジェネリック
ジェネリックの都市伝説
考察、「ジェネリックの都市伝説」
デパケンシロップとエピレナートシロップ







メーデー

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ケーブルテレビのナショナルジオグラフィックチャンネルの目玉番組の1つに「メーデー」がある。メーデーとは、遭難信号のことである。

元々、メーデーはフランス語のvenez m'aiderに由来し、メーデー、メーデー、メーデーと3回言うルールになっているらしい。メーデーは船舶、航空機、車両、または人間が重大な危機にあり、一刻も早く救助要請をする場合に発せられる。

ナショジオ(ナショナルジオグラフィックチャンネル)のこの番組は航空機の救難信号のケースのみ扱っており、航空機事故の検証番組になっている。これが非常に面白い。

メーデーはカナダで製作されており、アメリカの事故でさえ中立の立場から検証されている(例えば、アメリカ海軍ミサイル巡洋艦によるイラン航空のエアバスA300B2撃墜事件など)

ナショジオはディスカバリーチャンネルを観ていて知るようになったが、ヒストリーチャンネルを観ようと視聴できるチャンネルを拡大したところ、ナショジオが一緒に付いてきた。元々ヒストリーチャンネルを観ようとしていたのである。

ナショジオはディスカバリーchとコンセプトが似ており同じような番組がある。それぞれに面白いが、嫁さんと僕は同じ意見で、面白さと映像の美しさの点で、ナショジオの方がやや上回るという結論である。

メーデーはほぼ毎日数時間は放映されており、いつもこのチャンネルを観ていると、同じ番組を何度も観てしまう。いつも思うのは、番組の観始めに、

この番組は確かに観た憶えがある。
しかし、どのような結果だったのか憶えていない・・


相当にこれはキテいると言えよう。いかに自分たち夫婦がボケたか検証番組でもある。つまり、何度でも同じ番組を楽しめると言うおまけつきであった。

メーデーは、いかに些細な人為的ミスや故障などの原因で航空機が墜落してしまうか、よくわかる番組といえる。人間は万能ではないし、それはコンピュータだってそうである。

航空機について今まで知らなかったことがよくわかるというか、勉強になる。例えば、

航空機の寿命は10万時間、52年間程度。

など。だから、ちょっとした故障は当然として、かなり破損した場合でも航空機は修理を繰り返し長期に使用されているのである。

例えば、1983年7月、エア・カナダ143便がモントリオールからエドモントンへの飛行中に高度4万1000フィートで燃料切れを起こした有名な航空機事故がある。

エンジン停止後はパイロットの操縦により滑空し、マニトバ州ギムリーにあった元カナダ空軍基地内の滑走路跡地へ無事に着陸を果たしている。果たしたとはいえ、着陸時にタイヤが破裂し、すぐに航空機の顎の部分を地面に付けた状態になり、摩擦による熱で煙を上げながら着陸。奇跡的に着陸時には怪我人が出なかった。ただし着陸直後、すぐに火災が起こるのではないかと乗客にパニックが起こり、脱出の際に擦過傷や骨折を負った人たちがいる。(燃料切れだったので火災にならなかった)

この破損したボーイング767-200は、ギムリー・グライダーという愛称で呼ばれ、その後、修理されて2008年まで運用、引退となっている。

つまり、少々の事故では航空機は簡単に廃車(廃航空機?)にならない。

かなりの上空で燃料切れを起こした航空機をグライダーのように着陸させる技術は大変なもので、実際、その後の検証では、フライト・シミュレーターで同じ設定で多くのパイロットが試みたところ、無事、着陸させたパイロットは1人もいなかったという。

同じような飛行中のエンジン全停止の事故では、近年のハドソン川不時着事件も有名である。あの時のパイロットもベテランであり、グライダーの操縦経験があったという話である。

