今回の記事は、リエゾンをすることによる長期的なメリットについて。
いつだったか、院長会でリエゾンをしているかどうかのアンケートがあった。その時、全体の30~40%の単科精神科病院がリエゾンを実施していた。この数字だが、多いのか少ないのか感覚的に掴めない。精神科病院の立地にも関係すると思うからである、また、県外はどうなのかは不明である。
時々、精神科がない中核病院のリエゾンの医師の名前がわかることがある。例えば、自分のリエゾン病院の患者さんの紹介状を読むことでわかる。リエゾンをする医師の中にはクリニックの精神科医のことがあり驚く。
クリニックの精神科医は平日のうち1日を休みにしていることが多い。その日をリエゾンにあてているとしたら、相当な働き者だと思う。リエゾンは消耗するストレスフルな仕事だからである。
なお、クリニックの医師の場合、リエゾンに行くメリットはあまり大きくはない。ギブアンドテイクになりにくいと思うからである。
たまにこのリエゾン医師は酷すぎると思うことがある。何度も紹介状を見ていると良くない判断がわかるからである。その中核病院は僕の同級生が院長なので、連絡しようかとよほど思ったが、結局やめた。そんなことを言えば、僕が行かないといけなくなるからである。もうひとつリエゾン病院が増えるのは体力的に持たない。
単科精神科病院にとって、総合病院にリエゾンに行くメリットはかなり大きい。これは経験的なものである。リエゾンに行き始める前は、そのようなことは思いつかなかった。
現在の単科精神科病院のように入院患者さんの高齢化が進むと、身体疾患の合併から他科受診も多くなる。従って外来受診や入院について、気兼ねなく依頼できることはメリットが大きいのである。それも僕の患者さんだけでなく、うちの病院の全ての医師の受け持ち患者さんにメリットが及ぶ。
総合病院でも大まかに言って2種類あり、1つは真の中核病院で急性期治療に特化しておりリハビリまでは実施しない。このタイプの総合病院は精神科があったとしてもベッド数が少なく、精神科医の総数も少なく、精神科に長期入院など無理である。従って身体疾患で入院したとしても不十分な身体状況で戻ってくることも稀ではない。
この経過が単科精神科病院には困るのである。もう少し治療が進み安定してから転院させてほしいと思う。実際、帰院した翌日か翌々日に再び患者さんを送り返すことが時々ある。
中核病院ほどの大規模でない総合病院はリハビリ中心の科もあり、比較的余裕をもって治療をしてくれるので精神科患者には向いている。注意点は、それらの総合病院に精神科がないこと。従って入院後、精神症状の悪化時に精神科に転科することはできない。このような理由で、精神症状が悪すぎる患者さんは入院治療を依頼することが難しい。
このくらいの精神症状であれば、なんとか総合病院でも入院治療可能だろうと言った線引きがあるのである。その基準は僕がリエゾンで診にいくのも込みである。
リエゾンを長くやっていると、総合病院でもかなり精神症状が悪い患者さんをなんとか診ている場面に遭遇する。例えば肝性脳症、ウェルニッケ脳症、膠原病による精神病状態やカタトニアである。
また、その病院で治療できる精神症状の水準は概ねわかるようになる。また、逆に精神症状が悪い患者さんを自分の病院に転院させて治療することもあるため、看護スタッフから感謝されることもある。その病棟の看護負担が段違いに減るからである。特に夜勤。
そのような付き合いが長くなると、1人の患者さんの身体的疾患で入院治療を総合病院に依頼する際、医師レベルでも看護者レベルでも、かなり配慮してもらえるようになる。これが大きいのである。まさにギブアンドテイクになっているからである。
余談だが、その総合病院で働いていた看護師さんがうちの病院に入職したことがあった。引き抜きはできないが、自然な流れで来てくれることがあり、助かることがある。
なぜ入職する気になったのか問うたことがある。彼女によると、僕が言った「(この患者さんは)看護スタッフが大変だから」と言うフレーズが良かったらしい。