今回は少量でも驚くほど効果が出る話。
精神科医はある理由があって薬を処方し、しばらくしてすっかり改善しているように思う時、その薬を漸減ないし中止することがある。もはや、その薬は必要ではないのではと思う時だ。
高齢者で精神病状態が見られる時、ジプレキサを使う時がある。ジプレキサはいろいろと面倒見が良いうえ、リスパダールなどよりEPSが出にくいことなども選択される理由である。エビリファイの大量でも良いことがあるが、エビリファイは直線的に効く傾向があるのが難点。
ある時、老年期の精神病状態にジプレキサを使ったところ、極めて良好な経過になった男性患者さんがいた。彼は家では奥さん追いかけ、鎌で切り付けようとしたほどの精神症状だったが、入院後、たったジプレキサ1.25㎎で著しく改善し寛解に近い状態になった。
ところが、これほどの衝撃的な経過だと家族は絶対一緒に住みたくないという話になる。高齢者だと年齢にもよるが、退院させるとしても施設くらいになることが多い。そのため施設の入所待ちで数か月入院継続することも稀ではないのである。
ある日、結構経過が良いし、バルプロ酸なども併用していたこともあり、病棟師長と相談しジプレキサを中止してみることにした。これはたった1.25㎎しか処方していないこともある。
ところが中止後、1週間以内に著しく悪化し、同じような暴力行為が出現しかなり若い男性患者さんと喧嘩になりそうになったのである。(具体的には寝ている男性をある重いもので殴りつけようとした)
これはジプレキサによる離脱といった考え方は間違っている。それは入院前とかたちこそ変わっているが(病棟には鎌などない)、実質的に同じ精神症状が再現しているからである。
その後、やはりジプレキサは必要だったか・・と判断し、すぐにジプレキサ1.25㎎を戻したところ、1週間以内に速やかに落ち着いたのである。
特に入院治療では、わずかな精神病薬でも服用しているかどうかで大違いという場面に遭遇する。
(後半に続く)