メーデーを観ていると、航空機は新しいモデルは意外に危ないことがわかる。もちろん、古いのもまずいが。

これは新しい機体は、細かい点で安全性が向上しているが、パイロットが新しい機器に不慣れだったり、計器を見る際に錯覚が起こりやすいとか、微妙なマイナーチェンジが必要な部分が残っているからである。これはパソコンのOSなどでも同じようなことがいえる。

メーデーの事故検証の番組を観ていると、理論と実際は異なることがよくわかる。これは医学にも同じことが言える。臨床はまた別なのである。

参考
サバイバルゲーム
代謝されず尿からそのまま排泄される薬は何度でも循環できる



リリカ、本邦で初めて線維筋痛症の適応を取得

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2012年6月22日、リリカは新たな効能・効果として「線維筋痛症に伴う疼痛」の承認を取得している。これは6月22日の夕方、官報に掲載された。

線維筋痛症は精神科ではICD-10に掲載されていないが、精神科以外の科でICD-10の病名として登録されているらしい。(過去ログ参照)

リリカは適応症の変遷があり、2010年6月に発売された当時は「帯状疱疹後神経痛」しか処方できなかった。

2010年10月に「末梢神経障害性疼痛」の治療薬をして承認を受け、この際に「帯状疱疹後神経痛」は削除されている。つまり「帯状疱疹後神経痛」は「末梢神経障害性疼痛」に包括されたのである。だから、正確には変更とは少し異なり、「大幅に拡大された」ことに近い。

「末梢神経障害性疼痛」という病名?は一般の人は聞きなれないかもしれない。

痛みは一般に、侵害受容性疼痛、神経障害性疼痛、心因性疼痛の3つに大別されている。

①侵害受容性疼痛とは、侵害刺激(機械的刺激、熱刺激、冷刺激、化学的刺激など)とそれに伴い産生したブラジキニンなどの発痛物質が末梢神経終末の侵害受容器を刺激することによって起こる痛みをいう。侵害受容体性疼痛を引き起こす疾患として、肩関節周囲炎、腱鞘炎、関節リウマチなどがある。

②神経障害性疼痛は、神経の損傷あるいはそれに伴う機能異常によって起こる痛みで、様々な知覚異常を伴う。病態や発症機序が複雑・多彩であり、代表的な疾患として、帯状疱疹後神経痛や糖尿病神経障害に伴う痛み・痺れなどがある。

③心因性疼痛とは、器質的な病変がなく、心理的な要因により生じる痛みを言う。WHOによる国際疾病分類では身体表現性障害、米国精神医学界のDSM-Ⅳでは疼痛性障害という項目に挙げられている。概念的には、器質的病変がなく、痛みの原因の全てを心理的な要因が占める場合、または痛みを生じる原因として器質的、身体的病変が存在するものの、痛みの訴えの説明には不十分な場合のいずれかである。

一般に②神経障害性疼痛は、神経の損傷部位により末梢性と中枢性に分類されている。

末梢神経性疼痛の代表的なものは帯状疱疹後神経痛と糖尿病神経障害に伴う痛み・痺れが挙げられているが、これらは明らかに末梢性である。(これ以外にも、三叉神経痛、自己免疫性神経障害、栄養障害による神経障害、アルコール性神経障害など多くの疾患がある)

一方、中枢神経障害性疼痛には、脳卒中後疼痛、多発性硬化症疼痛、脊髄空洞症、パーキンソン病疼痛などが挙げられる。

また、侵害受容性疼痛と神経障害性疼痛ははっきり二分できるものではなく、双方の要素を併せ持つ疼痛もみられる。

参考
リリカ
線維筋痛症とパニック②


映画「遠すぎた橋」に出てくる精神病院

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過去ログのダイアー・ストレーツの記事で、「遠すぎた橋」に触れている。再掲。

このアルバムでは、後半にBrothers in Armsを含め戦争に関係する楽曲が3曲ある。Ride Across The Riverを聴くと映画「遠すぎた橋」の連合軍兵士が小さな手漕ぎボートで河を渡る場面を思い出す。

「遠すぎた橋」は第2次世界大戦の連合国のマーケット・ガーデン作戦を描いている(1944年9月)。これは連合国の無謀な作戦のためドイツ軍の頑強な反撃に遭い多数の犠牲者を出すという一風変わった戦争映画である。連合軍の敗戦を描いている深い映画だと思う。

ナイメーヘンでは、第82空挺師団・504連隊が貧弱な手漕ぎボートで、機関銃掃射と迫撃砲のなか渡河を強行している。この渡河は戦史における最も勇敢な行動の1つといわれているが、そりゃそうだろう。プライベートライアンのオマハ・ビーチ上陸作戦と同じように、大変な光景だったと思われる。


この映画の最初の方でオランダの精神病院が連合軍の爆撃を受け、多くの患者さんが外に出てきている場面がある。

患者さんたちは、道沿いに並び連合軍兵士を見送っていたが、ほとんどの人は声をたて笑い続けていた。また衣類も場にそぐわない正装だったりとかなり奇妙だった。

子供の頃、この映画を水野さんの水曜ロードショーで観ていた際、あの光景には全く違和感がなかった。

しかし今考えてみると、統合失調症の患者さんとはいえ、病棟が爆撃されるという非常事態に、

あそこまで笑っていないと思うよ。

むしろ、笑っているような人はほとんどいないのではないかと思う。

昔の精神科の教科書には、古い年配の統合失調症の患者さんが高らかに笑っている写真が必ず載せられていた。(今は知らないが)。

これは「児戯的爽快」の一面でしょうなぁ・・

現代社会でも、破瓜型の荒廃状態の人はこのような笑いを見せる人はいるが、ここまで崩壊していない古い患者さんもかなり多い。

しかし、あの映画のあの時代(第二次大戦中のノルマンディー以降)では、抗精神病薬がなかったので、古い患者さんの荒廃率は高かったのではないかと思う。

ただ、統合失調症の人も非常事態では結構、締まるものなのである。(参考

あの映画のあの場面の描写は、日本人も西欧人も精神病患者のイメージがたいして変わらないことを示していて興味深いと思う。

この映画は、1977年に公開されているからである。

参考
精神疾患における非日常の考え方(12)
2分以内に決断する(この軍医の話も「遠すぎた橋」で出てきたことを思い出した。)
精神科の怪しい伝説③

ロリキート

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ゴールドコーストのカランビン自然動物公園に、このように着ぐるみを着た人がいることをはじめて知った。それまで彼らに会ったことがなかったような気がしたから。

とりわけショーがあるわけではないんだな。たぶん。

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日本の動物園では、このような人たちはいないと思う。

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カランビン自然動物公園では朝と夕方にロリキートというインコの餌付けが行われる。

ロリキートはありふれた鳥で、ゴールドコーストでも野生のものを良く観る。いつも賑やかに囀っている。

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これはロリキートのぬいぐるみ。

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これを見ると、上の最初に挙げた着ぐるみはロリキートなんでしょう。


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世界で5000万人

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てんかんの患者さんは世界で5000万人いるが、多くは発展途上国に住んでいるため、ほとんどの人は十分な治療を受けていない。

この話を聞いて、ポリクリの麻酔科での出来事を思い出した。僕がポリクリを廻っていた当時、麻酔薬はエンフルレンが主流であった。しかし、この薬は1万円もかかると言うのである。

麻酔科の教授から、「日本では先進国だからエンフルレンが使えるが、特に発展途上国では高価なので到底使えない。」と聞いた。

貧しい国が、何を使っていたかと言えば、エーテル(ジエチルエーテル)。エーテルだと、1回100円とかそのレベルの薬価という。

エーテルはすぐに引火するので、現在のように電気メスの環境だと使えない。危険だからである。

なお、エンフルレンはハローセンと似ているが、ハローセンのような重篤な肝障害は稀である。ハローセンは精神科では最重要人物?であり、当時の精神科医は麻酔科のことはあまり知らなくてもこの薬だけは頭に入っていた。

この麻酔薬は悪性高熱症を起こしやすい麻酔薬といわれていたから。悪性症候群と治療薬がかぶっていたのである。

つまり連想的には、ハローセン、悪性高熱症、ダントロレン、悪性症候群に繋がっている。

なお、当時のダントロレンも極めて高価で1バイアル15万円~25万円とかそのレベルの薬価であった。ひょっとしたら、薬価収載はまだだったかもしれない。(つまり本来の値段)。

エンフルレンはイソフルランやセボフルレンにとって代わられた。実は、僕は麻酔下のECTには、もっぱらセボフルレンを使っていた記憶があるが、使うのはもちろん麻酔医である。

当時、セボフルレンという麻酔薬がエンフルレンから何代目になるのかよくわかっていなかった。

なお、麻酔下におけるECTは現在、麻酔医が常勤として勤めている精神科の病院か、出張で来てくれる病院でしか実施できないため、ほとんどの病院では実施が難しい状況にある。

また、麻酔医をそのためだけに常勤で雇っているようでは、完全に採算割れであり、医療経済的には現実的でない状況にある。(ECTはそうガンガン実施する治療法ではないため)

いつか近いうちに、麻酔下ECTと木箱ECTの現在置かれている難しい状況について、記事をアップしたいと思っている。

今日は少し酔っており、昔の記憶が錯綜し、あまりまとまっていない。

これが良くなって、とても助かっているってことないですか?

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最近、希死念慮のテーマで触れた僕の友人の話題があまり出てこない。今日は彼女の話。

彼女にある日、

これが良くなって、とても助かっているってことないですか?

と聞いたことがあった。彼女は、

希死念慮がなくなったので、とても楽になった。生活しやすくなった。

と答えた。彼女によれば、ずっと十字架のように背負っていた「希死念慮」がなくなると、

普通の生活はこんなものだったんだ。


と少し驚きの感覚だったようである。慢性的な希死念慮は、それがない人にはなかなか想像できないものなのだろう。

ただし・・
彼女は厳密に言うと、年間トータルでは完全には消失していない。季節の変わり目などで、断片的に数時間~1日出てくると言う。ただ、その迫力が昔より全然ないんだそうだ。

参考
子供の頃から希死念慮が続いている人
30%の希死念慮とは
寿命が7日縮んだ日


精神科ではSOAPで書かれたカルテをあまり見ないこと

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過去ログではカルテについてたまに触れている記事があるが、最近はほとんどアップしていない。今日の話題は、

精神科ではSOAPで書かれたカルテをあまり見ないこと。

全然ないわけではなく、過去に2回だけそういうカルテを見た。だから、かなり少ないのではないかと思う。たぶん、ほとんどの精神科医はそのようなカルテの記載をしないのである。

まず総論から。

精神科の入院カルテでは、最初のページの裏表紙くらいに病歴を書くスペースがあり、ここに主訴を含め、これまでの経過が記載されていることが多いが、そうでないものもある。

忙しすぎる時、僕は入院カルテの本文(いわゆる2号用紙)の最初のページに概略を書いているが、時間がある時にパソコンで詳しい病歴を記載するようにしている。パソコンで書かないと、汚すぎて読めないからである。

パソコンで整理する際には、生活歴、障害年金の受給の状況、キーパーソンが誰か、学歴、職歴、家族歴、内科・外科の既往症、合併症なども記載する。あと、B及びC型肝炎などの有無や身体所見である。

入退院が何度かある場合、治療経過も書いておくが、書かない場合もある。できれば長くだらだらしたものにしたくないからである。1ページで書ければ理想であるが、往々にして2ページ目まで行く。3ページというのは過去に一度もなかったと思う。

実は精神科の場合、病歴に加え精神所見を記載しなくてはならない。しかし、今は僕はこれ(詳細な記載)をあまりしていない。

この精神所見の書き方については、研修医時代にかなり詳しく教わった。たぶん精神科医以外の医師では、この精神所見がほとんどまともに書けないと想像する。

精神所見には書く順序があり、ビデオカメラで言うと、遠くから徐々にその人に近づいていくような流れで記載する。だから、幻聴とか妄想などの精神所見が最初から出てきたらおかしい。まず遠くからでも見えるものから記載していくのである。

詳細は省略。

駆け出しの頃は、まずこの精神所見の書き方を練習しなくてはならない。これは「精神症状」と書くべきではないかと思うかもしれない。これは「精神所見」でないといけないんだそうだ(謎)。

このような決まりごとには(謎)というのはかなりあり、時々オーベンに質問していたが、理由があるものと、「どうしてもそうでないといけない」と言う決まり事の2種類が存在した。当時のことは、今では良い思い出である。

外来カルテは入院カルテに比べ時間もないこともあり、より簡潔に書かないといけない。主訴は当然として、現病歴だけは必ず記載する(初診時)。その後、家族関係や家族に精神疾患がある人がいればできる限りの範囲で聴いておく。家族歴は精神科では非常に重要である。

実際、外来だけの人は入院歴のある人に比べ詳細に取られていないことも多い。これは必ずしも時間がないだけでなく、「詳細にわたり聴くことが本人に負担になることがありうるから」である。

病院によると、予診をPSWや看護師に取らせるところもある。大学病院ではその流れが多く、研修医が練習も兼ねて予診を取っていた。

しかし、僕はそうしない方針である。それは患者さんが同じことを2度話すようになることと、詳しく聴くべきか、あるいはそうしない方が良いのか、PSWや看護師では判断できないことがあるからである。

今日のタイトルは、再診の際のカルテの記載の仕方。精神科以外では、いわゆるSOAP形式でまとめられている記載もあるが、他科でもそうでないカルテも多い。

他科のカルテでも、精神科医のカルテのようにルーズ?なものも多いのは、リエゾンをしているとよくわかる。他科のカルテが精神科のそれと決定的に異なるのは、

現病歴の物語性の欠落。

である。例えば、

47歳 高血圧
52歳 胃潰瘍
64歳 脳梗塞
72歳 腎不全

と箇条書きで書かれているだけというものもある。そういう時は、他の病院からの紹介状や看護師のサマリーの方がよほどわかりやすい。それに比べ、特に才能のある精神科医の現病歴や精神所見の記載はある種の芸術だと思う。

話が逸れてしまったが、いわゆるSOAPとは、簡単に言うと、

S:主訴
O:客観的なデータや検査所見
A:アセスメント
P:プラン、アセスメントに対応した治療計画


である。精神科でこういう風に書き辛いのは、たぶん、精神科治療における時間の流れの遅さも関係している。治療計画なんて、最初からそうそう変わるものでもない。

SOAPで書かないことにより、精神科のカルテが自由度を増しステレオタイプにならないメリットはあるが、ルーズになりやすいのも難点だと思う。

過去ログに、電子カルテになると、ちょっとした落書きのような記載が減り、ステレオタイプに陥りやすいと言う記事がある。

参考
精神科医のカルテ
激しい幻聴のある強迫神経症
カルテは文学的に書いてはならない

ジプレキサの注射剤

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ジプレキサの注射剤が2012年の年末(11月~12月)頃、発売になるようである。

ジプレキサの注射剤はアメリカ、ヨーロッパでは既に発売されており、アメリカでは10mgのアンプルが使われている。この名前だが、

Zyprexa Intramuscular

と呼ばれ筋注で使われる。ジプレキサの即効剤と言うわけである。

実は、僕が精神科医になって以来、このタイプの即効性のある抗精神病薬の注射剤は全く発売されていない。ハロマンス(ネオペリドール)、フルデカシン、リスパダールコンスタなど、持続性抗精神病薬が発売になっただけである。

いわゆる即効性のある抗精神病薬の注射剤は、

セレネース
トロペロン
コントミン
レボトミン


の4つである。過去ログでは、セレネースやトロペロンを筋注した話は時々出てくる。この2つは即効性という点でも、力価と言う点でも極めて有用な抗精神病薬剤型である。それに比べ、コントミンとレボトミン(ヒルナミン)はフェノチアジン系のため少し使い辛い。(特に後者)。

この4つの注射剤は、僕が医師になった年には既に発売されていたのである。

ジプレキサ注射剤はアメリカに習い、10mgの1剤型だけ発売になると思われる。

ジプレキサの注射剤の発売は、初の非定型抗精神病薬の注射剤でもあり、画期的な事件といえる。

アメリカでのジプレキサ錠の剤型だが、

2.5mg、5mg、7.5mg、10mg、15mg、20mg

の6剤型が存在する。細かい単位で段階的に剤型が創られており、1日1錠で済むように工夫されている。日本でも、7.5mg錠はほしいところだが、剤型が増えると言うことは、薬局の余剰在庫が増えることでもあり、その按配が難しい。(剤型が増えることは、病院にとっては不経済)

日本人は体格的?に、大きな錠剤が服用しにくい。20mg錠は発売されたとしても嫌われるのではないかと思われる。

アメリカでのザイディス錠は、

5mg、10mg、15mg、20mg

の4剤型であり、日本より15mgと20mgがあるのが異なる。アメリカでも2.5mg、7.5mgは発売されていない。

日本では、もし2.5mgザイディスがあると非常に有用と思う。実は、2.5mgザイディス錠が発売されないのは技術的に難しいためらしい。

精神科の薬は改善の確率が低かったとしても、精神科の患者の精神症状や忍容性の多様性から、多ければ多いほど良いと思われる。

その薬物に多少欠点があったとしても、フィットする人がいる意味は大きい。

(補足)
実は上記4つ抗精神病薬剤の他、ドグマチール100mgの注射剤がある。これはうちの病院にもあるが、数名しか使ったことがない。上に挙げ忘れるほど。インパクトは上記4剤ほど強くない。何故ドグマチール100mg注を購入したかというと、ある時、何をしてもうまくいかない患者さんがいたから。その患者さんは結局ドグマチールではなく全く別の方法で改善している。

参考
短期決戦に構える
セレネースとトロペロンのアンプル
希死念慮という物質とトロペロンの謎





野生のロリキート

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野生のロリキートの写真を観たいという希望があったので、やや不鮮明な写真ながらアップしている。これはゴールドコーストのホテルの前の木にとまって毛繕いしているところ。2羽いるが、たぶん「番い」なんでしょう。

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望遠を使っていない写真。中央に明るい綺麗な色が見える。

野生のロリキートは撮影すると望遠を使うため、どうしても不鮮明になったり手ぶれしたりで、綺麗に撮れない。

よく喋くっている動画もあるが、今はアメブロは動画アップできないため公開は難しい。

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これも2羽並んでいるが、かなりデジタルズームしていることと、画素数の関係で不鮮明である。

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これと同じインコなのがわかって貰えたと思う。

アブラゼミの抜け殻

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最近の暑さは異常で、エアコンが効いた部屋から外に出ると、一瞬、息が詰まるような苦しさを感じる。元々、僕は暑さには弱い。高校の時に入院したのも、暑さで体調を崩したことが大きかった。

マンションのエントランス部分にはタイルで囲った植え込みがあり、そこでいくつかのアブラゼミの抜け殻を発見した。

なんだか、ちょっと感動。

これは見慣れないからそう思ったのではなく、マンションのそのような狭く浅い場所にセミの幼虫が長く育っていたことに感動したのである。

セミは一般の昆虫に比べ圧倒的に寿命が長い。

たぶんセミほど寿命が長い昆虫は稀だと思う。ただし、一生のうちほとんどの期間は地中に暮らしているが。

アブラゼミは約7年間を地中で生活すると言われる。だから、僕がその時見た抜け殻は、あるアブラゼミが7年前にその場所に卵を産み落とした証拠でもある。うちのマンションはその時期には既に完成し、数年経っていたので計算に矛盾はない。

その時、思ったのは、このマンションが建った際、それ以前にこの地下に生息してたアブラゼミなどの幼虫は地上に出られず、全員死亡してしまったであろうこと。

これはこのマンションに限らず、コンクリートの巨大な建物を造り、地面をアスファルトで固めてしまえば、セミの幼虫は同じ結末になる。

アブラゼミはありふれたセミで、五月蝿く鳴いているが、卵から成虫まで無事に成長できる確率は、どのくらいだろうかと思ったりする。

子供の頃、夏の虫取りと言えば、もっぱらカブトムシとクワガタで、年長になるとセミを捕るのは遠慮していた。セミは成虫になってからは長く生きないのを知っていたからである。また、セミは捕っても、餌をどのようにやったら良いのかがよくわからなかった。虫かごに入れていても、1日かせいぜい数日で死んでいたので、殺すために捕ってきたような感覚に陥り罪悪感を感じた。だから止めてしまったんだと思う。

うちの親父は、セミを捕ることを強く非難するというか、そのような殺生は止めるように常に言っていた。カブトムシでさえ、捕ってくることに良い顔はしなかった。そういう男なのである。僕は当時は気にしなかったが、今は全く親父と同じ考え方である。

この時間が経つにつれ、親父に感覚が似てくるのが泣ける。

しかし、嫁さんによると、僕は親父には全然似てないらしい。むしろ性格的に明るいところとか、社交的な面が母親に似ているという。

セミを捕りに行ったことのある人ならわかるが、セミは木から飛び立つ際によくオシッコを撒いて行く。だからセミを捕るために木を見上げていると、セミのオシッコが顔面を直撃するのである。セミはたぶんそういう習性なのだろう。

迷信で「カエルの尿を浴びるとイボができる」と語られていたが、セミは特に副作用はなかったような気がする。(重要)

だから次第にセミはまだ子供だった僕にとっても、主に「観賞用の昆虫」という位置付けになった。しかも視覚だけでなく演奏付きである。

僕がよく観察していたセミは、アブラゼミとニイニイゼミである。この2つはかなり大きさに相違があり、姿や鳴き方も高級感が乏しいという共通点がある。

アブラゼミの抜け殻は、茶色を基調とした光沢のある透明な殻であり、見慣れるとすぐにアブラゼミとわかる。アブラゼミの抜け殻は地上すれすれにあることはなく、比較的高い場所まで這い上がっている。だいたい子供の腰の高さくらいである。(統計を取って調べたことはないけどね)。

それに対し、ニイニイゼミの抜け殻はアブラゼミに比べ小さくて泥で汚れていた。また地面からそう高くない場所にあったような気がする。

この2つのセミに比べ、ツクツクボウシはその姿も美しく、鳴き方も気品があると言えた。ツクツクボウシの演奏は、突然の主題の変更もあり、起承転結らしきものもある点で、子供心に音楽性が高いと感じていた。特に晩秋の演奏が秀逸。あくまでも主観だが。

ツクツクボウシはまず羽が透明なのがポイントが高い。ここが上のアブラゼミとニイニイゼミとの大きな相違である。

ツクツクボウシの成虫はやや細長い体型で、抜け殻もやはり細長く慣れると見分けられるようになる。抜け殻の大きさはアブラゼミより小さく、殻も薄いが光沢がある点は似ていた。

もうひとつ、クマゼミという巨大なセミには非常に驚いた。子供の頃、自分の住んでいた地域にはなぜかクマゼミがおらず、実物を見たことがなかった。クマゼミも羽は透明であり、姿も美しく迫力があるセミである。

ある時、親父の実家の近所を散策していた時、生まれて初めて怪物のようなセミを目撃した。クマゼミは捕獲して裏返してみるとオス、メスの区別がすぐにつく。両腰の辺りにオレンジのポケットのようなものがあったような・・

僕はアブラゼミは7年間地中に暮らすことは昆虫図鑑で読んで知っていたが、ニイニイゼミ、ツクツクボウシ、クマゼミは何年くらい地中にいるのか知らなかった。これは今でも知らないが、少なくとも2~3年などの短さではないと思う。

海外では昆虫としてはとてつもない長期間地中に暮らすセミが知られている。13年ゼミや17年ゼミである。

そういう視点ではアブラゼミは7年ゼミということになるが、7は素数である。13と17も素数であり、セミの地中生活の年数が素数になっているのは、何らかのメリットがあったことが窺われ、自然淘汰も関係しているようでとても興味深い。

アブラゼミは毎年同じように鳴いているが、7年周期なので個々のグループ間の交配が起こりにくい。個々のグループは7年おきにしか出てこないからである。

その点でセミは社会経験を積みにくく、進化という点で学びにくいような気がする。たぶん5000年後でも今と同じように鳴いていると思うよ。

何が言いたいかというと、17年ゼミは昆虫にしては寿命が長すぎ、また異種の交配も生じにくい。また優れた形質を持つ突然変異が生じたとしても子孫を残しにくく、進化という点で不利であろうこと。

13と17の最小公倍数は221であり、13年ゼミと17年ゼミが重なる機会は滅多に生じない。同時発生は極めて珍しい事件なのである。これらの内容のことは北杜夫の昆虫記か何かに書いてあった記憶がある。

セミの大量発生のため、その五月蝿さは想像を絶するものだった。

うろ覚えだが、こんな感じの記載だった。13年ゼミ、17年ゼミなど数字だが、自然淘汰を受けた結果、素数になったという意見がある。つまり積極的に選ばれた結果ではなく、消極的にこうなったというもの。これも非常に興味深いと思った。

自然数でも、大きな数字の素数は、最小公倍数が大きくなるのが重要であろう。しかしながら、アブラゼミは毎年大変な数が生まれ五月蝿く鳴いている。これは毎年同じ地域に発生しているためだ。

ところが、13年ゼミや17年ゼミは毎年どこかで鳴いているものの、同じ地域には毎年出現しないらしい。だから、アブラゼミとは現れ方が異なる。この所見は重大である。

だからこそだが、最大公倍数の大きさが重要になるのである。(アブラゼミのように同じ地域に毎年出て来るのであれば、最小公倍数は意味がない)。

一度に大量に発生するにより、捕食者がいたとしてもいくらかは生き残り、子孫を残す確率が高まる。

生存のために優れた形質が「素数ゼミ」なのであろう。おそらく、ほとんどの素数ではないセミは絶滅してしまったのである。

参考
地球上の大量絶滅


平成24年7月24日、デパス0.25mg発売

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平成24年7月24日、デパス0.25mgが発売されている。元々、デパスはかなり歴史の古い薬で錠剤は0.5mgと1mgの2剤型がずっと販売されていた。(他、1%細粒)

今はジェネリックも出ており、売り上げとしては薬価が安いためたいした額にはならないが、処方箋数は相当なものだと思う。

最初、デパスの0.25mgが発売になると聞いた時、パキシル5mgのような位置づけと思っていた。(つまり中止の際の離脱を緩和する目的)ところがそうではないらしい。

デパスは、精神科以外の一般科でも広く使われており、特に筋弛緩作用を期待されて、整形外科などでも処方されているようである。

過去ログで、総合病院全体でハルシオンが2万錠処方されているのに、精神科ではそこまで処方されていなかったという話が出てくる。

デパスも、これと似ている状況だと思う。僕はドグマチールとデパス、SSRIはあまり処方しないタイプの精神科医で、特にデパスは少ない。

全ての入院患者、外来患者合わせてもデパスは10名も処方していない。たぶん数名だと思う。

デパス0.25mg錠は一般科の医師がデパス0.5mgを処方した際、老人だと転倒する危険性が高いため、0.25mgのニーズが高いことに応えたものだという。

こういうところにも、日本社会の高齢化が見てとれる。

眠剤も含め、ベンゾジアゼピンは、決して精神科だけで処方されている薬ではないのである。

(注:厳密にはデパスはベンゾジアゼピンではない)

参考
パキシル5㎎錠発売

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